ドラセナ

赤いドラセナの挿し木ガイド!時期や方法、大切なコツを解説

記事内に商品プロモーションを含む場合があります

日本人男性が自宅の作業テーブルでドラセナ(赤いドラセナ)を前に、挿し木に使う清潔な道具(カッター・ハサミ)や用土を丁寧に並べ、これから作業を始めるように植物を見つめている。道具を確認する手元の動作が明確。明るい室内、植物作業の空気感。

観葉スタイル・イメージ

こんにちは。観葉スタイル、運営者の「まさび」です。

「赤いドラセナ」って、あの鮮やかな葉が魅力的ですよね。部屋にあるだけでパッと明るくなるというか。でも、育ってくると「ちょっと形を整えたいな」「この素敵な株を増やせないかな?」と思う瞬間が来ませんか。

まさにその「挿し木」で増やす方法に興味を持たれたのだと思います。でも、いざ「赤いドラセナの挿し木」のやり方を調べてみると、水挿しや茎伏せといった色々な方法が出てきたり、そもそもその植物がコルディリネという名前だったりして、少し混乱してしまうかもしれません。

特に挿し木に挑戦する上で一番心配なのは、「挿し穂が腐るんじゃないか」「うまく発根しないんじゃないか」という点ですよね。最適な時期や使う土についても、失敗しないための正しい知識が知りたいところだと思います。

この記事では、私自身が観葉植物愛好家として学んだ経験も踏まえながら、赤いドラセナの挿し木を成功させるための具体的なステップを、できるだけ分かりやすくまとめてみました。

ポイント

  • 赤いドラセナの正体(コルディリネ)と挿し木時期
  • 土挿し・水挿し・茎伏せ、3つの具体的なやり方
  • 「腐る」「発根しない」といった失敗の原因と対策
  • 挿し木後の鉢上げと親株のケア方法

赤いドラセナの挿し木を始める前の重要知識

本人女性が2株のドラセナ(コルディリネ系とドラセナ系)を並べ、根の色や葉の幅などを手に取って比較している。片方の鉢を軽く持ち上げ、葉や根元を近距離で観察する具体的動作。背景は室内の明るい棚。

観葉スタイル・イメージ

挿し木を成功させるには、まず「相手を知る」ことがすごく大事です。私たちが「赤いドラセナ」と呼んでいる植物の正体や、挿し木に最適なシーズン、そして失敗を防ぐための道具や土選びについて、基本的なところから確認していきましょう。

その正体とコルディリネとの違い

日本人女性がドラセナの根元や葉を指さしながら、2種類の特徴を見比べているシーン。根の色の違いを確認するために片方の鉢の根元を少し持ち上げる仕草が含まれる。分類の違いを視覚で理解しようとしている場面。

観葉スタイル・イメージ

お店で「赤いドラセナ」として買ったのに、育て方や増やし方を調べてみると「コルディリネ」という名前が出てきて、「え、どっち?」って混乱しますよね。私も最初はそうでした。

実は、園芸市場で「赤いドラセナ」として流通している植物の多くは、植物学的には「コルディリネ属(Cordyline)」であることがほとんどなんです。「センネンボク(千年木)」と呼ばれるのもこの仲間ですね。

もちろん、ドラセナ属にも「ドラセナ・コンシンネ・レインボー(Dracaena marginata 'Rainbow')」のように、葉の縁が赤く色づく美しい品種は存在します。こちらも「赤いドラセナ」として流通することがあります。(ドラセナ属については、ドラセナ・コンシンネの剪定の記事でも少し触れています)

ただ、私たちが一般的に「赤ドラセナ」と聞いてイメージする、葉が全体的に鮮やかな赤色や暗赤色をしている品種、例えば「コルディリネ・ターミナリス '愛知赤'」や「コルディリネ・オーストラリス 'レッドスター'」などは、実際にはコルディリネ属の植物なんですね。

この2つの属は、植物分類学の歴史の中で、かつてコルディリネ属がドラセナ属に含められていた時期があるため、園芸市場では今でも混同されて呼ばれ続けている、という背景があるようです。

見た目はとても似ていますが、挿し木やその後の管理(特に耐寒性)に関わる、決定的な生物学的な違いがあります。

ドラセナ属とコルディリネ属の主な違い

  • コルディリネ属 (Cordyline)通称「赤ドラセナ」はこちらが多い。地下に太い「根茎(こんけい)」と呼ばれる地下茎を形成し、根が「白い」のが最大の特徴です。
  • ドラセナ属 (Dracaena)「幸福の木(マッサンゲアナ)」や「コンシンネ」がこの仲間。根茎は作らず、根が「黄色」や「オレンジ色」をしています。

「根の色」が一番確実な見分け方なのですが、購入時や育成中に鉢から出して根を確認するわけにもいきませんよね。なので、挿し木をする上では「私が育てているこの株は、コルディリネ属の可能性が高いな」とあたりをつけておくことが大切です。

なぜこれが挿し木に関係あるかというと、コルディリネ属は耐寒性がドラセナ属よりやや強い品種(例:'レッドスター'など)があったり、根茎を持つ特徴から後述する「茎伏せ」という増やし方が特に有効だったりするからです。

この記事では、この市場で主流の「コルディリネ属の赤いドラセナ」を前提に、挿し木の方法を詳しく解説していきます。

「赤いドラセナ」主要品種 比較表(目安)

※横にスクロールできます
比較項目ドラセナ・コンシンネ・レインボーコルディリネ・ターミナリス '愛知赤'コルディリネ・オーストラリス 'レッドスター'
ドラセナ属 (Dracaena)コルディリネ属 (Cordyline)コルディリネ属 (Cordyline)
葉の特徴細く、赤・緑・黄のストライプ葉が広く、光沢のある鮮やかな赤色細く、硬質で、暗赤色で放射状に広がる
根の特徴黄色・オレンジ色、根茎なし白色、太い根茎(地下茎)あり白色、太い根茎(地下茎)あり
耐寒性 (目安)弱い(10℃以上推奨)弱い(5℃~10℃以上)やや強い(品種により-3℃程度まで耐える)
主な増やし方挿し木、取り木挿し木、茎伏せ、株分け挿し木、茎伏せ、株分け

※耐寒性や性質はあくまで一般的な目安であり、育成環境や個体差によって異なります。

挿し木の最適な時期は5月~8月

日本人男性がカレンダーを眺めながらドラセナの鉢を手に取り、窓の外の明るい初夏の光を確認している。片手でドラセナの新芽を撫でながら、適期を見極めている動作。季節感のある明るい背景。

観葉スタイル・イメージ

挿し木は、思い立ったらいつでもやって良い、というわけではないんです。これが成功率を左右する最大のポイントと言っても過言ではないかもしれません。

最適な時期は、植物の「生育期」である5月~8月です。

「生育期」とは、植物が一年で最も活発に成長する季節のこと。気温が十分に高くなり、光合成を盛んに行い、新しい葉や根を次々と展開しようとするエネルギーに満ち溢れている状態です。挿し木(=剪定)という「手術」に耐え、新しい根を伸ばすための体力が、挿し穂(カットした茎)にも親株にもたっぷり蓄えられています。

このエネルギーがあるからこそ、切り口から発根するという大きな仕事を成し遂げられるんですね。

成功の鍵は「気温」

カレンダー上の「5月~8月」というのも大事ですが、一番重要なのは「気温」です。植物が細胞分裂を活発にし、発根するのに適した温度は、だいたい25℃前後とされています。(出典:群馬県林業試験場「発根率」※PDF資料)

ですので、日本の気候でいうと、梅雨時期(6月~7月)の「高温多湿」な環境は、実は挿し木にとって最高のコンディションだったりするんです。気温が25℃前後に保たれやすく、空中湿度も高いため、挿し穂が乾燥しにくいんですね。

ただし、高温多湿は同時に「腐敗菌(カビなど)」も活発になる時期です。清潔な道具と土を使うことが、この時期は特に重要になります。

もちろん、お住まいの地域によっても最適な時期はズレます。例えば、北海道の5月ではまだ気温が足りないでしょうし、沖縄では4月頃から可能かもしれません。カレンダーを鵜呑みにせず、「最低気温が20℃を安定して超え、日中の気温が25℃前後になる時期」を目安にするのが一番確実かなと思います。

避けるべき時期:秋~冬

逆に、気温が下がってくる秋以降、特に冬(10月~3月頃)は植物が「休眠期」に入ります。これは植物が寒さから身を守るために成長をストップさせ、じっと耐えている状態です。

この時期にカット(剪定)してしまうと、挿し穂にも親株にも発根・再生する体力が残されていません。

結果として、根が出る前に切り口が寒さと湿気で腐ってしまい、ほぼ確実に失敗してしまいます。コルディリネの多くは耐寒性が低く、10℃を下回ると弱り始めることからも、挿し木プロセス全体を通じて最低でも15℃、できれば安定して20℃以上を保てる時期に行うのが鉄則ですね。

失敗しないための土と道具の準備

「よし、時期はOK!」となったら、いよいよ準備です。挿し木の失敗で一番多い「腐敗」は、この準備段階で防げることも多いですよ。植物の「外科手術」を行うイメージで、清潔な環境を整えましょう。

1. 清潔な刃物

切れ味の良いハサミやカッターナイフを用意します。ここで最も重要なのは「清潔」であること。植物の切り口は、人間の傷口と同じです。目に見えない雑菌が付着した刃物で切ると、その雑菌が植物の道管(水分や養分を運ぶ管)に入り込み、内部から腐敗が始まってしまいます。

▼消毒の方法

  • アルコール消毒:市販の消毒用アルコール(エタノール)を染み込ませたティッシュや布で、刃を丁寧に拭きます。一番手軽で確実です。
  • 熱湯消毒:沸騰したお湯に刃先を数十秒浸けます。やけどに注意してください。
  • 火で炙る:ガスコンロやライターの火で刃先をサッと炙ります。熱で樹脂などが溶けて付着することもあるので、その後でアルコールで拭き取ると万全です。

▼ハサミよりカッター?

どちらでも良いのですが、もし可能なら「カッターナイフ」の使用をおすすめします。一般的なハサミは、2枚の刃で茎を「挟み切る」ため、どうしても茎の細胞(特に道管)を潰してしまいがちです。

一方、カッターナイフなら「引き切る」ことで、細胞を潰さずスパッと切断できるため、その後の吸水がスムーズになり、挿し木の成功率が上がると言われています。もちろん、カッターの刃も清潔なもの(できれば新品の刃)を使いましょう。

2. 挿し木用の土(挿し床)

これもキーワードは「清潔」です。そして、「無肥料」「排水性(通気性)が高い」ことが絶対条件です。

▼推奨される土

  • 赤玉土(小粒)の単体:最も一般的で入手しやすく、無菌・無肥料で排水性・保水性のバランスが良い、挿し木の「王道」とも言える土です。
  • 市販の挿し木専用土:赤玉土やバーミキュライト、パーライトなどが最適な比率でブレンドされており、何も考えずに使えるので初心者の方には一番おすすめです。
  • バーミキュライト:非常に軽く無菌で、保水性・保肥性が高い用土です。単体だとやや水持ちが良すぎる(=過湿になりやすい)こともあるので、赤玉土やパーライトと混ぜるのも良いですね。

▼普段の培養土がNGな理由

普段使っている「観葉植物用の培養土」は、腐葉土や堆肥などの有機質(肥料分)が豊富に含まれています。これは成長中の植物には最高の「ご飯」ですが、発根していない挿し穂にとっては、その栄養分が逆に雑菌のエサになり、切り口を一気に腐敗させる原因になってしまうんです。

挿し木段階では、根を出すことに全集中させます。栄養は、無事に発根した後に与えれば良いのです。

3. その他(鉢・オプション)

  • 鉢・トレー挿し穂を挿すための容器です。素焼き鉢は乾きやすいので、挿し木管理には不向きかもしれません。水はけの良いプラスチックの鉢や、育苗用の連結ポット、プラスチックトレーなどが管理しやすいです。もちろん、鉢底穴があることが前提です。
  • 水挿し用の容器透明なガラスのコップや瓶がおすすめです。発根の様子が外から見えるので、管理のモチベーションが上がりますよ。
  • 発根促進剤(オプション)「ルートン」などの名前で市販されています。植物ホルモン(オーキシン類)が含まれており、切り口に少量まぶしてから挿すことで、カルス(後述)の形成や発根を促進する効果が期待できます。必須ではありませんが、「絶対に成功させたい!」という時には心強いお守りになります。
  • 癒合剤(オプション)これは挿し穂ではなく、親株(切られた側)の切り口に塗る保護剤です。「トップジンMペースト」などが有名で、切り口の乾燥や雑菌の侵入を防ぎます。太い幹を切った時にはあると安心です。

挿し穂の準備とカットのコツ

道具が揃ったら、いよいよ親株から挿し穂をカットします。挿し穂の「質」が、その後の成功率を大きく左右します。できるだけ病気や害虫の被害がなく、葉の色が鮮やかで元気な茎を選びましょう。

簡単な流れ

  1. カットする長さ: 茎の先端部分(成長点がある部分)を、10cm~15cmほどの長さでカットします。これは、先端の元気な葉を3~5枚程度残しつつ、土に挿す部分(2~3cm)と、土の中で根を張るための「節」を確保できる、バランスの良い長さがこのくらい、ということです。
  2. 葉の整理: 挿し穂の体力(水分)を温存させるため、余計な葉を取り除きます。先端の若く元気な葉を3~5枚程度残し、それ以外の根元側の葉は、茎の付け根から手で優しく(あるいは清潔なハサミで)すべて取り除きます

    葉が多すぎると、そこから水分がどんどん蒸発(蒸散)して、根がない挿し穂はすぐに水切れを起こし、シナシナになってしまいます。

  3. 蒸散を防ぐ(葉のカット): 残した葉が長い場合、そのままだと葉の面積が広すぎて、結局は蒸散が進んでしまいます。そこで、残した葉の先端を、ハサミで半分ほどの長さにカットします。

    見た目はちょっとかわいそうですが、これは挿し穂が乾燥するのを防ぎ、体力を発根に集中させるための非常に有効なテクニックです。あるいは、葉を輪ゴムや紐で軽く束ねておく方法もあります。

  4. 切り口の処理(切り戻し): 土に挿す側の切り口を、消毒したカッターナイフで「斜めに」スパッと切り戻します。一度ハサミで切ったとしても、カッターで再度切り口を整え直すのがベストです。

    なぜ「斜め」に切るのか?理由は2つあります。1つは、吸水面積を最大化するため。まっすぐ切るよりも、斜めに切る方が断面積が広くなり、より多くの水を吸い上げることができます。もう1つは、ハサミで潰れた細胞を除去し、新鮮で元気な細胞を露出させるためです。

  5. 乾燥(最重要): 切った後、すぐに土や水に挿すのはNGです。腐敗防止のため、切り口を数時間~半日ほど、直射日光の当たらない風通しの良い日陰で乾燥させます

    これは、多肉植物の挿し木などでも行われる重要な処理です。切り口を乾燥させることで、植物自身が「カルス(癒傷組織)」と呼ばれる、人間でいう「かさぶた」のような保護組織を形成しようとします。このカルスが形成されると、切り口が物理的にふさがり、土の中の雑菌の侵入を劇的に防ぐことができるんです。このひと手間が、腐敗のリスクをぐっと減らします。

 

(※もし発根促進剤を使う場合は、この乾燥させた切り口にまぶしてから挿します)

基本となる土挿しのやり方

一番オーソドックスで、植物にとっても自然な環境に近いため、発根後の根が丈夫に育ちやすいと私は感じています。私自身も、挿し木は基本的にこの土挿しでやることが多いですね。

1. 土の準備

準備した挿し木用土(赤玉土(小粒)など)を鉢やトレーに入れます。このとき、あらかじめ霧吹きなどで土全体を軽く湿らせておくと良いでしょう。パサパサの土に挿すよりも、適度な湿気があった方が挿し穂との密着度が高まり、作業もしやすくなります。

2. 挿し穂を挿す

湿らせた土に、いきなり挿し穂をブスッと突き刺すのは避けてください。せっかく処理した切り口が傷んだり、もし発根促進剤を付けていた場合はそれが取れてしまったりします。

先に竹串や割り箸などで、挿し穂の太さより少し広めの「植え穴」をあらかじめ開けておきます。挿す深さは2~3cm程度が目安です。深すぎると土の中の通気性が悪くなり、浅すぎるとぐらついて発根の妨げになります。

植え穴に準備した挿し穂の切り口を優しく差し入れます。

3. 固定する

挿し終わったら、挿し穂がぐらつかないよう、周りの土を指で軽く押さえて固定します。この「ぐらつかない」ことが非常に重要で、挿し穂が動くと、せっかく出ようとしている繊細な新しい根が切れてしまうためです。

4. 最初の水やり

最後に、鉢底から水が流れ出るまで、優しくたっぷりと水を与えます。これにより、土と挿し穂がさらに密着し、土の中の微塵(みじん)が洗い流されます。

挿し木後の管理場所と水やり

ここからが我慢のしどころです。発根するまでの約1ヶ月~2ヶ月間は、植物にとって最もデリケートな時期。以下の環境で静かに見守ります。

  • 場所:直射日光の当たらない「明るい日陰」で管理します。具体的には、レースカーテン越しの日光が当たる室内や、屋外であれば遮光ネットの下、または建物の北側などが適しています。

    直射日光は、根がない挿し穂にとっては強すぎて、葉からの蒸散を過剰に促し、枯れる原因になります。かといって、真っ暗な場所では光合成ができず発根エネルギーを作れないので、「明るさ」は必要です。

  • 水やり:この期間の水やりが最も難しく、挿し木の成否を分けると言っても良いかもしれません。「土を完全に乾燥させない」ことと、「土が常にジメジメしている(過湿)」状態を避ける、という矛盾した管理が求められます。

    基本は、「土の表面が乾いたら与える」ですが、発根するまでは通常よりもやや湿度を保ちたいところ。土の表面が乾き始めたら、霧吹きで土の表面や挿し穂の葉に水をかける(葉水)のも非常に有効です。葉水は空中湿度を高め、挿し穂本体の乾燥を防ぐ効果があります。

    「土が常にジメジメ」は腐敗の最大の原因ですので、水を与える際も「表面が乾いたら」というメリハリは必ずつけるようにしてください。

赤いドラセナの挿し木、3つの方法と管理

日本人女性が水挿し用の透明コップ・土挿し用の鉢・茎伏せ用の浅いトレーを机に並べ、それぞれに挿し穂をセットする準備をしている。手元で挿し穂を丁寧に持ち替えるアクションが明確。方法の違いが一目でわかる配置。

観葉スタイル・イメージ

基本的な土挿しのほかにも、赤いドラセナ(コルディリネ)にはいくつかの増やし方があります。発根の様子が見える「水挿し」や、葉のない茎も無駄にしない「茎伏せ」、そして挿し木が成功した後の管理について、詳しく見ていきましょう。

発根が見える水挿しの方法

日本人男性が透明なガラスのコップに挿したドラセナの穂先を手前に持ち上げ、根が伸び始めた部分を目視で確認している。水を交換するためにコップを傾ける仕草が含まれ、管理の様子が具体的。

観葉スタイル・イメージ

「土の中だと、ちゃんと根が出てるか分からなくて不安…」「毎日土の湿り気をチェックするのは大変そう…」という方には、水挿しがおすすめです。私も手軽なので、ハーブ類やポトスなどではよくやりますし、もちろん赤いドラセナでも可能です。

▼メリットとデメリット

  • メリット:なんと言っても、発根の様子が目視できること。透明な容器を使えば、切り口から白い根がニョキニョキと伸びてくるのが日々観察でき、管理のモチベーションが維持しやすいです。また、土を使わないので清潔ですし、水やり(水換え)のタイミングも分かりやすいです。
  • デメリット:水の中で発根した根(=水根)は、土の中の環境に適応していないため、後述する「鉢上げ」の際に、土の環境に順応できず弱ってしまうリスクが土挿しよりやや高いです。また、水の管理を怠ると、一気に腐敗します。

▼手順と管理方法

やり方はとてもシンプル。「土挿し」の「挿し穂の準備とカットのコツ」まで(葉のカットや切り口の乾燥も同様です)を全く同じように行い、準備した挿し穂を、水を適量入れたコップや瓶に挿すだけです。

成功の鍵は、「水の管理」です。水道水で全く問題ありませんが、水は数日放置すると雑菌が爆発的に繁殖し、切り口がヌルヌルして腐る原因になります。特に夏場は水が腐りやすいので、水は毎日、必ず新しいものに取り替えてください。その際、容器の内側も軽く洗ってヌメリを取っておくと万全です。

早ければ2~3週間で、切り口やその付近から、白いポツポツとした「根のもと(カルス)」が現れ、やがて根が伸びてくるのが確認できるはずです。この瞬間は、何度見ても嬉しくなりますね。

水挿しのちょっとしたコツ

もしあればですが、水の中に「ミリオンA」や「ゼオライト」といった根腐れ防止剤をほんの少し(数粒)入れておくと、水質を浄化し、雑菌の繁殖を抑える効果が期待できます。水換えの頻度を少し減らせる(かもしれない)お守り代わりになりますよ。

茎も活用する茎伏せとは

日本人女性が葉のないドラセナの茎を3〜5cmにカットし、浅いトレーの上に横向きに伏せて土を軽くかぶせる作業中。茎をそっと押さえる手元の動作や、節を意識して配置する様子が明確。

観葉スタイル・イメージ

挿し木のために先端(天芽)をカットした時や、伸びすぎた株を切り戻した時、葉っぱのついていない「真ん中の茎」が残りますよね。これをそのまま捨ててしまうのは、ちょっと待ってください!

特にコルディリネ属は、根茎を持つことからも分かるように、茎(幹)の生命力が非常に強く、この葉のない茎からも新しい芽を出す力が強いんです。

この方法を「茎伏せ(くきふせ)」と言います。先端の挿し木(天挿し)と同時に行えば、一つの株から複数の新しい株を得られる可能性があり、とても効率的です。

▼手順

  1. 葉がついていない茎を、3cm~5cm程度の長さでカットします。このとき、茎をよく見ると、葉が落ちた跡が「節(ふし)」として残っているのが分かります。この「節」に新しい芽を出す「成長点(潜伏芽)」が眠っているため、カットする長さは、最低でも1つ、できれば2つ節が含まれるように調整するのが理想です。
  2. 清潔な挿し木用土(土挿しと同じ。赤玉土や専用土)をトレーや浅鉢に用意します。
  3. カットした茎を、土の上に横向きに寝かせます(伏せます)。この時、上下はあまり気にしなくて大丈夫です。植物はちゃんと分かっています。
  4. 茎の半分程度が土に埋まるように、軽く土をかぶせたり押さえたりして固定します。完全に埋めてしまうと呼吸ができず、逆に完全に露出していると乾燥しすぎてしまうため、「半分埋める」のがコツです。

▼管理方法

管理は「土挿し」と全く同じです。直射日光の当たらない明るい日陰で、用土が乾燥しすぎないよう注意深く水やりを続けます。土挿しよりもやや時間がかかるかもしれませんが、うまくいけば、茎の「節」の部分から複数の新芽がプクッと緑色の芽を吹き出してきます。幹の途中から小さな葉が展開する様子は、とても可愛らしいですよ。

挿し穂が腐る原因と対策

挿し木チャレンジで一番悲しく、そして一番多い失敗が、挿し穂(あるいは茎伏せした茎)がブヨブヨに黒く腐ってしまうこと…。私も過去に何度も経験しました。「発根」する力と「腐敗」する力の競争に、負けてしまった状態です。

主な原因は、これまでにもお話ししてきた通り、やっぱり「雑菌」「過湿」、そして「体力不足(時期外れ)」です。

腐敗の主な原因まとめ

  • ① 雑菌の侵入(準備不足) 消毒していないハサミやカッターを使った。使い古しの汚れた土や、肥料分の入った培養土を使った。→ 雑菌が切り口から侵入し、内部から腐敗。
  • ② 切り口の処理不足 カットした後、切り口を乾燥(カルス形成)させずに、すぐに濡れた土や水に挿した。→ 無防備な切り口から雑菌が侵入。
  • ③ 水のやりすぎ(過湿) 「乾燥させちゃダメだ」と心配しすぎて、土が常にジメジメと濡れている状態にした。→ 土の中の酸素が不足し、挿し穂が呼吸できず窒息。酸素を嫌う腐敗菌(嫌気性菌)が活発になり腐敗。
  • ④ 水の汚染(水挿し) 毎日の水換えを怠り、容器の中で雑菌が繁殖した。→ 切り口が雑菌の温床に。
  • ⑤ 時期外れ(体力不足) 気温が低い秋~冬の休眠期に挿し木を行った。→ 植物に発根するエネルギー(体力)がなく、腐敗菌の活動力に負けてしまった。

対策は、これら原因の逆を徹底すること。つまり、「①最適な時期」に「②清潔な道具と土」を使い、「③切り口を乾燥」させ、「④過湿にしない(でも乾燥もさせない)」という基本ルールを、一つ一つ丁寧に守ることに尽きます。

この「腐る」という現象は、挿し穂だけでなく、親株の「根腐れ」ともメカニズムは非常に似ています。水のやりすぎや排水性の悪い土によって土中の酸素が不足し、根が窒息して腐敗菌にやられてしまうんです。ドラセナ(コルディリネ)も例外ではありません。(参考:ドラセナの枯れた幹は復活できる?原因と対処法を解説します!

もし腐り始めてしまったら、残念ですがその部分は復活できません。すぐに土や水から取り出し、腐った部分(黒くブヨブヨした部分)を多めに切り落とし、まだ緑色で硬い健康な部分が残っていれば、再度切り口を清潔なカッターで切り戻し、しっかり乾燥させてから挿し木に再チャレンジしてみましょう。

発根後の鉢上げのタイミング

挿し木(土挿し・茎伏せ・水挿し)が順調に進み、発根が確認できたら、いよいよ一人前の鉢に植え替える「鉢上げ」です。これが挿し木プロジェクトの最終関門ですね。

でも、焦りは禁物です!「根が出た!」と嬉しくなってすぐに植え替えたくなりますが、根がまだ貧弱なうちに環境を変えると、そのストレスで弱ってしまい、最悪枯れてしまうこともあります。しっかりと根が張るまで、ぐっと我慢しましょう。

鉢上げのサイン(目安)

  • 土挿し・茎伏せ 一番分かりやすいサインは、挿し穂(あるいは茎)から新しい葉(新芽)が2~3枚、しっかりと生えてくることです。これは、土の中で根が張り、水分や養分を吸い上げて地上部に送る力がついた、という何よりの証拠です。(挿し木開始から1~2ヶ月後が目安) 鉢底の穴から白い根が見えてきたら、それはもう完璧なサインです。
  • 水挿し 根が目に見えるので分かりやすいですが、長さだけで判断してはいけません。根が3cm~5cm程度までしっかり伸び、できれば根から細い枝分かれ(側根)が出始めたらベストなタイミングです。白いひげ根が数本出ただけでは、まだ土の抵抗に耐える力がありません。

植え替えの手順

1. 用土と鉢の準備

今度は発根用の「無肥料」の土とは異なり、これからの成長に必要な肥料分が適度に含まれた「観葉植物用の培養土」を用意します。市販のもので全く問題ありません。鉢は、挿し穂のサイズに対して大きすぎるものは避けましょう。土が多すぎると水やりの後の乾きが遅くなり、根腐れの原因になるからです。まずは3号~4号(直径9~12cm)程度の小さな鉢が良いですね。

2. 植え替え

  • 土挿しから:新しい根は非常にデリケートで折れやすいです。挿し穂を無理に引き抜かず、鉢ごと優しく傾け、根鉢(根と土が一体化したもの)を崩さないようにそっと取り出します。そのまま新しい鉢に植え付け、隙間に新しい培養土を足していきます。
  • 水挿しから:根を折らないよう、細心の注意を払って水から引き上げます。鉢に培養土を半分ほど入れ、根を優しく広げるように配置し、上から土をかぶせていきます。

水挿しからの移行は特に注意!

挿し木で一番緊張する瞬間が、この「水挿しから土への鉢上げ」かもしれません。

水挿しで発根した根(=水根)は、常に水に浸かっている環境に適応した根です。細く、白く、土の中の粒子をかき分けて伸びる力や、乾燥から身を守る機能が弱いのです。一方、土の中で発根した根(=土根)は、土の抵抗に負けず、乾燥にも耐えられるよう、太く丈夫に育ちます。

水根をいきなり土に植えると、その環境の激変に耐えられず、乾燥して枯れてしまったり、逆に過湿で腐ってしまったりしやすいのです。

▼対策

植え替え後の数週間は、この水根が土の環境に「順応」するのを助ける必要があります。土が乾燥しすぎないよう、通常の鉢植えよりもやや頻繁に水やりを行い、湿度を保つようにします。かといって過湿は厳禁なので、土の表面が乾き始めたら与える、という基本は守りつつ、様子見の頻度を上げるイメージです。葉水(霧吹き)も非常に有効です。

そして、植え替えてから最低でも1ヶ月程度は、絶対に肥料(液体肥料も含む)を与えないでください。「元気になれ」と与えた肥料が、まだ弱っている根の水分を逆に奪い、枯死させる「肥料焼け」を引き起こします。

親株の剪定とケアのコツ

さて、挿し穂を採った後の、親株(元の株)のことも忘れてはいけませんよね。挿し木のために枝を切ることは、植物にとっては「剪定(せんてい)」と同じです。剪定された親株は、その切り口から新しい芽(脇芽)を出して再生し、より分岐してこんもりとした樹形になってくれる可能性があります。

挿し木を成功させると同時に、親株も健康に再生させてこそ、植物を増やす楽しみが倍増します。(剪定全般の考え方については、ドラセナの新芽の出し方と剪定、増やし方のコツをマスターしようも参考にしてみてください)

1. 切り口のケア(癒合剤)

剪定は植物にとって「大きな手術」のようなもの。切り口を放置すると、そこから水分が蒸発して幹が枯れ込んだり、空気中の雑菌が侵入したりするリスクがあります。

もしカットした幹が親指よりも太い場合は、雑菌の侵入を防ぎ、切り口の乾燥を保護するために「癒合剤(ゆごうざい)」を塗っておくと安心です。「トップジンMペースト」などの殺菌剤が含まれたものが市販されています。

人間でいう「絆創膏」や「消毒薬入りの軟膏」のような役割ですね。逆に、鉛筆より細いような枝であれば、植物自身の力で回復できるので、そこまで神経質にならなくても大丈夫かなと私は思っています。

2. 新芽を出す「カット位置」のコツ

これがとても重要です。剪定した親株から、狙った位置に新しい芽(脇芽)を出させるには、切る「位置」が極めて重要になります。

ドラセナやコルディリネの幹をよーく観察してみてください。葉っぱが落ちた跡が、少し膨らんだ「こぶ」や「節(せつ)」のように、横線状に残っているのが分かると思います。この「節」に、新しい芽を出すための「成長点(潜伏芽)」が眠っています

カットする際は、必ずこの成長点(節)の、1~2cm「上」でカットするのが最大のコツです。

なぜ「節の1~2cm上」で切るの?

「節のギリギリ」で切ってはいけません。なぜなら、剪定された切り口は、そこから水分が蒸発し、乾燥によって必ず少し「枯れ込み」が起きるからです。

もし節のギリギリで切ってしまうと、その枯れ込みが大切な成長点まで達してしまい、成長点ごと死んでしまうことがあります。そうなると、そこから新芽は二度と出てきません。

あえて1~2cmの「余裕(犠牲部分)」を持たせて切ることで、そのマージン部分が「枯れ込みしろ」となり、切り口が枯れ込んでも、その直下にある成長点は安全に保護されるのです。結果として、保護された成長点から「ここから芽を出せ」というスイッチが入り、元気に脇芽が吹いてきます。

3. 剪定後の親株の管理

剪定後の親株は、新芽を出すために多くのエネルギー(光合成)を必要とします。これまで通り、あるいは、これまで以上に日当たりの良い場所(レースカーテン越しなど)に置き、しっかりと光合成を促してあげましょう。

水やりは、葉の量が減った分、蒸散する水分も減るので、これまでと同じペースで与えると過湿(根腐れ)になるリスクがあります。土の乾き具合をよく確認し、「土が乾いたらたっぷり」の基本を守りつつ、少し間隔をあけるように調整するのが良いかもしれません。

赤いドラセナの挿し木、成功の鍵

最後に、赤いドラセナの挿し木を成功させるための鍵を、私なりにまとめてみます。

ここまで、本当にたくさんの細かい手順やコツをお話ししてきました。情報量が多すぎて「うわ、大変そう…」と思われたかもしれません。でも、全部を一気に完璧にやろうとしなくても大丈夫です。

一番大事なのは、やはり「時期」「清潔さ」、そして「過湿にしない(でも乾燥させすぎない)」という、植物の「環境」を整えてあげることかなと思います。

植物のエネルギーが満ち溢れている生育期(5月~8月)に、消毒した道具と清潔な土を使って、腐敗の原因となる雑菌を徹底的に排除し、発根を待つ。

挿し木は、私たちが何かをするというより、植物が持っている「生命力」を信じて「待つ」時間でもあります。発根するまでの1~2ヶ月間は、直射日光を避け、土の乾き具合を毎日(でも触りすぎず)チェックしながら、「がんばれよ~」と心の中で応援しつつ、でも構いすぎず(水やりしすぎず)、静かに見守ってあげるのが良いですね。

人間が赤ちゃんの世話を焼きたくなるように、挿し穂もつい構いたくなりますが、そこをぐっとこらえるのが一番のコツかもしれません。

成功のための4か条(再確認)

  • ① 最適な時期(5月~8月の生育期)にやる (植物の体力がMAXの時に行う)
  • ② 道具と土は「清潔」を徹底する (腐敗の原因となる雑菌を持ち込まない)
  • ③ 切り口はしっかり乾燥させて雑菌を防ぐ (「かさぶた=カルス」を作らせる)
  • ④ 発根までは「明るい日陰」で「過湿」にしない (呼吸できる環境で見守る)

これらのポイントを押さえておけば、きっと成功率は上がるはずです。この記事が、あなたの赤いドラセナを増やすチャレンジのお役に立てたら、とても嬉しいです。

※植物の状態や育成環境には個体差があります。本記事の情報はあくまで一般的な目安として参考にしていただき、最終的な判断はご自身の責任においてお願いいたします。もし深刻な問題がある場合や、この記事の内容にご不明な点がある場合は、お近くの園芸店や植物の専門家にご相談されることを強くお勧めします。

  • この記事を書いた人
パキラを持つ運営者

まさび

『観葉植物のある暮らしスタイル』管理人のまさびです。失敗から学んだ実体験と深い知識で、観葉植物の育て方(特にパキラ)を優しく解説。あなたのグリーンライフを応援します。

-ドラセナ
-, , , , ,