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パキラをハイドロカルチャーでお洒落に育てたい、と考える方は多いです。土を使わないクリーンな栽培方法は、キッチンやデスク周りにも最適で、インテリアとしての魅力も高まります。
ですが、パキラはハイドロカルチャーで育てられますか?という根本的な疑問や、土栽培との違いに戸惑い、ハイドロカルチャーの欠点は何ですか?といった不安を感じる方も少なくありません。
実際に、水やりの頻度や量を見誤ったり、植え替えのデリケートな作業で根を傷めてしまい、大切なパキラが元気ない状態になるケースも見られます。
また、ハイドロカルチャーは何年くらい持ちますか?、土栽培のように大きく育てることは可能なのか、といった長期的な管理に関する疑問も次々と浮かんでくるでしょう。
100均のアイテムや根腐れ防止剤を使って手軽に挑戦したいけれど、そもそもハイドロカルチャーに向く観葉植物は?という点も気になるところです。
この記事では、パキラのハイドロカルチャーに関するあらゆる疑問に、専門的な視点から丁寧にお答えし、失敗しないための具体的な育て方のコツを徹底的に解説します。
ポイント
- パキラをハイドロカルチャーで育てる適性
- 失敗しないための具体的な植え替え手順
- 根腐れを防ぐ正しい水やりの頻度と量
- 元気がない時の原因と具体的な対処法
コンテンツ
パキラをハイドロカルチャーで育てる基本
参考
- パキラはハイドロカルチャーで育てられますか?
- ハイドロカルチャーの欠点は何ですか?
- ハイドロカルチャーは何年くらい持ちますか?
- ハイドロカルチャーに向く観葉植物は?
パキラはハイドロカルチャーで育てられますか?

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結論から言うと、パキラはハイドロカルチャーで育てることが可能です。それどころか、数ある観葉植物の中でも、ハイドロカルチャーに最も適応しやすい植物の一つと言えます。
その最大の理由は、パキラの原産地と生態にあります。パキラはもともと中南米の熱帯地域に自生しており、その生息地はしばしば川辺や湿地帯、洪水時に水に浸かるような場所です。
このような背景から、パキラの根はもともと水分が多い環境への耐性が高く、他の乾燥地帯の植物に比べて根腐れを起こしにくい丈夫さを持っています。
さらに、パキラが持つ強い生命力と、室内光でも育ちやすい「耐陰性(日陰に耐える力)」も、室内管理が基本となるハイドロカルチャー栽培にとって大きな強みです。
実際に、インテリアショップや雑貨店では、お洒落なガラス容器にハイドロボールで植えられたパキラが定番商品として並んでいます。このこと自体が、ハイドロカルチャーでの栽培方法が確立されている何よりの証拠です。
ただし、ここで「適応しやすい」=「何もしなくても育つ」と誤解してはいけません。ここが初心者が失敗する最大の分岐点です。
最も重要なのは、「土で育てる環境」と「水で育てる(ハイドロカルチャー)環境」は、根本的に異なるという点を理解することです。
- 土栽培:水はけが良く、土の隙間に空気が含まれ、微生物が老廃物を分解します。
- ハイドロ栽培:水はけ(排水)がなく水が停滞し、空気は限られ、微生物が存在しません。
もし土栽培と同じ感覚で、「表面が乾いたから」と頻繁に水を与えてしまうと、容器の中は常に満水の「酸欠状態」となります。根は呼吸ができなくなり、ほぼ確実に「根腐れ」を引き起こしてしまいます。
ハイドロカルチャーの成功の鍵は、この特性(特に水の管理と酸素の供給)を正しく理解し、土栽培とはまったく別物の、ハイドロカルチャー専用の管理を続けることにあります。
ハイドロカルチャーとは?
ハイドロカルチャー(Hydroculture)は、ギリシャ語の「Hydro(水)」と「Culture(栽培)」を組み合わせた言葉で、土を一切使わない水耕栽培の一種です。
土の代わりに「ハイドロボール(発泡煉石)」や「ゼオライト」といった、多孔質(小さな穴がたくさん空いた)の人工植え込み材(人工土壌)を使用します。
これらの植え込み材が植物の根を支え、水分や空気を保持します。通常、穴の開いていない容器を使用し、容器の底に溜めた水で植物を育てるのが特徴です。
ハイドロカルチャーの欠点は何ですか?

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手軽でお洒落に見えるハイドロカルチャーですが、土栽培にはないいくつかの欠点(デメリット)が存在します。この点を事前にしっかり理解しておくことが、失敗を防ぐための第一歩となります。
最大の欠点は「根腐れしやすい」こと
ハイドロカルチャー最大の欠点であり、初心者が最も失敗しやすいポイントが、土栽培に比べて根腐れを非常に起こしやすい点にあります。
これには明確な理由が2つあります。
- 酸素不足:穴の開いていない容器で常に水を溜めて管理するため、水の交換が滞ると水中の酸素が不足し、根が呼吸困難に陥ります。
- 老廃物の蓄積:土栽培の場合、土の中の多様な微生物が、植物の根から出る老廃物や排泄物を分解・浄化してくれます。しかし、無菌の人工土壌(ハイドロボールなど)には、この微生物が存在しません。そのため、老廃物が分解されずに水に溶け出し、水質が急速に悪化。結果として根が腐敗してしまうのです。
その他の主な欠点としては、以下のような点が挙げられます。
- カビの発生:常に湿った状態が続くため、特に梅雨時など高温多湿の時期には、植え込み材の表面や容器のフチに白カビなどが発生することがあります。
- 成長が緩やか:土栽培のように根を自由に広範囲に張ることができず、吸収できる養分も限られるため、植物の成長スピードは緩やかになる傾向があります。ただし、これは「コンパクトなまま樹形を維持したい」場合には、逆にメリットとも言えます。
- 定期的な洗浄の手間:前述の水質悪化(老廃物の蓄積)を防ぐため、最低でも半年に一度、理想は1年に一度、中の植物を取り出して容器やハイドロボールを丸洗いする「メンテナンス(植え替え)」が必要です。これを手間に感じる場合もあります。
ハイドロカルチャーは何年くらい持ちますか?
「ハイドロカルチャーの寿命は短い」と耳にすることがありますが、これは最も多い誤解の一つです。この誤解は、ハイドロカルチャーを「植えたら放置できる便利なもの」と捉えてしまうことから生じます。
正しくは「管理を怠ると寿命は短いが、適切な管理を続ければ土栽培と変わらず長く楽しめる」が答えです。
まず大前提として、パキラ自体は非常に長命な植物であり、適切な環境であれば樹齢数十年になることも珍しくありません。問題は「植物の寿命」ではなく、「ハイドロカルチャーという閉鎖された環境を、植物が生きられる状態に何年保てるか」という点に尽きます。
管理が「寿命」を決定する
ハイドロカルチャーの環境維持を怠った場合、つまり水のやりすぎを続けたり、容器の洗浄(メンテナンス)を全く行わなかったりすると、水質は急速に悪化します。
前述の通り、微生物がいない環境で老廃物が蓄積し、根が呼吸困難になるため、早ければ数ヶ月、長くても1年持たずに根腐れで枯れてしまうことが珍しくありません。これが「寿命が短い」と言われる理由です。
逆に、ハイドロカルチャーを長く持たせる(長持ちさせる)ためには、土栽培とは異なる「定期的なメンテナンス」が不可欠です。このメンテナンスさえ行えば、数年間、あるいはそれ以上元気に育ちます。
ハイドロカルチャーの「寿命」を延ばす2つの管理
- 1.環境のリセット(洗浄):半年に一度~1年に一度の頻度で、容器内のハイドロボールをすべて取り出して洗浄し、底に蓄積した老廃物のヘドロをリセットします。この時、効果が切れた古い根腐れ防止剤も必ず新しいものに交換します。これが土でいう「土壌改良」にあたります。
- 2.成長に合わせた植え替え(鉢増し):植物は当然成長します。数年間育てれば、小さな容器の中は根でパンパンに詰まります(根詰まり)。この状態では水や酸素をうまく吸収できず成長が止まるため、1~2年に一度は一回り大きな容器に植え替える「鉢増し」が必要です。
ハイドロカルチャーは「置いたら放置できる造花」ではなく、「定期的な世話(洗浄と植え替え)が必要な栽培方法」です。
この点を正しく理解し、適切な「大掃除(洗浄)」と「引っ越し(鉢増し)」さえ適切に行っていれば、水耕栽培の環境は常に清潔に保たれます。これにより、パキラを数年、あるいは10年以上にわたって元気に育てることも十分可能です。
ハイドロカルチャーに向く観葉植物は?
ハイドロカルチャーには、植物の性質によって向き不向きがはっきりと分かれます。パキラは比較的「向いている」植物ですが、他にも適した種類を知っておくと、寄せ植えなどで応用が効きます。
基本的には、原産地が熱帯雨林などで、耐陰性(室内光への耐性)があり、ある程度の多湿環境に耐えられる植物が向いています。室内管理が基本となるため、砂漠地帯原産で、日光がガンガン当たる乾燥した場所を好む植物は管理が非常に難しくなります。
適性の度合い | 植物の種類 | 具体的な理由と特性 |
---|---|---|
◎非常に向いている | パキラ、ポトス、モンステラ、ガジュマル、テーブルヤシ、アイビー(ヘデラ)、スパティフィラム | 耐陰性があり、丈夫で環境適応力が高い。根の成長も旺盛で、水耕栽培環境に順応しやすい。 |
△どちらとも言えない | ゴムの木(フィカス類)、ドラセナ類、サンセベリア(※) | 栽培は可能だが、パキラなどに比べると根腐れへの注意がより必要。水の管理をよりシビアに行う必要がある。※サンセベリアは乾燥を好むが非常に丈夫なため水耕でも育つが、水やりは極端に控える。 |
×向いていない | サボテン、多肉植物全般、ハーブ類(ローズマリーなど)、オリーブ | 高温多湿と根が常に湿る環境を極端に嫌う。乾燥地帯が原産の植物は、ほぼ確実に根腐れを起こすため避けるべき。 |
もしパキラ以外の植物でハイドロカルチャーに挑戦する場合は、上記を参考に「◎ 非常に向いている」グループから選ぶと失敗が格段に少なくなります。
パキラのハイドロカルチャーの始め方と育て方
参考
- 100均でも揃う?準備するもの
- 植え替えの手順と最適な時期
- 根腐れ防止剤は必ず入れる?
- 毎日の水やりは必要?頻度と量
- パキラが元気ない時の原因と対策
- 大きく成長させるコツ
100均でも揃う?準備するもの
パキラのハイドロカルチャーは、100均ショップ(ダイソー、セリア、キャンドゥなど)のアイテムだけでも全ての道具を揃えて始めることが可能です。最近の100円ショップは園芸用品が非常に充実しており、初期費用を抑えて手軽に試したい方には最適です。
ハイドロカルチャーに必要なものリスト
- ①穴の開いていない容器:(必須)ガラス製や陶器製、プラスチック製など、水が漏れなければ基本的に何でも構いません。100均のお洒落なグラスや食器、キャニスター(保存瓶)などが人気です。
- ②植え込み材(ハイドロボール):(必須)100均でも「ハイドロコーン」や「インテリアバーク(木炭)」などの名称で販売されています。主力のハイドロボール(発泡煉石)を選びましょう。
- ③根腐れ防止剤:(必須)「ゼオライト」や「ミリオンA」など。これも100均の園芸コーナーで入手可能です。ゼオライトが一般的です。
- ④パキラの苗:100均にも小さな観葉植物の苗(通常は土植え)が売られています。もちろん、園芸店で購入した苗でも構いません。
- ⑤液体肥料:(推奨)水耕栽培専用の液体肥料があると、後の成長が良くなります。これも100均で取り扱いがある場合があります。
- ⑥水位計:(任意)不透明な容器を使う場合はあると便利ですが、必須ではありません。
特に初心者の場合は、水位が一目でわかる透明なガラス容器を選ぶことを強くおすすめします。後述する水やりのタイミング(=底の水がなくなったこと)を確認できるため、失敗を劇的に減らすことができます。
また、ハイドロボールは粒のサイズ(小粒、中粒、大粒)がありますが、100均で売られているような小さな苗を植える場合は、根の隙間を埋めやすい小粒~中粒を選ぶと良いでしょう。
植え替えの手順と最適な時期

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植え替えは、土で育ったパキラの根を洗い、水耕栽培の環境へ移行させる、最も重要な作業です。植物にとって大きなストレスがかかるため、負担を最小限にする時期と手順を守ることが重要です。
最適な時期は、植物の成長期にあたる5月〜9月頃です。この時期はパキラの生命活動が最も活発なため、植え替えのダメージからの回復が早くなります。気温が20℃前後で安定している、カラッと晴れた日に行うのがベストです。
逆に、成長が止まる冬場の寒い時期や、気温が30℃を超える真夏日の植え替えは、パキラが急激に弱る原因になるため、避けるのが賢明です。
土栽培のパキラを植え替える手順
100均や園芸店で購入した土植えの苗を、ハイドロカルチャーにする標準的な手順を解説します。
簡単な流れ
- 土を落とす:パキラをポットから優しく引き抜きます。根鉢(根と土が固まった部分)を手で優しく揉みほぐしながら、できるだけ土を落とします。
- 根を洗う(最重要工程):バケツなどに常温の水を張り、根を振り洗いします。この時、太い根や新しい根を傷つけないよう細心の注意を払ってください。土の粒子が少しでも残っていると、水が腐る原因になります。古い歯ブラシや指の腹で優しくこすり落とし、根がきれいな状態になるまで念入りに洗いましょう。
- 容器を準備する:使用する容器をきれいに食器用洗剤などで洗い、水気を拭き取ります。底に「根腐れ防止剤」を敷き詰めます。(容器の底が見えなくなる程度、全体の1/5程度が目安です)
- 植え込み材を入れる:根腐れ防止剤の上に、ハイドロボールを容器の1/3程度まで入れます。ハイドロボールは使用前に水で軽くすすぎ、微塵を洗い流しておくと水が濁りません。
- パキラをセット:洗浄したパキラを容器の中央に置き、根を自然に広げます。
- 固定する:パキラが倒れないよう、隙間にハイドロボールを追加していきます。割り箸などで軽く突きながら、根の隙間にもハイドロボールが入り込むようにして、株元を安定させます。
- 水を入れる:最後に、容器の1/5〜1/4程度の高さまで、静かに水を注ぎます。植え替え直後はこれだけで十分です。
植え替え直後の管理(アフターケア)
植え替え直後のパキラは、人間で言えば「大手術」を終えた直後のようなものです。根が新しい環境に適応しようと必死な状態ですので、以下の点に注意してください。
- 置き場所:すぐに日光に当てず、1〜2週間は直射日光の当たらない「明るい日陰」(レースカーテン越しなど)で休ませます。
- 肥料:絶対に与えないでください。弱った根が肥料分を吸収できず、「肥料焼け」を起こして枯れる原因になります。肥料は、植え替えから2〜3週間後、新しい根が動き出してから検討します。
根腐れ防止剤は必ず入れる?

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この質問への答えは、「はい、必ず入れてください」です。これは省略してよいオプションではなく、ハイドロカルチャーの成功を左右する必須アイテムだと断言できます。
根腐れ防止剤は、土栽培における「土壌微生物による浄化作用」の代わりを担う、いわば人工の「浄化フィルター」であり「生命維持装置」のようなものです。これ無しで長期的な栽培を成功させるのは非常に困難です。
なぜ「必須」なのか?
前述の通り、ハイドロカルチャーの最大の欠点は、土壌と違って「微生物が存在しない」ことです。土の中では、植物の根から出る老廃物や排泄物を、多様なバクテリアが分解・浄化してくれます。
しかし、無菌のハイドロボールと水だけの閉鎖された環境では、この老廃物が分解されません。結果として、水中に蓄積した老廃物が腐敗し、それをエサにする雑菌(嫌気性菌など)が繁殖。水中の酸素が奪われ、水質が急激に悪化します。これが「根腐れ」の直接的なメカニズムです。
根腐れ防止剤は、この老廃物や水中の雑菌、アンモニアなどを物理的に吸着し、水をクリーンな状態に保つという、極めて重要な役割を担っています。
根腐れ防止剤の主な種類と役割
根腐れ防止剤にはいくつかの種類があり、それぞれ得意分野が異なります。100均などで安価に手に入るものから、多機能なものまで様々です。
種類 | 主成分 | 主な役割・特徴 |
---|---|---|
ゼオライト(沸石) | アルミニウムケイ酸塩 | 最も一般的で安価。目に見えない微細な穴(多孔質)が、アンモニアや不純物を強力に吸着します。水質浄化(フィルター)能力に特化しています。 |
珪酸塩白土(けいさんえんぱくど) | ケイ酸塩鉱物 | 「ミリオンA」の商品名で有名。水質浄化に加え、植物の生育に必要なミネラル(ケイ酸、カルシウム、マグネシウムなど)を水中にゆっくりと溶け出させる(イオン交換)働きも持ちます。 |
竹炭・木炭 | 炭素 | 多孔質で、高い吸着能力を持ちます。特に水中の塩素(カルキ)や、腐敗による「臭い」を吸着する脱臭効果に優れています。 |
特に有名な「ミリオンA」などの珪酸塩白土は、単なる水質浄化に留まらず、植物の根張りを良くするミネラルを補給する働きも持っています。(参照:ソフト・シリカ株式会社「ミリオンA」製品情報)
根腐れ防止剤の使い方と「寿命」
- 使い方:容器を準備したら、必ず一番底に敷き詰めます。量は、容器の底が完全に見えなくなる程度、全体の高さの1/5くらいを目安にしっかり入れましょう。
- 寿命(交換時期):根腐れ防止剤の吸着能力は永久ではありません。老廃物を吸着し続けると、いずれ飽和状態になり効果が切れます。効果の目安は半年~1年程度です。年に一度のメンテナンス(洗浄)の際には、古いものは捨てて、必ず新しいものと交換してください。
「少ししか植えないから大丈夫」「水替えを頻繁にするから不要」といった油断が、失敗の元です。これがないと、水はわずか数週間で腐敗し、強烈な異臭を放ち、パキラは根腐れを引き起こします。必ず容器の底に敷き詰めるようにしてください。
毎日の水やりは必要?頻度と量

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ハイドロカルチャーの管理で最も誤解が多く、失敗に直結するのが水やりです。土栽培の感覚で「土(ハイドロボール)の表面が乾いたらたっぷり」という水やりをすると、100%根腐れしてしまいます。
ハイドロカルチャーは「常に水浸し」の状態で育てるのではありません!最も重要なのは、根が呼吸するための「乾く期間」を意図的に作ることです。これが最大のコツです。
正しい水やりの頻度と量
結論として、毎日の水やりは絶対に不要です。むしろ有害です。
- 水やりのタイミング(最重要):容器の底に溜めていた水が完全になくなってから、さらに数日(通常2〜3日、冬場なら1週間程度)待ってから水を与えます。ハイドロボールの表面が白っぽく乾いてきたら、それがサインです。この「乾かす期間」に、根がハイドロボールの隙間にある新鮮な酸素を呼吸します。
- 水の量:容器の高さの1/5(5分の1)〜1/4(4分の1)程度まで注ぎます。根のすべてが水に浸かってしまうと呼吸ができなくなるため、根の上部は常に空気に触れている状態を保つのが理想です。
透明な容器を使っていれば、底に水が残っているかどうかが一目でわかります。不透明な容器の場合は、水位計を使うか、容器を持ち上げたときの重さで判断するしかなく、難易度が格段に上がります。初心者が不透明な容器を使う場合は、水位計の使用を強く推奨します。
また、水やりとは別に、霧吹きで葉に水をかける「葉水(はみず)」は、室内の乾燥や害虫(特にハダニ)を防ぐために、こちらは毎日行うと非常に効果的です。
パキラが元気ない時の原因と対策

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ハイドロカルチャーで育てているパキラが元気ない(葉が黄色い、葉が次々と落ちる、幹がぶよぶよするなど)場合、原因はほぼ以下の3つに絞られます。早急に対処しましょう。
主な症状 | 考えられる原因 | 具体的な対策 |
---|---|---|
・幹が根元からぶよぶよ(ブヨブヨ)する・水からドブのような異臭がする・ハイドロボールに白いカビが生えている・ | 根腐れ(ほぼ確定) | 緊急対処が必要です。すぐにパキラを取り出し、根を確認します。黒く変色してドロドロに腐った根は、清潔なハサミで全て切り落とします。健康な白い根だけを残し、容器とハイドロボールは食器用洗剤で徹底的に洗浄・乾燥させます。新しい根腐れ防止剤で植え直し、しばらくは水を与えず様子を見ます。 |
・葉が黄色くなる(特に下葉から)・ヒョロヒョロと間延びする(徒長)・葉の色が薄くなる | 日照不足 | パキラは耐陰性がありますが、光合成には日光が不可欠です。「耐陰性=日陰が好き」という誤解を解き、レースカーテン越しの明るい窓辺など、室内で最も明るい場所に移動させてください。ただし、夏の直射日光は葉焼けの原因になるため避けます。 |
・葉先が茶色く・チリチリに焦げたようになる・新芽が枯れる | 肥料焼け・乾燥 | 液体肥料の濃度が濃すぎるか、与える頻度が多すぎると「肥料焼け」を起こします。すぐに水やりを中止し、一度容器内の水を全て捨てて新しい水に入れ替えます。また、エアコンの風が直撃すると極端に乾燥して同様の症状が出ます。置き場所を見直してください。 |
冬場の管理(寒さ)に要注意
パキラは熱帯植物であり、寒さに非常に弱いです。一般的に安全なのは10℃以上、最低でも5℃以上の室温を保つ必要があります。冬場は必ず室内の暖かいリビングなどに置いてください。
特に注意したいのが窓際の冷気です。夜間、窓際は外気で急激に冷え込み、容器内の水温が極端に低下します。これが根に深刻なダメージを与えることがあるため、夜間は窓から1m以上離れた場所に移動させると安全です。
ハイポネックス社監修の記事でも、観葉植物の冬越しには室温の維持が重要であるとされています。(参照:Plantia by HYPONeX「冬の観葉植物、枯らさずに管理するコツは?」)
大きく成長させるコツ
ハイドロカルチャーは土栽培に比べて成長が緩やかになります。これは、根を張るスペースや養分が限られるためで、この特性を活かして「コンパクトなまま樹形を維持しやすい」というメリットとして捉えることもできます。
もし、ハイドロカルチャーのまま、できるだけ元気に大きく育てたい場合は、以下の2点が土栽培以上に重要になります。
- 適切な施肥(肥料やり):ハイドロボール自体には栄養が一切含まれていません。そのため、成長期の5月〜9月には、栄養を補給する必要があります。必ず「水耕栽培用」または「ハイドロカルチャー用」と記載された専用の液体肥料を使用してください。これを水やりの際に、規定の希釈倍率を守って与えます。冬の休眠期(10月~4月頃)は成長が止まるため、肥料を与えると「肥料焼け」の原因になり、逆効果です。
- 定期的な植え替えと鉢増し:1年~2年ほど育てると、容器の中で根がパンパンに詰まってきます(根詰まり)。根詰まりすると、それ以上根を伸ばすスペースがなくなり、成長がピタリと止まります。大きくしたい場合は、1年に1回、成長期の初め(5月頃)に、一回り大きな容器に植え替え(鉢増し)をして、根が伸びるスペースを確保してあげましょう。
とはいえ、土栽培のように天井に届くほどの大木にすることは困難です。あくまで「室内で管理できる範囲で、より元気に、より大きくする」という現実的なゴールを目指すのが良いでしょう。
パキラのハイドロカルチャーを長く楽しむ秘訣
最後に、パキラをハイドロカルチャーで失敗せず、長く元気に育てるための秘訣を、重要な要点リストとしてまとめます。これらを守れば、清潔でお洒落なグリーンライフを楽しめるはずです。
チェックリスト
- パキラはハイドロカルチャーでの栽培に適している丈夫な植物である
- 最大のメリットは土を使わないため清潔で虫がわきにくいこと
- 最大のデメリットは水管理を誤ると根腐れしやすいこと
- 100均の道具だけでも手軽に始めることができる
- 初心者は必ず水位が目視できる透明なガラス容器を選ぶ
- 根腐れ防止剤(ゼオライトなど)は必須アイテムであり省略しない
- 植え替えの最適期はダメージ回復が早い成長期(5月~9月)に行う
- 土栽培から植え替える際は根を傷つけず、土を完全に洗い流す
- 植え替え直後1~2週間は肥料を与えず明るい日陰で休ませる
- 水やりは容器の底の水が完全になくなってから数日待つ
- この「乾かす期間」が根に酸素を供給するために最も重要
- 毎日の水やりは絶対に不要で、根腐れの原因になる
- 水の量は容器の高さの1/5程度を目安にする
- 元気がない時は「根腐れ」「日照不足」「肥料焼け・乾燥」を疑う
- 霧吹きでの葉水は乾燥やハダニ予防のため毎日行うと効果的
- 成長は土栽培より緩やかになる(コンパクトに維持しやすい)
- 肥料は成長期(春~秋)に専用の液体肥料を規定量だけ与える
- 冬は肥料を与えず、水やり頻度も大幅に減らす
- 最低でも1年に1回は容器とハイドロボールを洗浄・交換するメンテナンスを行う
- 冬場は5℃以下にならないよう、窓際の冷気にも注意する