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ガジュマルを育てていると、「植え替え」という作業が必要になります。しかし、ガジュマルの植え替えは、適切な季節や頻度を守らないと、失敗につながることも少なくありません。
特に室内で大切に育てている場合、鉢のサイズはどれくらいが適切か、土の種類は何を選べばよいか、剪定や根を切る作業は必要なのか、といった疑問が次々と浮かんでくるものです。
さらに、植え替え後の水やりのタイミングや肥料の与え方など、植え替え後のデリケートな時期の管理方法に関する不安も多いのではないでしょうか。この記事では、ガジュマルの植え替えに関するあらゆる疑問を、基本から応用まで徹底的に解説します。
ポイント
- ガジュマルの植え替えが必要なサイン
- 初心者でも失敗しない植え替えの具体的な手順
- 植え替え後の正しい管理方法
- 植え替えと剪定を同時に行う場合の注意点
コンテンツ
ガジュマルの植え替え前に知るべきこと

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参考
- ガジュマルの植え替えを行う頻度
- 植え替えに適した季節はいつ?
- 鉢のサイズの選び方とサイン
- ガジュマルに適した土の種類
- 植え替えと剪定は同時に行う?
ガジュマルの植え替えを行う頻度
ガジュマルの植え替え頻度は、およそ2~3年に1回が基本的な目安です。
なぜなら、ガジュマルは生育が旺盛な植物であり、鉢という限られたスペースの中でも活発に根を伸ばすためです。同じ鉢で長年育て続けると、鉢の中が根でいっぱいになり「根詰まり」という状態を引き起こします。
根詰まりになると、根が新しい水分や養分を吸収するスペースがなくなり、結果として生育不良や葉の変色、最悪の場合は枯れてしまう原因となるのです。このため、定期的に新しい土と広いスペース(鉢)に入れ替える作業が必要になります。
ただし、この「2~3年」というのはあくまで目安です。日当たりが良い暖かいリビングなどで管理しているガジュマルは成長が早いため、2年経たずに植え替えが必要になることもあります。
年数で判断するのではなく、植物が発する「植え替えのサイン」を日頃からチェックすることが重要です。
具体的なサインについては、後述の「鉢のサイズの選び方とサイン」の項目で詳しく解説します。もしサインが見られた場合は、年数にかかわらず、次の植え替え適期に作業を計画しましょう。
植え替えに適した季節はいつ?

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ガジュマルの植え替えに最も適した季節は、生育期にあたる5月~9月です。
理由は、この時期がガジュマルにとって最も活発に成長する期間だからです。植え替えは、植物にとって少なからず根にダメージを与えるストレスのかかる作業となります。
しかし、生育期であれば、受けたダメージからの回復が非常に早く、新しい根も伸びやすいため、植え替えの成功率が格段に上がります。
特に、気温が安定して20℃以上を保てるようになる5月下旬から7月頃は、失敗が少ないベストタイミングと言えるでしょう。梅雨時期は空中湿度が高く、ガジュマルが好む熱帯の環境に近くなるため、株の負担がさらに軽減されると考えられます。
園芸の大手メーカーも推奨する時期
観葉植物の土や肥料を販売する大手メーカー、KINCHO園芸の公式サイトにおいても、ガジュマルの植え替え・植え付けの適期は「5月中旬~8月」とされており、やはり生育期に行うことが推奨されています。
植え替えを避けるべき時期(厳守)
逆に、冬場(11月~3月頃)の植え替えは絶対に避けてください。日本の冬はガジュマルにとって寒く、生育が緩慢になる「休眠期」に入ります。
この時期に根をいじると、ダメージから回復する体力がガジュマルに残っていません。水分を吸い上げる力が弱まるため、葉を維持できずに落としたり、最悪の場合、そのまま弱って枯れてしまったりする原因になります。
もし購入したのが冬であったとしても、鉢が窮屈そうに見えても、植え替えは春になり十分に暖かくなるまで待つのが賢明です。
鉢のサイズの選び方とサイン

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植え替えの際の鉢のサイズは、「現在植わっている鉢よりも“ひと回り”大きな鉢」を選ぶのが基本です。
「ひと回り」とは、具体的には現在の鉢の直径よりも約3cm大きいサイズを指します。例えば、現在が4号鉢(直径約12cm)であれば、次は5号鉢(直径約15cm)を選びます。急激に大きくするのではなく、根が伸びるスペースを少しだけ広げてあげるイメージです。
ここで注意したいのが、良かれと思って大きすぎる鉢を選ばないことです。鉢が大きすぎると、それに比例して土の量も多くなります。土の量が多いと、水やり後に土がなかなか乾かず、常に湿った状態が続いてしまいます。
ガジュマルの根も呼吸をしているため、土が過湿になると酸素不足に陥り、「根腐れ」を起こす最大の原因になってしまうのです。ガジュマルの成長を願うあまり大きな鉢にしがちですが、根腐れのリスクを高めるため避けましょう。
植え替えのサインを再確認
鉢のサイズアップ(植え替え)を検討すべき具体的なサインは「根詰まり」です。以下の表で、ご自身のガジュマルの状態をチェックしてみてください。
| チェック項目 | 具体的な状態 | 根詰まりの可能性 |
|---|---|---|
| 鉢底の確認 | 鉢底の穴から、白い健康な根が飛び出している。 | 高 |
| 水やりの状態 | 水を与えても、土の表面に水が溜まり、染み込むまでに時間がかかる。 | 高 |
| 土の状態 | 土の表面が固く締まっている。鉢と土の間に隙間ができている。 | 高 |
| 植物の状態 | 生育期なのに新芽が出ない。葉が小さくなったり、色が薄くなったりしてきた。 | 中~高 |
| 持ち上げた時 | 鉢に対して株が大きくなり、バランスが悪く倒れやすくなった。 | 中(成長の証) |
これらの症状が複数見られたら、現在の鉢が手狭になっている証拠です。適切な季節に、ひと回り大きな鉢への植え替えを準備しましょう。
ガジュマルに適した土の種類

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ガジュマルの植え替えに使用する土は、「水はけ(排水性)が良い土」を選ぶことが最も重要です。
ガジュマルは高温多湿な環境を好みますが、それは「空中湿度」のことであり、根が常に水に浸っている状態(過湿)は嫌います。
原産地である熱帯地域では、スコールのような激しい雨が降っても、水はけのよい土壌なのですぐに水が引いていきます。この環境を鉢の中で再現するため、水はけの良さが土選びの最優先事項となるのです。
土の準備には、大きく分けて2つの方法があります。
1.市販の「観葉植物用の培養土」を使う
園芸初心者の方や、手軽に植え替えをしたい方には、市販されている「観葉植物用の培養土」が最もおすすめです。
観葉植物用に水はけ(排水性)や保水力、通気性がバランスよく調整されています。また、元肥(初期肥料)が含まれている製品も多く、植え替え後の肥料の心配も減らせるでしょう。コバエの発生を抑えるために無機質の用土を配合している製品もあり、室内園芸に適しています。
2.自分で土を配合する(こだわり派向け)
よりガジュマルの生育環境にこだわりたい場合や、ご自身の水やり頻度に合わせたい場合は、自分で土をブレンドする方法もあります。基本的な配合例は以下の通りです。
ガジュマルの土の配合例と各用土の役割
配合例:赤玉土(小粒)5~6割+腐葉土:3割+パーライト:1~2割
- 赤玉土(小粒):ベースとなる土。排水性、保水性、通気性のバランスが良い。
- 腐葉土:保水性を高めつつ、植物の成長に必要な栄養分(有機物)を供給する。
- パーライト(または軽石):土の中に隙間を作り、排水性と通気性を格段に高める。根腐れ防止に重要。
どちらの方法でも問題ありませんが、大切なのは「水はけの良さ」を確保することです。また、植え替えの際は、鉢底に「鉢底石」を必ず敷き詰め、その上に「鉢底ネット」を置くことで、土の流出を防ぎ、さらに排水性を高めることができます。
植え替えと剪定は同時に行う?
結論から言うと、ガジュマルの植え替えと剪定は、同時に行っても問題ありません。むしろ、植物の負担を考えると、同時に行うことが推奨されるケースも多いです。
なぜなら、植え替えの適期(5月~9月)は、ガジュマルの生育期であり、剪定の適期とも完全に重なっているためです。株が最も元気な時期に、ストレスのかかる作業を一度で済ませてしまう方が、回復がスムーズに進みます。
特に、以下のような場合には同時作業が非常に効果的です。
植え替えと剪定を同時に行う最大のメリット
植え替え時に、根詰まりを起こしていたり、傷んだ根をカットしたりして根の量を減らした場合、それに合わせて枝葉の量も剪定で減らすことが重要です。
根は水分を吸い上げるポンプ、葉は水分を放出(蒸散)する場所です。根の量(ポンプの力)が減ったのに、葉の量(放出する場所)がそのままだと、吸い上げる水分より出ていく水分が多くなり、株が水切れを起こしやすくなります。
この「根と葉のバランス」を整え、蒸散量をコントロールすることで、植え替え後の株の負担を劇的に軽減できるのです。
ただし、ガジュマルの樹形を根本から変えるような強い剪定(強剪定)と、根を半分以上切り落とすような大幅な植え替えを同時に行うと、さすがに株への負担が大きすぎる場合があります。
そのような場合は、剪定を軽めにするか、植え替えが落ち着いて新芽が動き出してから剪定を行うなど、時期を少しずらすのも一つの方法です。
樹液(ラテックスアレルギー)に関する注意
ガジュマル(クワ科フィカス属)は、剪定すると切り口から白い樹液が出てきます。この樹液には「ラテックス」というゴムの成分が含まれていることがあります。
肌が弱い方やゴムアレルギー(ラテックスアレルギー)の方は、この樹液に触れるとかぶれたり、アレルギー症状を引き起こしたりする恐れがあります。
消費者庁からも「天然ゴム製品の使用によるラテックスアレルギーに御注意ください」という注意喚起が出されています。作業の際は、必ずゴム手袋ではない、園芸用の手袋(ビニール製やニトリル製など)を着用してください。
ガジュマルの植え替え手順と管理のコツ
参考
- 植え替え時に根を切る必要は?
- 植え替え直後の水やり
- 植え替え後の室内での置き場所
- 肥料を与えるタイミング
- 植え替えで失敗する原因
植え替え時に根を切る必要は?
植え替えの際、鉢から取り出したガジュマルの根をすべて切る必要はありませんが、状態に応じて適切に処理することが、その後の生育を大きく左右する重要なポイントです。
鉢から抜いたガジュマルは、まず古い土を優しく手でほぐしながら落とします。このとき、根の状態をよく観察してください。土がガチガチに固まっている場合は、無理にすべて落とそうとせず、全体の1/3程度をほぐすくらいで構いません。
1.傷んだ根や腐った根(根腐れ)
黒ずんでいたり、ブヨブヨして溶けるようになっている根、またはスカスカで中身がないような根は、根腐れを起こしています。これらの根は必ず清潔なハサミで切り落としてください。
ハサミは、事前に火で炙るかアルコールで消毒しておくと、切り口からの雑菌の侵入を防げます。腐った部分を放置すると、健康な他の根にも腐敗が広がる原因になります。
2.根詰まりしている根
鉢の形でガチガチに固まってしまっている場合は、根全体を優しく手で揉みほぐします。あまりにも長く伸びすぎている根や、鉢底でぐるぐるトグロを巻いている根は、全体の1/3程度を目安に軽く切り詰めても構いません。これにより、新しいスペースで新しい根の発生が促されます。
根の切りすぎに注意
ガジュマルの太い根は、養分や水分を蓄える重要な役割を持っています。健康な白い根、特に太い根を切りすぎると、ガジュマルが受けるダメージが非常に大きくなります。あくまで処理のメインは「傷んだ根の除去」と「固まった根をほぐす」ことだと考え、健康な根のカットは最小限に留めましょう。
3.大きくしたくない場合
前述の通り、これ以上ガジュマルを大きくしたくない(鉢のサイズをアップしたくない)場合は、根を全体的に1/3ほど切り詰めて整理し、同じサイズの鉢に新しい土で植え直すことも可能です。この場合は、必ず枝葉も剪定して、根と葉のバランス(吸水量と蒸散量)を調整してください。
植え替え直後の水やり
植え替えが完了したら、「鉢底の穴から水が流れ出るまで、たっぷりと」水やりを行うことが最初の最も重要なステップです。
これには2つの重要な理由があります。
- 土と根の密着:水圧で新しい土が根の隙間までしっかりと入り込み、根と土を密着させます。これにより、根が水分を効率よく吸収できるようになります。
- 微塵(みじん)の排出:土に含まれる細かすぎる粒子(微塵)を洗い流します。微塵が残ると、土が泥のように固まり、水はけが悪化して根腐れの原因になります。
一度たっぷりと水を与えたら、その後の水やりは非常に慎重に行う必要があります。
植え替え後の水やり管理(最重要)
植え替え直後の根は、ダメージを受けており水分を吸う力が弱っています。この状態で土が常に湿っていると、根が呼吸できず、簡単に根腐れを起こしてしまいます。
最初の水やりの後は、「土の表面が完全に乾いたのを確認してから、さらに1~2日待つ」くらい、普段よりも「やや乾燥気味」に管理してください。土が乾いているか不安な場合は、指で触ってみたり、乾いた割り箸を土に刺してみて湿り気を確認するのが確実です。
これは、植え替え後2週間~1ヶ月ほど、新しい根が活動を始めるまでの重要な管理ポイントとなります。
発根促進剤の活用
植え替え直後の最初の水やりの際に、市販の植物用活力剤(発根促進剤)を規定量に薄めて与えるのも効果的です。根の回復を助け、新しい根の発生を促す手助けとなります。
植え替え後の室内での置き場所

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植え替え直後のガジュマルは、「直射日光の当たらない、明るい日陰」で安静に管理することが、成功させるための最も重要なステップの一つです。
植え替えは、ガジュマルにとって「大手術」と同じです。根は新しい土に馴染もうとし、植え替え時に受けた細かな傷を修復しようとしています。このデリケートな時期に、普段と同じ管理、特に強い光に当てることは厳禁です。
理由は、「吸水」と「蒸散」のバランスが崩れているからです。植え替え後の弱った根は、水分を吸い上げる力が一時的に著しく低下しています。しかし、葉は光合成のために水分を放出(蒸散)し続けます。
この状態で強い直射日光に当てると、葉からの蒸散が激しくなり、根からの水分吸収がまったく追いつきません。結果として、ガジュマルは体内の水分を失い、葉がしおれたり、葉焼け(葉が茶色く枯れる)を起こしたりするのです。(参考:NHK for School「植物の「蒸散」」)
「明るい日陰」の具体的な場所とは?
「日陰」といっても、真っ暗な場所ではありません。「光は届くが、太陽の光線が直接葉に当たらない場所」を指します。
- レースのカーテン越し:最も理想的な場所です。光が柔らかく拡散されます。
- 窓から1〜2メートル離れた場所:直射日光は入らないが、部屋の明るさが十分にあるリビングや寝室。
- 北向きの窓辺:直射日光が入りにくい、安定した明るさの窓辺。
- (避ける場所:暗すぎる玄関、浴室、光の入らない廊下)
植え替えは、植物にとって「手術」のようなものです。人間が手術後、すぐにマラソンをせず、まずは安静にして体力の回復を待つのと同じです。ガジュマルにも「安静期間(養生期間)」が必要なのです。環境の変化が少ない、穏やかな場所でゆっくり休ませてあげましょう。
この安静期間の目安は約1~2週間です。ただし、これはあくまで目安であり、ガジュマルの回復力や、植え替え時にどれだけ根を整理したかによって異なります。
回復の兆し(=安静期間の終了サイン)は以下の通りです。
- 葉がしおれず、ピンとハリがある状態が続く。
- 枝の先端から、小さな新芽が動き出す(見えてくる)。
元の場所に戻す「ならし運転」の手順
回復の兆しが見えたら、元の置き場所(日当たりの良い場所)に戻しますが、いきなり戻してはいけません。安静な日陰に慣れた状態から急に強い光に当てると、再びショックを受けてしまいます。
以下の手順で、1週間ほどかけて「ならし運転」を行ってください。
ならし運転のスケジュール例
- 1〜2日目:午前中の柔らかい光に1〜2時間だけ当てる。
- 3〜4日目:午前中の光に3〜4時間当てる。
- 5〜6日目:レースカーテン越しで終日過ごさせる。
- 7日目〜:元の置き場所に戻す。
この過程で葉がしおれるようなら、無理をせず日陰に戻し、ならし運転のペースをゆっくりに調整してください。
最重要:エアコンやヒーターの風は厳禁
室内の置き場所として、エアコン、ヒーター、扇風機、サーキュレーターなどの風が直接当たる場所は絶対に避けてください。
これらの人工的な風は、自然のそよ風とは異なり、植物の水分を強制的に奪い続けます。植え替え後のデリケートなガジュマルは、この急激な乾燥に対応できず、葉がチリチリになったり、落葉したりする大きな原因となります。
肥料を与えるタイミング
植え替え後の肥料やりは、「最低でも1ヶ月」は絶対に控えてください。新しい土に入れ替えた直後は、良かれと思って栄養を与えたくなりますが、これは最もよくある失敗の一つであり、逆効果になります。
理由は、植え替えによってガジュマルの根は多かれ少なかれ細かな傷を負っており、肥料の成分を吸収する力が著しく低下しているためです。植え替え直後の根は、まず新しい土に順応し、傷を修復することに全力を注いでいます。
「肥料焼け」の危険性
このデリケートな時期に肥料を与えると、根が「肥料焼け」を起こしてしまいます。これは、浸透圧の原理によるものです。
土の中の肥料濃度が急激に高まると、根の内部よりも外部の濃度が高くなり、根が水分を吸い上げるどころか、逆に水分を奪われて脱水症状を起こします。これは、まさに傷口に塩を塗るような行為であり、株全体を深刻なダメージから枯死に至らせる原因となります。
また、市販の「観葉植物用の培養土」を使用した場合、その多くには「元肥(もとごえ)」と呼ばれる初期育成に必要な緩効性の肥料がすでに含まれています。ガジュマルが新しい根を伸ばし始めるには、この元肥で十分です。焦って追加の肥料を与える必要は全くありません。
「肥料」と「活力剤(発根促進剤)」の違い
ここで混同しやすいのが、「肥料」と「活力剤」です。
- 肥料(NPKなど):植物の体を作るための「食事・栄養」です。弱っている時には消化できません。
- 活力剤(発根促進剤):植物の回復を助ける「ビタミン剤・ホルモン剤」です。新陳代謝を活発にし、発根を促す助けになります。
植え替え直後に与えて良いのは、後者の「活力剤」です。必須ではありませんが、最初の水やりの際に活力剤を薄めた水を与えることで、根の回復をサポートする効果が期待できます。
では、いつから肥料を再開すればよいのでしょうか。目安は「植え替えから約1ヶ月後」ですが、日付で判断するのではなく、ガジュマルの状態を見て判断することが重要です。
以下の「成長再開のサイン」が明確に見られてから、最初の肥料やり(追肥)を開始してください。
- 新しい芽(新芽)が動き出す:枝の先端から、小さな黄緑色の新芽が展開を始める。
- 既存の葉が安定する:植え替え後の一時的な黄変や落葉が止まり、残った葉がしっかりと上向きでツヤがある。
最初の肥料やりは、通常の規定よりも2倍ほど薄めた液体肥料からスタートするのが最も安全です。例えば、1000倍希釈が通常なら、2000倍希釈にします。それを10日~2週間に1回程度与え、株の様子を見ながら徐々に通常の管理(緩効性肥料など)に戻していきます。
ただし、植え替えが夏の終わり(9月など)で、回復のサインが出たのが10月以降になった場合は、その年の肥料やりは控えます。
なぜなら、ガジュマルは気温が下がると生育が緩慢になるため、秋以降に肥料を与えると逆に根を傷める原因になるからです。その場合は、翌年の春、暖かくなってから肥料を再開しましょう。
植え替えで失敗する原因

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ガジュマルの植え替えで失敗してしまうケースには、驚くほど共通した原因があります。
多くの場合、「良かれと思って」の行動が裏目に出てしまいます。「大きく育ってほしいから大きな鉢に」「弱っているように見えるから肥料をあげよう」といった行動が、実は植え替え直後のガジュマルにとっては大きな負担となるのです。
ここでは、初心者が陥りがちな「よくある失敗」とその理由を深く掘り下げて解説します。なぜそれがダメなのかを理解することで、失敗を確実に防ぐことができます。
失敗1:植え替え時期の間違い(休眠期の作業)
最も致命的な失敗が、時期の間違いです。ガジュマルは熱帯植物であり、日本の冬(目安として11月~3月)は生育がほぼ停止する「休眠期」に入ります。
冬の植え替えはなぜダメなのか?
植え替えは、必ず根にダメージを与えます。生育期(5月~9月)であれば、ガジュマルは旺盛な生命力でそのダメージをすぐに修復し、新しい根を伸ばします。しかし、休眠期は植物が眠っている状態であり、ダメージを修復する体力がありません。根が傷ついたまま寒い冬を越すことになり、春になっても回復できず、そのまま枯れてしまうケースが非常に多いです。
失敗2:鉢が大きすぎること(大は小を兼ねない)
「どうせ大きくなるのだから」と、現在の株に対して不釣り合いなほど大きな鉢に植え替えるのも、根腐れを引き起こす典型的な失敗です。
植物を育てていると、つい「大きなお家」を用意してあげたくなりますよね。しかし、植物(特に根)にとっては、広すぎる家はかえって危険なのです。
理由は、「土と根のバランス」が崩れるからです。鉢が大きすぎると、土の量が根の量に対して圧倒的に多くなります。水やりをした際、根が吸いきれない「余分な水分」が土の中に長期間滞留することになります。
この乾かない土が根の呼吸を妨げ、酸素不足(嫌気状態)を招き、結果として根腐れを引き起こします。植物にとって、鉢は「大きすぎる」より「少し窮屈」なほうが安全なのです。
失敗3:植え替え直後の「お世話のしすぎ」
植え替え直後は、株が弱っているように見えるため、心配のあまり普段以上に「お世話」をしてしまいがちです。これが失敗の3大原因です。
- 水のやりすぎ:「元気になるように」と土が乾いていないのに水を与えると、傷ついた根は水分を吸えず、即座に根腐れにつながります。植え替え後は、根が酸素を求めて回復しようとします。土を乾かす時間こそが「回復の時間」だと認識してください。
- 日光に当てる:「光合成が必要だ」と直射日光に当てると、根が水分を吸い上げる力以上に、葉から水分が蒸散してしまいます。株は深刻な水切れ状態(しおれ・葉焼け)に陥ります。
- 肥料を与える:「栄養が必要だ」と肥料を与えると、傷ついた根が肥料の濃度に負けてしまい(肥料焼け)、致命的なダメージを受けます。これは手術直後の患者にステーキを出すようなものです。
これらの失敗を一覧で確認できるよう、以下の表にまとめます。
| 失敗の原因 | 具体的な内容 | 正しい対策 |
|---|---|---|
| 時期の間違い | 寒さに弱いことを忘れ、冬の寒い時期(休眠期)に植え替えてしまった。 | 必ず生育期(5月~9月)、気温が20℃以上安定する時期に行う。 |
| 鉢が大きすぎる | 早く大きくしたいと願い、株に対して大きすぎる鉢を選んだ。 | 鉢が大きすぎると土が乾かず根腐れする。必ず「ひと回り(直径+3cm)」大きいサイズを選ぶ。 |
| 土の選択ミス | 水はけの悪い土(庭土や古い土の再利用)を使った。 | 必ず「観葉植物用の培養土」など、新しく清潔で水はけの良い土を使う。 |
| 根の処理ミス | 健康な太い根を切りすぎた。または腐った根を残してしまった。 | 切るのは「傷んだ根・黒ずんだ根」をメインにし、健康な根は極力触らない。ハサミは消毒する。 |
| 植え替え後の管理ミス | すぐに直射日光に当てた。または心配で毎日水やりをした(過湿)。 | 植え替え後1~2週間は日陰で安静にし、水やりは「土が完全に乾いてから」を徹底する。 |
| 肥料のタイミング | 元気がないからと、植え替え直後に肥料(活力剤ではない)を与えてしまった。 | 肥料は根の負担になる。最低1ヶ月は与えず、株の回復(新芽)を待つ。 |
これらのポイントを守るだけでも、植え替えの失敗は大幅に減らすことができます。植え替え直後は「成長させる」ことよりも「無事に回復させる」ことを最優先に考えましょう。
ガジュマルの植え替え成功の鍵
ガジュマルの植え替えを成功させるための要点を、最後にリストでまとめます。これまでの内容の総チェックリストとしてご活用ください。
チェックリスト
- ガジュマルの植え替えは2~3年に1回が目安
- 鉢底から根が出る、水の吸水が悪いのは植え替えのサイン
- 最適な季節は生育期の5月~9月(気温20℃以上が望ましい)
- 冬の植え替えは絶対に避ける
- 鉢のサイズは「ひと回り」大きいものを選ぶ
- 大きすぎる鉢は根腐れの原因になるためNG
- 土は「観葉植物用の培養土」など新しく水はけの良いものを使う
- 鉢底石と鉢底ネットは必ず使用する
- 植え替えと剪定は同時に行っても良い(根の量と葉の量のバランスを取る)
- 根を切る場合は、黒ずんだ傷んだ根を優先的に処理する
- 根や枝を切るハサミは清潔なもの(消毒済み)を使う
- 植え替え直後は、鉢底から水が出るまでたっぷり水やりをする
- 植え替え後1~2週間は、直射日光の当たらない明るい日陰で安静に管理する
- 安静期間中の水やりは「土の表面が完全に乾いてから」を徹底する
- エアコンの風が直接当たる場所は避ける
- 植え替え後の肥料やりは、最低1ヶ月は控える
- 新芽が出るなど回復のサインが見えてから肥料を開始する