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大切に育てているガジュマルが、いつの間にかひょろひょろと間延びしていませんか。それはガジュマルの徒長と呼ばれる状態かもしれません。
室内で育てていると特に起こりやすいこの問題は、観葉植物の代表的な悩の一つです。主な原因は光量不足ですが、それだけではなく、水やりの頻度や肥料の与え方、さらには土の中の根腐れも複雑に関係していることがあります。
徒長してしまった枝は、残念ながら元の姿には戻りません。しかし、ガジュマルは生命力が非常に強いため、適切な剪定(仕立て直し)でリセットすることが可能です。
さらに、切った枝は挿し木で新しい株として増やす楽しみもあります。また、土を使わない水耕栽培(ハイドロカルチャー)でも、管理方法によっては徒長は起こり得ますし、場合によっては鉢ごと環境を見直す植え替えも必要になります。
この記事では、ガジュマルがなぜ徒長してしまうのか、その根本的な原因を深掘りし、ひょろひょろになった姿を復活させるための具体的な対処法、そして再び徒長させないための予防管理術まで、詳しく解説します。
ポイント
- ガジュマルが徒長する根本的な原因
- 徒長した枝の正しい剪定方法と「ふかし直し」
- 剪定後の植え替えや挿し木の手順
- 徒長を予防する日々の管理方法
コンテンツ
ガジュマルの徒長原因と見分け方

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参考
- ひょろひょろな枝は徒長のサイン?
- 徒長の主な原因は日光不足
- 室内での最適な置き場所とは
- 水やりの頻度は適切ですか?
- 根腐れが徒長を引き起こすことも
ひょろひょろな枝は徒長のサイン?
ガジュマルの一番の魅力は、何と言っても「多幸の木」の愛称にふさわしい、ぷっくりと太った幹や個性的な気根(きこん)、そして、そこにこんもりと密に茂る濃い緑色の葉の美しいコントラストにあります。購入した時は、あのがっしりとした力強い姿に惹かれたはずです。
しかし、育てているうちに「なんだか枝だけが細く伸びてきた」「葉と葉の間隔がスカスカになってきた」と感じることはありませんか。この、購入時のバランスが崩れ、枝や茎だけが間延びしてひょろひょろと細長く伸びてしまう状態こそが、「徒長(とちょう)」と呼ばれる現象です。「間延び(まのび)」とも言います。
徒長は、ある日突然起こるのではなく、数週間から数ヶ月かけてゆっくりと進行するため、初期段階では「成長しているのかな?」と見過ごしてしまいがちです。しかし、これは健康な成長ではなく、ガジュマルが発しているSOSサインです。以下のような具体的なサインが見られたら、徒長を強く疑ってください。
ガジュマルの徒長・見極めチェックリスト
- 節間(せっかん)が開く:葉と次の葉の間の茎部分(節間)が、以前と比べて不自然に長くなっていませんか。これは、植物が光を求めて、必死に茎を伸ばしている典型的な証拠です。
- 枝が細く力なく伸びる:新しく伸びてくる枝が、既存の太い枝に比べて明らかに細く、緑色が濃く(若く)なっていませんか。十分な光合成ができないため、枝を太らせる体力がなく、重力に負けて垂れ下がりやすくなります。
- 葉の色が薄くなる:健康なガジュマルの葉は濃い緑色ですが、徒長し始めると葉の色が黄緑色っぽく薄くなります。これは、光合成に不可欠な「葉緑素」を十分に作れていないサインです。
- 葉が小さくなる:株全体のエネルギーが不足しているため、新しい葉を作る体力(養分)が足りません。結果として、新しく展開する葉が、既存の葉よりも一回りも二回りも小さくなってしまいます。
- 樹形全体の崩れ:本来のがっしりとした根元や幹に比べ、先端の枝だけが不自然に伸び、全体のバランスが崩れます。根元の密度は変わらないのに、上部だけがスカスカで不格好な印象になります。
これらの状態は、ガジュマルが元気に「育っている」のではありません。「生き延びるために、今ある体力を振り絞って無理に光を探している」危険信号なのです。
見た目の問題だけでなく、徒長した枝は細胞が間延びしているため非常に軟弱です。そのため、病気にかかりやすくなったり、ハダニやカイガラムシといった害虫の格好のターゲットになったりします。
このSOSサインを放置すると、ガジュマルは光を求めて体力を消耗し続け、やがて葉を落とし始め、最悪の場合は枯れてしまうことにも繋がります。早期発見と、次にご紹介する原因を特定し、早急に対処することが何よりも重要です。
徒長の主な原因は日光不足

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ガジュマルの徒長を引き起こす最大の原因は、圧倒的な「日光不足」です。
植物は、光合成によって生きるためのエネルギーを作り出します。ガジュマルは本来、沖縄や東南アジアなどの強い日差しが降り注ぐ地域に自生する植物で、日光を非常に好みます。(参考:NHK趣味の園芸「ガジュマル」)
そのため、室内のような暗い場所に置かれると、植物は本能的に少しでも多くの光を浴びようとします。光を求めて枝を必死に伸ばそうとする生理現象、これが徒長の直接的なメカニズムです。
豆知識:徒長は「もやし」と同じ原理
私たちが普段食べている野菜の「もやし」は、まさに徒長の原理を意図的に利用したものです。豆の種子に光を当てずに暗所で育てることで、光合成を抑制し、代わりに茎が白くひょろ長く成長します。ガジュマルの徒長もこれと全く同じで、光が足りない環境が原因で起こっているのです。
室内で育てていると、どうしても光量が不足しがちです。特に、以下のような場所は徒長を招きやすいため注意が必要です。
- 窓から2メートル以上離れた部屋の奥
- 北向きの部屋の窓辺
- 建物の陰になる窓辺
- 照明が日中も薄暗いオフィスのデスク上
人の目には「明るい」と感じる場所でも、植物の光合成にとっては「暗すぎる」ケースは非常に多いのです。
室内での最適な置き場所とは
徒長を根本から防ぐためには、ガジュマルにとって快適な置き場所を見直すことが最も重要です。
結論から言うと、「レースカーテン越しの柔らかい光が一日中当たる、明るい窓辺」が室内での最適な置き場所です。
ガジュマルは日光を好みますが、原産地とは異なり、日本の特に夏の直射日光は強すぎます。強すぎる直射日光は、葉の組織が焼けてしまう「葉焼け」を起こす原因になります。葉焼けした部分は茶色や黒に変色し、光合成ができなくなり、元には戻りません。
そのため、直射日光は避けつつ、十分な明るさを確保できる場所を選ぶ必要があります。
方角別・置き場所のポイント
- 南向きの窓辺:最も理想的ですが、夏場は日差しが強すぎるためレースカーテンが必須です。
- 東向きの窓辺:優しい午前中の光が当たるため良い環境です。午後からは明るさを保てる場所に。
- 西向きの窓辺:午後の西日が強すぎるため、葉焼けに注意が必要です。レースカーテンなどで遮光してください。
- 北向きの窓辺:一日中光量が不足しがちで、最も徒長しやすい方角です。できるだけ窓の近くに置いてください。
注意:エアコンの風と窓際の温度変化
エアコンの風が直接当たる場所は、極度に乾燥するため絶対に避けてください。急激な乾燥は植物にとって大きなストレスとなり、葉を落とす原因になります。
また、冬場の窓際は、日中は暖かくても夜間は外気で非常に冷え込みます。ガジュマルは寒さに弱いため、この温度差で弱ることもあります。冬の夜間だけは、窓から少し離れた部屋の中央に移動させるなどの工夫も有効です。
もし、どうしても日当たりの良い場所を確保できない場合は、植物の光合成に必要な波長を補う「植物育成用LEDライト」などを活用し、人工的に光量を補う方法も検討しましょう。
水やりの頻度は適切ですか?

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水やりの頻度も、徒長と密接に関係しています。特に、ここまで解説した「日光不足」の環境下での「水のやりすぎ」は、徒長をさらに悪化させる最悪の組み合わせとなります。
日当たりが悪い場所では、土の水分が蒸発しにくくなります。さらに、植物自体も光合成が活発でないため、根から水を吸い上げる力が弱まっています。この状態で、土が乾いていないのに習慣的に水を与え続けると、土が常にジメジメと湿った「過湿(かしつ)」状態になってしまいます。
過湿状態は、後述する根腐れの直接的な原因になるだけではありません。植物が水分を過剰に吸収し、茎が水っぽく間延びしやすくなるため、徒長を物理的に助長してしまうのです。
水やりの絶対的な基本は、「土の表面が完全に乾いたのを指で触って確認してから、鉢底から水が流れ出るまでたっぷりと与える」ことです。
季節別・水やりの目安
| 季節 | 水やりの頻度(目安) | ポイント |
|---|---|---|
| 春・秋(成長期) | 土の表面が乾いたら | ガジュマルが最も成長する時期。乾いたらたっぷりと与えます。 |
| 夏(成長期) | 土の表面が乾いたら(ほぼ毎日になることも) | 気温が高く非常に乾きやすいため、水切れに注意します。朝か夕方の涼しい時間帯に与えてください。 |
| 冬(休眠期) | 土の表面が乾いてから2〜3日後 | 成長が鈍るため、水の吸い上げが遅くなります。乾燥気味に管理するのがコツです。 |
重要なのは「〇日に1回」と機械的に決めるのではなく、必ず毎回「土の状態を確認する」ことです。そして、受け皿に溜まった水は、根腐れの原因になるため必ず捨ててください。
根腐れが徒長を引き起こすことも
前述の通り、日光不足や水のやりすぎによって土が常に湿った状態が続くと、最終的に「根腐れ」を引き起こす可能性があります。
根腐れとは、土の中の水分が多すぎることで土壌内の酸素が不足し、根が呼吸できなくなって文字通り腐ってしまう状態です。植物の根も、私たちと同じように呼吸(酸素を取り込む)をして生きています。
土壌の通気性がいかに重要かは、農林水産省が推進する土壌改良の指針でも示されており、これは鉢植えの観葉植物においても全く同じです。
根が腐ると、植物は水分や養分を正常に吸収できなくなります。人間で言えば、栄養を吸収する腸が機能不全に陥ったようなものです。
根から十分なエネルギーを得られなくなった株は、残された最後の体力を振り絞って、子孫を残すために必死に光を求めようとします。その結果、弱々しい徒長した枝を伸ばすことがあるのです。これは、株が弱っている末期症状の一つとも言えます。
根腐れのサイン
- 土からカビ臭い、または酸っぱい異臭がする。
- 株元を持って軽く揺らすと、幹がぐらつく。
- 水やりをしても葉にハリが戻らず、しおれたままである。
- 健康だった葉が、特に理由なく黄色く変色して落ち始める。
これらのサインが見られる場合は、根腐れの可能性が非常に高いです。この状態になると、置き場所や水やりを見直すだけでは回復できません。早急に鉢から取り出し、腐った根を整理して新しい土に植え直す「植え替え」作業が必要になります。
ガジュマルが徒長する時の対処法と再生術
参考
- 徒長した枝の剪定方法と時期
- 植え替えによる環境リセット
- 肥料を与える最適なタイミング
- 剪定した枝を使った挿し木の方法
- 水耕栽培における徒長と対処法
徒長した枝の剪定方法と時期

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まず受け入れなければならないのは、一度ひょろひょろに徒長してしまった枝が、元の太くがっしりした姿に戻ることはないという事実です。
しかし、ガジュマルは非常に生命力が強く、萌芽力(ほうがりょく=新しい芽を出す力)も旺盛な植物です。
そのため、「剪定(せんてい)」によって不格好な部分をリセットし、新しい健康な芽を吹かせて樹形を仕立て直すことが可能です。この作業を園芸用語で「ふかし直し」や「仕立て直し」と呼ぶこともあります。
剪定の最適な時期
剪定は、植物にとって大きな手術と同じです。手術後に回復するための体力が必要なため、ガジュマルの生育が最も活発になる成長期(5月〜9月頃)に行うのが最適です。
特に気温が安定して20℃以上を保てる時期であれば、剪定で枝葉を失ってもすぐに新しい芽が芽吹いてきます。梅雨時期は湿度が高く、挿し木(後述)の成功率も上がるためおすすめです。
逆に、気温が下がり始める10月以降や、成長がほぼ止まる冬場の剪定は絶対に避けてください。回復する体力が残っておらず、剪定した切り口から枯れ込み、最悪の場合そのまま株全体が枯れてしまうリスクが非常に高いです。
剪定(ふかし直し)の手順
徒長した枝をリセットするには、中途半端に切るのではなく、思い切って短く切り戻すことが成功のコツです。
手順
- 理想の樹形をイメージする:まず、剪定後にどのような形にしたいのか、どこから新しい芽を出させたいのかを具体的にイメージします。
- 成長点を残してカットする:ガジュマルの枝をよく見ると、葉の付け根や、葉が落ちた跡に「成長点」と呼ばれる小さな膨らみがあります。新しい芽は必ずここから出てきます。この成長点の5mm〜1cmほど上を、清潔なハサミでカットします。成長点ギリギリで切ると新芽が出ないことがあるため、少し余裕を持たせましょう。
- 思い切ってカットする:徒長した部分は、思い切ってバッサリと切り戻します。全ての枝を切り落として幹だけの「丸坊主」状態にしても、ガジュマルは元気に芽吹くほどの生命力を持っています。中途半端に残すと、結局その先端からまた不格好な枝が伸びる原因になります。
【最重要】樹液(ラテックス)による皮膚炎に注意
ガジュマルはクワ科フィカス属の植物で、ゴムの木の仲間です。枝や幹を切ると、断面から白い樹液(ラテックス)が流れ出てきます。この樹液にはタンパク質分解酵素などが含まれており、体質によっては皮膚に触れるとかぶれやアレルギー反応(接触皮膚炎)を引き起こすことがあります。
実際に、フィカス属を含むクワ科植物の樹液は、厚生労働省「職場のあんぜんサイト」においても、皮膚への刺激性やアレルギー反応の可能性が指摘されています。
剪定作業の際は、必ずゴム手袋や園芸用手袋を着用し、樹液が皮膚に直接付着しないよう十分に注意してください。もし付着した場合は、すぐに大量の流水でしっかりと洗い流しましょう。目に入った場合は特に危険ですので、直ちに洗い流し医師の診断を受けてください。
植え替えによる環境リセット

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もし徒長の原因が、日光不足だけでなく「根詰まり」や「根腐れ」、あるいは「土の劣化」にあると疑われる場合は、剪定と同時に「植え替え」を行うのが最も効果的です。
以下のようなサインが見られたら、植え替えのタイミングです。
- 購入してから2〜3年以上、一度も植え替えていない。
- 鉢の底穴から根が飛び出している。
- 水やりをしても、水が土に染み込まず表面に溜まる。
- (前述の)根腐れのサインが見られる。
鉢の中で根がパンパンに詰まった「根詰まり」を起こすと、水や養分の吸収がうまくいかなくなり、植物は新しい根を伸ばすスペースを失います。これも生育不良や徒長の間接的な原因となります。
植え替えも剪定と同様に、植物への負担が少ない成長期の5月〜9月が適期です。
植え替えの基本手順
- 準備:現在の鉢より一回り大きな鉢(直径で3cm程度大きいもの)と、新しい「観葉植物用の培養土」を準備します。水はけを良くするために鉢底石と鉢底ネットも用意します。
- 株を抜く:鉢の縁を軽く叩いて土をほぐし、株元を持って優しく引き抜きます。
- 根を整理する:鉢から抜いた根鉢(根と土が固まったもの)の古い土を、3分の1程度優しく手で揉みほぐして落とします。この時、黒く変色してブヨブヨになった腐った根や、異常に長く伸びすぎた根があれば、清潔なハサミでカットします。
- 植え付け:新しい鉢に鉢底ネット、鉢底石を敷き、培養土を少し入れます。ガジュマルの株を中央に置き、隙間に新しい培養土を足していきます。割り箸などで土を突きながら入れると、根の隙間まで土がしっかり入ります。
- 水やり:植え付けが終わったら、鉢底から透明な水が流れ出るまでたっぷりと水を与えます。
植え替え直後は、根が新しい環境に慣れるまでダメージを受けている状態です。すぐに肥料は与えず、直射日光の当たらない明るい日陰(半日陰)で1〜2週間ほど休ませて(養生させて)から、徐々に通常の管理場所に戻していきます。
肥料を与える最適なタイミング
肥料はガジュマルを元気に育てるための「栄養剤」ですが、与えるタイミングと種類を間違えると、かえって徒長を悪化させる原因になります。
まず、ひょろひょろと徒長している最中に肥料を与えるのは絶対にやめてください。
植物の成長に必要な三大栄養素は「窒素(N)・リン酸(P)・カリ(K)」です。このうち、窒素(N)は「葉肥え」とも呼ばれ、葉や茎の成長を促進する働きがあります。
日光が不足している状態で窒素分を与えると、行き場のないエネルギーが葉や茎を伸ばすことに使われ、さらに徒長を悪化させてしまうのです。
肥料を与えるべき最適なタイミングは、剪定や植え替えを行い、株が環境に慣れて新しい芽が元気に伸び始めたのを確認してからです。
肥料の種類と与え方(成長期:5月〜9月)
- 緩効性固形肥料(置き肥):プロミックやマグァンプKなどが代表的です。土の上に規定量を置くだけで、水やりのたびにゆっくりと栄養が溶け出します。効果が1〜2ヶ月持続するため、手間がかかりません。
- 即効性液体肥料(液肥):ハイポネックスなどが代表的です。水で規定の倍率(薄めが基本)に薄め、10日〜2週間に1回程度、水やりの代わりに与えます。効果がすぐに出ますが、与えすぎは「肥料焼け」(肥料が濃すぎて根が傷むこと)の原因になるため注意が必要です。
どちらか一方で問題ありませんが、早く大きくしたい場合は両方を併用することもあります。ただし、ガジュマルの生育が鈍る冬場(10月〜4月頃)は、根が栄養を吸収しきれず肥料焼けの原因になるため、肥料は一切与えないでください。
剪定した枝を使った挿し木の方法

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剪定でやむなくカットした元気な枝は、捨てずに「挿し木(さしき)」で増やすことができます。ガジュマルは非常に発根しやすく、生命力が強いため、初心者の方でも成功率が高いのが魅力です。
挿し木も、親株の成長期に合わせて5月〜9月に行うのが最も適しています。
挿し木(土挿し)の手順
- 挿し穂(さしほ)の準備:剪定した枝のうち、元気な部分を10〜15cmほどの長さにカットします。
- 葉の整理:枝の先端についている葉を2〜3枚だけ残し、他の葉はすべて付け根から切り落とします。残した葉も、水分の蒸散を防ぐために、ハサミで半分ほどの大きさにカットします。
- 水揚げ:切り口をカッターなどで斜めに鋭くカットし直します(断面積を広くして吸水しやすくするため)。コップなどの容器に水を入れ、切り口を1〜2時間ほど浸けて「水揚げ」をさせます。(この時、切り口から出る白い樹液も洗い流せます)
- 土に挿す:挿し木用の清潔な土(市販の挿し木用土や、赤玉土小粒、鹿沼土など)をポットやトレーに入れます。土はあらかじめ湿らせておき、割り箸などで穴を開けてから挿し穂を挿します。
- 管理:土が乾かないように霧吹きなどで湿度を保ち、直射日光の当たらない明るい日陰(半日陰)で管理します。順調にいけば、数週間〜1ヶ月ほどで発根し、新しい芽が動き始めます。
もっと手軽な「水挿し」
土に挿す代わりに、そのまま水を入れた容器に挿し穂を挿しておく「水挿し(みずさし)」でも、ガジュマルは簡単に発根します。
メリット:土を準備する必要がなく手軽。根が出てくる様子を観察できる。
デメリット:水が腐りやすく、毎日取り替える必要がある。水で出た根は土用の根と性質が少し違うため、土に植え替えた際にうまく馴染めないことがある。
どちらの方法でも可能ですので、管理しやすい方を選んでみてください。
水耕栽培における徒長と対処法
「土を使わないから清潔」「虫が湧きにくい」「透明な容器でおしゃれ」といった理由から、ハイドロカルチャー(水耕栽培)やハイドロボールでガジュマルを管理している方も多いでしょう。
しかし、栽培方法が土から水に変わっても、ガジュマルが光合成を必要とする植物であることに変わりはありません。それどころか、土栽培以上に徒長しやすい条件が揃ってしまうケースが多いため、特有の管理知識が必要です。
水耕栽培での徒長には、主に3つの原因が複雑に絡み合っています。
原因1:圧倒的な日光不足
第一の原因は、土栽培と同じく「日光不足」です。ハイドロカルチャーは土がこぼれず衛生的であるという利点から、かえって光が全く届かないオフィスのデスク上や、窓のない玄関、洗面所などにインテリアとして置かれがちです。
植物にとっては光合成が全くできない過酷な環境であり、本能的に光を求めてひょろひょろと伸びてしまうのは、当然の結果と言えます。
原因2:肥料バランスの崩壊(窒素過多)
これが水耕栽培特有の、非常に大きな原因です。土栽培の場合、土自体が養分を保持・緩衝(バッファ)する役割を担い、微生物が養分を分解することで、肥料の効果はゆっくりと現れます。
しかし、ハイドロボールなどを用いる水耕栽培では、養分を緩衝する土壌や微生物が存在しません。そのため、与えた液体肥料はダイレクトに、かつ即効性をもって根から吸収されます。
ここで、前述の「日光不足」と組み合わさることが最大の問題です。光が足りず光合成(エネルギー生産)ができないのに、根からは肥料(エネルギーの素)だけが大量に送り込まれる...。
この「アクセル(光)を踏まずに、ガソリン(肥料)だけを大量に送り込む」ような深刻なアンバランス状態が、ガジュマルの徒長を強力に助長します。特に窒素(N)分は茎や葉を伸ばす働きがあるため、過剰になるとあっという間にひょろひょろとした不格好な姿になってしまいます。
原因3:根腐れによる体力低下
3つ目の深刻な原因は、水耕栽培の宿命とも言える「根腐れ」です。土と違って常に水に触れているため、管理を誤るとすぐに根が酸素不足に陥ります。容器の底に常に水が満たされている状態が続くと、根が呼吸できなくなり、文字通り腐り始めます。
腐った根は水分や養分を正常に吸収する能力を失うため、株全体が深刻なエネルギー不足に陥ります。その結果、生き残るために残された最後の力を振り絞って光を求め、弱々しく徒長するという悪循環に陥るのです。
水耕栽培(ハイドロカルチャー)の徒長・対処法
- 置き場所の変更(最優先):まずは土栽培と同じく、より明るい場所へ移動させることが最優先です。レースカーテン越しの明るい窓辺が理想です。「明るい日陰」ではなく、「直射日光の当たらない明るい場所」を選んでください。
- 水の管理(乾湿のメリハリ):根腐れを防ぐため、水の量と頻度を徹底的に見直します。容器の底に水が溜まりっぱなしで、根が常に水に浸かっている状態は最悪です。水やりの量は、容器の高さの1/5程度(根の先端がギリギリ浸かるか浸からないか程度)を上限とし、根が空気に触れる空間を必ず作ります。そして、容器の水が完全になくなってから、さらに1〜2日待つ(乾かす期間)。この「乾湿のメリハリ」が根腐れを防ぎ、健康な根を育てます。
- 液体肥料の即時ストップ:徒長している間は、液体肥料を一切ストップしてください。弱っているところに肥料を与えても、さらに徒長を助長するだけです。肥料を与えるのは、剪定などで仕立て直し、新しい芽が元気に動き始めてからです。その際も、必ず日光が十分に当たる場所で、規定量よりもさらに薄めたものを、成長期(春〜秋)に限定してごく少量与える程度に留めてください。
- 根腐れ防止剤の活用(必須):これは予防策として必須です。水の腐敗を防ぎ、根の健康を保つために、「ゼオライト」や「ミリオンA(珪酸塩白土)」といった根腐れ防止剤を、必ず容器の底に敷いてから植え付けてください。これらは水を浄化し、ミネラルを補給する効果も期待できます。すでに植えている場合は、一度取り出して底に敷き直すことを強く推奨します。
ガジュマルの徒長を防ぐ育て方のコツ
最後に、ガジュマルの徒長を防ぎ、購入時のような健康でがっしりとした株を長く楽しむための育て方のコツを、総まとめとしてリストアップします。
チェックリスト
- ガジュマルの徒長は「ひょろひょろ」と枝葉が間延びする状態を指す
- 最大の原因は「日光不足」であり、光を求めて無理に伸びる生理現象である
- 徒長は株が弱っている危険信号であり、放置すると病害虫や枯れる原因になる
- 室内では「レースカーテン越しの明るい窓辺」が最適な置き場所である
- エアコンの風が直接当たる場所や、冬場の窓際の急激な温度変化は避ける
- 徒長してしまった枝が元の姿に戻ることはない
- 対処法は、成長期(5月〜9月)に思い切って「剪定(ふかし直し)」でリセットする
- 剪定は必ず「成長点(節)」の少し上をカットする
- 剪定時に出る白い樹液(ラテックス)は皮膚炎の原因になるため、必ずゴム手袋を着用する
- 根詰まりや根腐れが疑われる場合は、剪定と同時に植え替えを行う
- 植え替え時は腐った根を取り除き、新しい水はけの良い土を使用する
- 徒長している最中には、窒素(N)分を含む肥料を絶対に与えない
- 肥料は、剪定後に新芽が元気に動き出してから、成長期(5月〜9月)にのみ与える
- 冬場(休眠期)は肥料も水やりも控えめにし、乾燥気味に管理する
- 剪定した枝は「挿し木」や「水挿し」で簡単に増やすことが可能
- 水耕栽培(ハイドロカルチャー)でも日光不足や肥料過多で徒長する
- 水耕栽培は根腐れ防止剤を活用し、水の与えすぎに注意する
- 水やりは「土の表面が乾いたら、鉢底から出るまでたっぷり」が全季節共通の基本
- 日光が不足しがちな環境では、水やりの頻度を通常よりさらに空け、根腐れを防ぐことが最優先