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こんにちは。観葉スタイル、運営者の「まさび」です。
ハート型の大きな葉が魅力のフィカス・ウンベラータ。お部屋のシンボルツリーとして可愛がっていたのに、ある日突然葉が黄色くなって落ちたり、見たことのない不気味な斑点が出てきたりすると、本当に焦りますよね。
「もしかして、このまま枯れちゃうの?」 「私の育て方が悪かったのかな…」 「昨日までは元気だったのに、なんで急に?」
そんな不安でいっぱいになってしまう気持ち、痛いほどよく分かります。私も初心者の頃、冬の朝にウンベラータの葉が半分以上落ちていて、愕然とした経験がありますから。
でも、まずは深呼吸して落ち着いてください。ウンベラータが調子を崩すのには必ず明確な「理由」がありますが、その多くは適切な処置を行えば回復可能です。
実は、私たちが「病気」だと思っている症状の8割以上は、病原菌による感染症ではなく、単なる環境の変化による「ストレスサイン(生理障害)」だったりします。つまり、環境さえ整えてあげれば、薬を使わなくても治るケースが非常に多いのです。
この記事では、私の実体験に基づき、ウンベラータが発するSOSサインを正しく読み解き、それぞれの症状に合った最適な治療法を、初心者の方にも分かりやすく徹底解説していきます。
ポイント
- 葉の変色パターンや落ち方から、ウンベラータの不調の「真の原因」を特定できるようになります
- 白い斑点やベタベタ汚れの正体である「ハダニ」や「カイガラムシ」の確実な撃退法が分かります
- 慌てて薬剤を使うべき危険な症状と、環境改善だけで治る「生理障害」の違いを理解できます
- もし重症化してしまっても諦めないで!丸坊主から再生させるための具体的な手順が身につきます
コンテンツ
ウンベラータが病気か葉の症状で判断

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「病気かもしれない」と検索してこの記事にたどり着いたあなた。その症状、実はウイルスやカビといった病原菌ではなく、ウンベラータからの「この場所、ちょっと居心地が悪いよ!」「寒すぎるよ!」という必死の訴え(生理障害)であるケースが非常に多いです。
植物は言葉を話せませんが、その代わり「葉」を使って雄弁に語りかけてきます。まずは、目の前のウンベラータの葉がどんな状態なのか、虫眼鏡を持つ探偵になったつもりでじっくり観察して、原因を突き止めましょう。
葉が黄色くなり落ちる時の対処

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ウンベラータを育てていて、最も多くの人が直面し、かつ最も心を痛めるのが、この「葉が黄色くなって次々と落ちる」という現象ではないでしょうか。
昨日まで青々としていた葉が、みるみる黄色くなり、少し触れただけでポロリと落ちてしまう…。この現象には、大きく分けて3つの主要な原因と、1つの自然現象が考えられます。それぞれ対処法が全く異なりますので、慎重に見極める必要があります。
① 日照不足(光量不足)によるリストラ
まず一番に疑うべきは「日照不足」です。ウンベラータはインテリア雑誌などで「耐陰性がある(日陰でも育つ)」と紹介されることが多いですが、これは「すぐに枯れない」というだけで、本質的にはアフリカ生まれの「お日様大好きっ子」です。
部屋の隅や、窓から離れた薄暗い場所に長期間置いていると、光合成によって作られるエネルギー量よりも、大きな葉を維持するための消費エネルギーの方が上回ってしまいます。いわゆる「赤字経営」の状態ですね。
すると植物は、個体として生き残るために、エネルギー消費の激しい「葉」を自ら切り捨てる決断をします。植物ホルモン(エチレンなど)を分泌して葉の付け根に「離層(りそう)」という仕切りを作り、水分と養分の供給をストップさせるのです。
その結果、葉は黄色くなり、役目を終えて落ちていきます。これを私は「植物なりのリストラ」と呼んでいます。
【対処法】 急に直射日光に当てるとびっくりして「葉焼け」を起こすので、1〜2週間かけて徐々に明るい窓辺へと移動させる「光順化(ひかりじゅんか)」を行ってください。最終的には、レースカーテン越しの柔らかい光が1日4時間以上当たる場所が理想です。
② 寒さ(低温障害)によるショック
次に考えられるのが「寒さ」です。彼らの故郷は熱帯アフリカ。日本の冬は彼らにとって極寒の地獄です。生育適温は20℃〜30℃ですが、10℃を下回ると生理活動が著しく低下し、休眠状態に入ろうとします。
さらに室温が5℃近くまで下がると、細胞内の水分が凍結しそうになり、細胞膜が破壊される物理的なダメージを受けます。こうなると、防衛反応として一気に葉を落として、幹と根だけで冬を越そうとします。
特に注意したいのが、冬場の窓際です。昼間はポカポカしていても、夜になると窓際は外気の影響で急激に冷え込みます(コールドドラフト現象)。「暖房を入れているから大丈夫」と思っていても、夜間に暖房を切った後の朝方、窓際の温度は氷点近くまで下がっていることがあるのです。
【対処法】 冬場は、夕方になったら窓際から部屋の中央や、少し高い位置(冷気は下に溜まるため)へ移動させてあげましょう。段ボールや発泡スチロールを鉢の下に敷くだけでも、底冷えを防ぐ効果があります。
③ 根腐れ(酸素欠乏症)
土が常に湿っているのに、葉が黄色くなり、なんとなくハリがなく垂れ下がっている…。そんな時は「根腐れ」を疑ってください。
「水のやりすぎ」が原因と言われますが、正確には「水で土の隙間が埋まり続け、根が呼吸できずに窒息死した」状態です。根が腐ると水を吸い上げられなくなるため、土は濡れているのに地上部は水不足と同じ症状(葉が垂れる)を示します。
ここで勘違いしてさらに水をあげると、トドメを刺してしまいます。
【対処法】 まずは水やりをストップし、風通しの良い場所で土を乾かします。もし土からドブのような腐敗臭がしたり、幹の根元がブヨブヨしていたりする場合は、緊急の植え替えが必要です。
根腐れと水切れの見分け方や、詳しい対処法については、以下の記事でさらに深掘りしています。
④ 生理的な新陳代謝(ターンオーバー)
もし、黄色くなっているのが「株の下の方についている古い葉」だけで、枝の先端からは元気な新芽が出ているなら、それは心配無用です。人間が髪の毛が生え変わるのと同じで、古くなった葉を落として新しい葉に更新する「新陳代謝」です。
自然の摂理ですので、黄色くなった葉は手で取ってあげてください。
葉に白い斑点があればハダニ
「最近、ウンベラータの葉の色がなんとなく悪くなった気がする…」 「よく見ると、葉の表面にホコリのような、粉のようなものが付いている」
もしそんな症状に気づいたら、葉を顔に近づけて、よーく観察してみてください。針でツンツンと突いたような、白くて細かい斑点(カスリ状の脱色痕)が無数にありませんか?もしそうなら、犯人は観葉植物の宿敵「ハダニ」である可能性が極めて高いです。
ハダニの正体と被害の特徴
ハダニは「虫」という名前がついていますが、実は昆虫ではなく「クモ」の仲間(ダニ目)です。体長はわずか0.3mm〜0.5mmほど。肉眼では赤い点や黒い点にしか見えませんが、虫眼鏡で見るとしっかりと8本の脚で動き回っているのが分かります。
彼らは葉の「裏側」に寄生し、鋭い口針を細胞に突き刺して、植物の栄養源である葉緑素ごと汁を吸い取ります。吸われた部分は色が抜けて白くなるため、被害が進むと葉全体が白っぽくかすれ、光合成ができなくなって衰弱し、最終的には落葉します。
さらに恐ろしいのが、その繁殖力です。卵から成虫になるまでわずか10日ほど。放置すると爆発的に増殖し、末期状態になると、葉や茎の間にクモの巣のような微細な糸を張り巡らせ、株全体を覆い尽くしてしまいます。こうなると、美観を損ねるだけでなく、植物にとっても致命的です。
ハダニが爆発的に増える「魔の条件」 ハダニは「高温」かつ「乾燥」した環境をこよなく愛します。 まさに、エアコンの風が当たり続ける現代のリビングルームや、雨の当たらないベランダの軒下などは、ハダニにとって天国のような環境なのです。
【対処法】水攻めで物理的に洗い流す!
ハダニを見つけたら、薬剤を買いに行く前に、まずは今すぐできる最強の対策を行いましょう。それは「水洗い」です。
ハダニは水に非常に弱く、溺れやすい性質を持っています。被害が初期〜中程度であれば、お風呂場やベランダに鉢を運び、シャワーを使って葉の裏側を中心に、株全体を豪快に丸洗いしてください。
この時、少し強めの水圧で、物理的に虫を弾き飛ばすのがポイントです(もちろん、葉が破れない程度の強さで)。
日常的な予防としては、霧吹きによる「葉水(はみず)」が効果的ですが、すでに発生してしまった場合は霧吹き程度では太刀打ちできません。まずはシャワーで個体数を激減させ、その後に薬剤を使うことで、駆除の成功率が格段に上がります。
ベタベタや黒い汚れはカイガラムシ
「フローリングの床が、なぜかベタベタする…」 「葉っぱがテカテカ光っていて、触るとシロップのように粘り気がある」 「幹の隙間に、白いワタのようなゴミが詰まっている」
これらは全て、ウンベラータの天敵、「カイガラムシ」による被害の典型的なサインです。
吸汁被害と「すす病」のコンボ
カイガラムシもハダニと同様に、植物の汁を吸って生きる吸汁性害虫です。ウンベラータによく付くのは、白い粉をまとった「コナカイガラムシ」や、茶色くて硬い殻を持つ「カタカイガラムシ」などです。
彼らの厄介な点は、吸汁による直接的なダメージだけではありません。彼らは植物から吸い取った糖分を含んだ排泄物(おしっこ)を、大量に撒き散らします。これが「甘露(かんろ)」と呼ばれるベタベタの正体です。
さらに悪いことに、この甘露を栄養源として空気中のカビ(糸状菌)が繁殖し、葉や幹が黒い煤(すす)を被ったように真っ黒になる「すす病」を併発することがあります。こうなると、見た目が汚くなるだけでなく、葉がカビに覆われて光合成ができなくなり、植物は急速に弱っていきます。
【対処法】こそぎ落とし & 浸透移行性薬剤
カイガラムシの成虫は、その名の通り「殻」や「ロウ物質」で体をガードしているため、上からスプレーするタイプの殺虫剤が弾かれてしまい、効きにくいのが特徴です。
したがって、見つけ次第「物理的に除去する」のが最も確実です。 使い古した歯ブラシ、ヘラ、濡らしたティッシュや綿棒などを使って、葉や幹を傷つけないように優しく、しかし徹底的にこそぎ落としてください。地味な作業ですが、これが一番効きます。
物理的な除去が終わったら、仕上げに薬剤を使います。カイガラムシには、葉の上からかけるスプレーよりも、根から成分を吸わせて植物全体を毒にする「オルトラン粒剤」のような浸透移行性(しんとういこうせい)の殺虫剤が非常に有効です。
これを土に撒いておけば、隠れている幼虫や、新しく孵化した幼虫が汁を吸った瞬間に駆除することができます。
うどんこ病で白い粉が出る場合
葉の表面に、まるで小麦粉やうどん粉を薄くまぶしたような、白い粉状のカビが発生することがあります。これが「うどんこ病」です。
「カビ」というと、ジメジメした梅雨時期に発生するイメージがありますが、このうどんこ病菌は少し変わっていて、湿度が低い乾燥した環境でも活発に活動します。また、冷涼で過ごしやすい春や秋(20℃〜25℃前後)に発生のピークを迎えます。
光合成をブロックする白い粉
初期の段階では、葉の一部にうっすらと白い粉がついている程度ですが、放置すると菌糸がどんどん伸びて、葉の表面全体を真っ白に覆い尽くしてしまいます。 葉が白く覆われると、植物にとって命綱である光が遮断され、光合成ができなくなります。
その結果、葉が黄色くなって枯れたり、新芽が萎縮して奇形になったりと、生育に深刻な悪影響を及ぼします。
【対処法】初期なら食品成分で対抗
うどんこ病は、見つけたらすぐに対処することが肝心です。ごく初期の段階であれば、家庭にある安全な素材で作ったスプレーでも抑制効果が期待できます。
- 重曹スプレー:水500mlに対し、重曹を小さじ1杯(約5g)溶かしたもの。
- お酢スプレー:食酢を水で約20倍〜50倍に薄めたもの。
これらを週に1回程度、患部にたっぷりと散布してください。重曹や酢の成分がカビの細胞を壊したり、pHを変えることで繁殖を抑えます。ただし、あくまで「初期の抑制」や「予防」向きですので、粉が全体に広がっている場合は、園芸用の殺菌剤(ベニカXファインスプレーなど)を使うことを強くおすすめします。
茶色い斑点は炭疽病などのカビ

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葉に、茶色や黒っぽい円形の斑点がポツポツと現れ、日が経つにつれてその範囲がじわじわと広がっていく…。 あるいは、斑点の周囲が黄色く変色(ハロー現象)していたり、斑点の内側が灰白色になって穴が開いたりする…。
このような症状が見られた場合、それは「炭疽病(たんそびょう)」や「褐斑病(かっぱんびょう)」といった、糸状菌(カビの一種)による伝染性の病気が疑われます。
高温多湿と「濡れっぱなし」が原因
うどんこ病とは対照的に、これらのカビ病は「高温多湿」を好みます。特に、梅雨の時期や夏場に、葉が密集して風通しが悪くなっている場所や、葉水をした後にいつまでも水滴が乾かずに残っているような状態で発生しやすいです。カビの胞子は水滴の中で発芽し、植物の組織内に侵入するからです。
【残酷な真実】この症状は元に戻りません
非常に残念なお知らせですが、一度ウイルスやカビによって壊死して茶色くなった葉の細胞は、どんな薬を使っても二度と緑色には戻りません。治療法は「切除(外科手術)」のみです。
【対処法】非常非情な決断と二次感染防止
斑点が出ている葉を見つけたら、ためらわずにハサミで切り取って処分してください。 「一枚しかないから切りたくない…」という気持ちは分かりますが、残しておくと、そこからカビの胞子が飛散し、隣の健康な葉や、他の植物にまで病気が感染してしまいます。
心を鬼にして、感染源を絶つことが、株全体を守ることにつながります。
病変部を取り除いた後は、再発防止のために「GFベンレート水和剤」などの殺菌剤を散布し、サーキュレーターを回して風通しを良くすることを心がけてください。
また、葉の一部が茶色く焦げたようになっているけれど、斑点というよりは「面」で焼けたようになっている場合は、病気ではなく直射日光による「葉焼け」の可能性もあります。葉焼けについては、以下の記事でメカニズムと対策を詳しく解説しています。
ウンベラータの病気から復活させる技

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原因が分かったら、次は治療です。「ボロボロになってしまったから、もうダメかも…」と諦める前に、ウンベラータの驚異的な生命力を信じて、適切なケアを行っていきましょう。ゴムの木の仲間であるウンベラータは、私たちが思っている以上にタフな植物です。
ここでは、ご家庭でも実践できる具体的な復活テクニックと、プロも実践するケアのポイントをご紹介します。
効果的な薬剤散布と害虫駆除
病気や害虫が広がってしまった場合、やはり頼りになるのは科学の力、「薬剤」です。「薬は怖いから使いたくない」という方もいらっしゃるかと思いますが、重症化した植物を救うには、早期に適切な薬剤を使って原因菌や害虫を叩くことが、結果として植物への負担を最小限に抑えることにつながります。
ここでは、ウンベラータによくあるトラブルに対応できる、代表的な薬剤を整理しました。
| 薬剤名(例) | 主な対象・効果 | まさびのメモ・使いどころ |
|---|---|---|
| ベニカXネクストスプレー (住友化学園芸) | ハダニ、アブラムシ、カイガラムシ、うどんこ病、黒星病など | 殺虫成分と殺菌成分が両方入った、最強のオールインワン。これ一本あれば大抵のトラブルに対応できます。雨にも強い成分(マンデストロビン)が配合されています。 |
| GFベンレート水和剤 (住友化学園芸) | 炭疽病、褐斑病、うどんこ病などの「カビ病」全般 | 白い粉末を水で薄めて使うタイプ。成分が植物の体内に浸透し、病気を内側から治療・予防する効果(浸透移行性)があります。葉の斑点病にはコレ。 |
| オルトラン粒剤 (住友化学園芸) | カイガラムシ、アブラムシ、アザミウマなどの「吸汁害虫」 | パラパラと土に撒くタイプ。根から成分が吸収され、植物全体が殺虫効果を持つようになります。特にカイガラムシの予防に絶大な効果を発揮します。 |
| トップジンMペースト (日本曹達) | 剪定後の切り口保護、雑菌侵入防止 | 人間で言う「オロナイン」や「絆創膏」のようなもの。剪定した後の切り口に塗ることで、枯れ込みや病気の侵入を防ぎます。 |
【オーガニック派の方へ】 小さなお子様やペットがいて化学薬剤を使いたくない場合は、前述した「重曹スプレー」や「お酢スプレー」のほか、デンプンや気門封鎖剤(オイル)由来の、物理的に虫を窒息させるタイプの薬剤(「粘着くん」など)も選択肢に入ります。
ただし、効果は化学薬剤に比べて穏やかですので、こまめな散布と観察が必須となります。
重要:薬剤使用時の注意
薬剤を使用する際は、必ず製品のラベルや説明書を隅々まで読み、適用作物、希釈倍率、使用回数、および安全使用上の注意を厳守してください。農薬は正しく使えば安全ですが、誤った使い方は植物を傷めるだけでなく、使用者の健康を損なう恐れもあります。 (出典:農林水産省『農薬コーナー』)
日照不足の解消と正しい水やり
薬剤による治療以上に重要なのが、「環境の治療」です。多くのトラブルは、ウンベラータ自身の抵抗力が落ちていることが根本原因だからです。人間で言えば、風邪薬を飲みながら徹夜を続けていては治らないのと同じこと。
まずは、彼らが自力で回復できるような快適な環境を整えてあげましょう。
特に重要なのが「光のリハビリテーション」です。
日照不足で弱っているウンベラータを、急に直射日光の当たる場所に移動させるのは大変危険です。暗い場所に慣れてしまった葉は、強い光に対する防御力が低下しているため、いきなり強い光を浴びると一発で「葉焼け」を起こし、トドメを刺されてしまいます。
【重要】光順化(ひかりじゅんか)のステップ
焦らず、以下の手順で1週間〜10日ごとに場所を移動させ、徐々に光に慣らしていってください。
- まずは、今の場所よりも少しだけ明るい場所(直射日光の当たらない明るい日陰など)へ移動。
- 次に、窓から少し離れた場所や、遮光カーテン越しの光が当たる場所へ。
- 最終的に、レースカーテン越し柔らかい光がたっぷりと当たる、窓際の特等席へ。
そして、回復期の「水やり」には細心の注意が必要です。
葉が落ちたり黄色くなったりしている時、ウンベラータの根は弱っています。つまり、普段よりも水を吸い上げる力が極端に落ちている状態です。
ここで「元気になれ!」と肥料を与えたり、土がまだ湿っているのに水を与えたりするのは、胃腸炎の人にステーキを無理やり食べさせるようなもので、逆効果です。
根が弱っている(特に根腐れ気味の)時は、「乾かし気味」に管理するのが鉄則です。土の表面が乾いてから、さらに2〜3日待ってから水を与えるくらいのペースでちょうど良いでしょう。
「土の中が乾いているか分からない」という方は、割り箸や竹串を土に挿して確認する方法がおすすめです。引き抜いた箸が湿っていればまだ水は不要、乾いていれば水やりのサインです。
水を与える時は、鉢底から流れ出るまでたっぷりと与え、土の中の古い空気を新鮮な酸素ごと入れ替えてあげるイメージで行ってください。根が回復するために一番必要なのは、水そのものよりも「酸素」なのです。
重症なら丸坊主剪定で再生させる

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「発見が遅れて、葉がほとんど落ちてしまった…」 「病気の斑点だらけの葉ばかりで、見る影もなくボロボロになってしまった…」
そんな絶望的な状況でも、まだ諦めないでください。ウンベラータの幹や枝がまだ硬く、シワシワになっていなければ、起死回生の最終手段「丸坊主(強剪定)」という外科手術が残されています。
ゴムの木の驚異的な生命力を信じる
「丸坊主」とは、その名の通り、今ある葉をすべて切り落とし、枝だけの状態にしてリセットする再生手法です。
「そんなことをして枯れないの?」と不安になるかもしれませんが、ウンベラータを含むフィカス属(ゴムの木)は、植物界でもトップクラスの「萌芽力(ほうがちから=芽を出す力)」を持っています。
エネルギーを消費するだけの傷んだ葉をすべてリストラし、根から吸い上げたエネルギーを新しい芽を作ることに全集中させることで、ピカピカの新しい葉を展開させることができるのです。
私も初めてこの手術を行った時は手が震えましたが、1ヶ月後に小さな赤い新芽がプチッと顔を出した時の感動は忘れられません。
【絶対条件】手術は「成長期」に行うこと
ただし、この手術には絶対に守らなければならない条件があります。それは「時期」です。
丸坊主剪定は、ウンベラータの成長ホルモンが活発になる5月〜6月(遅くとも7月上旬まで)に行ってください。気温が20℃以上あり、これからどんどん暑くなる時期であれば、回復も早いです。
逆に、気温が下がる秋〜冬にこれを行うと、新芽を出すエネルギーが足りず、そのまま棒のように枯れてしまうリスクが非常に高いです。冬場に葉が落ちてしまっても、剪定は春が来るまでぐっと我慢しましょう。
剪定の手順とアフターケア
手順はシンプルです。枝の分岐点や、節(ふし=葉が生えていた痕跡の線)の少し上を、清潔なハサミでカットしていくだけです。この時、切り口から白い樹液(ラテックス)が出てきます。これに触れるとかぶれることがあるので、手袋をして作業し、床に新聞紙を敷いて養生してください。
そして、葉がなくなった後の管理が最も重要です。
剪定後の水やり注意報
葉がなくなると、植物は蒸散(葉から水分を出すこと)を行わなくなります。つまり、吸水量が激減します。
これまでと同じペースで水やりをすると、あっという間に土が過湿になり、根腐れを起こして失敗します。「土が完全に乾いてから」水を与えるようにし、その代わり、幹や枝に毎日霧吹きをして湿度を保ってあげてください。
なお、具体的な剪定の位置や、失敗しないための詳しい手順、切り口の処理については、以下の記事で写真付きで徹底解説しています。手術を決断する前に、ぜひ一度目を通してみてください。
ウンベラータの剪定はどこを切る?失敗しない位置と時期を徹底解説
葉水で乾燥を防ぎ健康を保つ

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ここまで、病気やトラブルへの対処法をお話ししてきましたが、何よりも大切なのは「病気にさせないこと」ですよね。 毎日のケアとして、私が最も強くおすすめしたい、そして最も効果を実感している予防法が「葉水(はみず)」です。
たかが水、されど水。葉水の3つの効果
葉水とは、霧吹きで葉に水をかけてあげることですが、これには単にホコリを落とす以上の重要な意味があります。
- ハダニの鉄壁ガード: 前述の通り、ハダニは乾燥を好み、水を嫌います。毎日葉の裏までしっかりと濡らしてあげることで、ハダニが住みにくい環境を作り、繁殖を未然に防ぐことができます。これが最強の予防策です。
- 湿度の維持(保湿ケア): ウンベラータの原産地は熱帯です。日本の室内、特にエアコンの効いた部屋は彼らにとって砂漠のように乾燥しています。葉水で周囲の湿度を上げてあげることで、葉が生き生きとした艶を保てるようになります。
- 代謝のスイッチON: 葉に適度な刺激と水分を与えることで、葉の気孔が開き、光合成や蒸散といった生理活動が活発になります。人間で言うところの、朝の洗顔のようなスイッチの役割を果たします。
効果的な葉水のやり方と冬の注意点
葉水は、できれば1日1回、朝に行うのがベストです。葉の表面だけでなく、葉の裏側にもたっぷりと吹きかけてください。滴るくらい濡らしても大丈夫です。
ただし、冬場だけは注意が必要です。寒い部屋で冷たい水を吹きかけると、水滴の温度で葉が冷えてしまい、逆にダメージを与えてしまうことがあります。 冬は、気温が上がってきた昼間に行うか、霧吹きの水にお湯を混ぜて「ぬるま湯(30℃くらい)」にしてからスプレーしてあげてください。
これだけで、ウンベラータも「温かくて気持ちいい!」と喜んでくれるはずです。
ウンベラータを病気から守る総括
ここまで読んでいただき、ありがとうございます。 ウンベラータの「病気」と呼ばれるトラブルの多くは、実は私たち人間がコントロールできる環境要因(光・水・温度・風)のミスマッチから始まります。
そこにつけ込んで、ハダニやカビなどの二次的なトラブルが発生し、目に見える症状として現れるのです。
最後に、元気なウンベラータを取り戻し、これからも長く付き合っていくためのポイントをまとめます。
言葉は話せませんが、ウンベラータは葉の状態を変えることで、私たちに必死にメッセージを送ってくれています。「喉が渇いたよ」「ちょっと寒いよ」「背中(葉裏)がかゆいよ(虫がいるよ)」…。
その小さなサインをキャッチして、早めに手を打ってあげれば、きっとまたあの大きなハート型の葉を広げて、あなたの暮らしを彩ってくれるはずです。この記事が、あなたとウンベラータの健やかな毎日の助けになれば、これほど嬉しいことはありません。