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こんにちは。観葉スタイル、運営者の「まさび」です。
スタイリッシュな姿で人気のドラセナ・コンシンネですが、育てていると幹がひょろひょろと徒長してしまい、どう仕立て直そうか悩むこと、ありませんか?あるいは、お気に入りの株を増やしたいな、と思うこともあるかもしれません。
私自身、リビングに置いているコンシンネが天井に届きそうになってしまい、「うーん、このままだと見栄えも悪いし、どうしたものか…」と悩んだ経験があります。あの独特な曲がり幹は魅力ですが、伸びすぎるとバランスが悪くなってしまいますよね。
そんな時、ドラセナ・コンシンネは「挿し木」で比較的かんたんにリセットしたり、増やしたりすることができるんです。剪定で切り落とした枝を使って、新しい株を育てられるなんて、園芸の醍醐味の一つかなと思います。
ただ、いざ自分でやるとなると、挿し木の時期はいつがベストなのか、やり方は土と水挿しのどっちがいいのか、切った後の葉の処理はどうするのか、といった細かな疑問が次々と湧いてきますよね。私も最初は、「切った枝がそのまま腐るんじゃないか」「いつまで経っても根が出ないまま枯れたらどうしよう…」と、かなり不安でした。
この記事では、そんなドラセナ・コンシンネの挿し木について、私自身の成功体験や、ちょっとした失敗談も踏まえながら、失敗しないための大切なポイントや具体的な手順を、できるだけ詳しく解説していきますね。この記事を読めば、きっと自信を持って挿し木にチャレンジできるはずです。
ポイント
- 挿し木に最適な「時期」と環境の科学的な理由
- 初心者でも迷わない、4つの挿し木の方法(土挿し・水挿し・管挿し・茎伏せ)の詳細な手順
- 挿し木後の発根を待つ間の、最も重要な管理方法
- 「腐る」「根が出ない」といった典型的な失敗の原因とその具体的な対策
コンテンツ
ドラセナ・コンシンネの挿し木の基本と時期

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ドラセナ・コンシンネの挿し木を成功させるには、まず「なぜそうするのか」という基本を理解することが大切です。勢いや自己流でやってしまうと、失敗の確率がぐっと上がってしまいますからね。
特に重要なのが、「いつやるか」という時期の選定です。大げさではなく、これで成功率の8割が決まると言っても過言ではないかなと、私は本気で思っています。植物には、人間の都合とは関係なく、活動するリズムがあります。そのリズムに私たちが合わせることが、成功への一番の近道なんですね。
ここでは、挿し木に最適なタイミングと、挿し木に使う「挿し穂(さしほ)」をいかに元気に準備するか、その具体的な手順について、詳しく見ていきましょう。
挿し木に最適な時期はいつ?

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結論から言うと、ドラセナ・コンシンネの挿し木は、植物の生命力が最も高まる「成長期」、具体的には5月〜9月の暖かい時期がベストシーズンです。
なぜこの時期が良いのか。理由は大きく二つ、「気温」と「湿度」にあります。
理由1:気温(発根エネルギー)
ドラセナ・コンシンネは、原産地がマダガスカルなどの暖かい地域であることからも分かる通り、寒さが苦手な植物です。彼らが最も活発に成長する生育適温は20℃〜25℃くらいとされています。
この「活発に成長する」というのがポイントで、植物は気温が高いと細胞分裂を盛んに行います。挿し木というのは、親株から切り離された枝が、自分の力で新しい根(不定根)を出す作業ですよね。この「根を出す」という行為は、植物にとって非常にエネルギー(体力)を使う大仕事なんです。
生育適温が安定して続く5月〜9月は、コンシンネが最もエネルギーに満ち溢れている時期。この時期に挿し木を行えば、「発根が早い」「根付きが良い」という、私たちにとって最大のメリットが得られるわけです。
逆に、気温が15℃を下回ってくると成長が鈍くなり、10℃以下ではほぼ活動を停止(休眠)してしまいます。そんな体力を消耗している時期に「根を出せ」と言っても、それはちょっと酷な話ですよね。
理由2:湿度(水分の蒸散抑制)
そして、気温と同じくらい、いや、挿し木直後においては気温以上に大事かもしれないのが「湿度」です。
考えてみてください。挿し木にした枝(挿し穂)は、まだ根がありません。つまり、土や水から水分を吸い上げる「口」を持っていない状態です。それなのに、葉っぱからは水分がどんどん蒸発(蒸散)していきます。これは、私たちが汗をかくのと同じような生理現象ですね。
「入る(吸う)量」がゼロなのに、「出る(蒸散する)量」だけが一方的に続いたら、どうなるでしょう?
あっという間に挿し穂内部の水分が失われ、カラカラのミイラ状態になって枯れてしまいます。
ここで助け舟となるのが、「空中湿度」です。周りの空気の湿度が高いと、葉からの水分の蒸発が自然と抑えられます(空気中に水分が飽和していると、葉から水分が出ていきにくくなるイメージです)。
空中湿度が高い環境は、挿し穂が自身の水分を失うのを防ぎ、貴重な体力を「発根」という一点に集中させるのを強力にサポートしてくれる、まさに「天然の保育器」のようなものなんです。
最強のシーズンは「梅雨」
この「高い気温(20℃以上)」と「高い空中湿度」の二つの条件を、日本で完璧に満たしてくれるのが、ご存知「梅雨(5月下旬~6月頃)」です。
ジメジメして人間にとっては不快な季節ですが、ドラセナ・コンシンネの挿し木にとっては、これ以上ない「ゴールデンタイム」なんですね。
もちろん、7月〜8月の真夏でも可能ですが、今度は気温が30℃を超えてくると、暑すぎて挿し穂が弱ってしまうリスクも出てきます。また、9月も成長期ではありますが、作業が遅れると、十分な根が張る前に気温が下がり始める秋を迎えてしまい、冬越しのリスクが上がってしまいます。
そう考えると、梅雨明けまでに作業を済ませて、夏の間(一番の成長期)にしっかり根を張らせる、というのが最も安全で確実なスケジュールかなと、私は思います。
多肉植物の常識はNG?「切り口は乾かさない」
ここで一つ、園芸をかじったことがある人が陥りやすい、重大な「罠」についてお話しします。
多肉植物やサボテン、一部の観葉植物(ゴムの木など)では、挿し木の際に「切り口を数日間乾かしてカルス(かさぶたのような保護膜)を形成させる」という手法が一般的です。これは、切り口から腐敗菌が入るのを防ぐための知恵ですね。
しかし、この常識をドラセナ・コンシンネに適用してはいけません。
先ほど「湿度」の重要性をお話しした通り、ドラセナ・コンシンネの挿し木は「乾燥させないこと」が成功の鍵です。切り口を意図的に乾燥させてしまうと、挿し穂全体の水分がどんどん失われ、発根する体力がなくなり、そのまま枯れてしまう失敗に直結します。
コンシンネは、多肉植物のように体内に大量の水分を溜め込んでいるタイプではありません。切ったらすぐに、後述する「水揚げ(みずあげ)」のステップに移り、水分を補給してあげることが非常に重要です。
徒長した幹の剪定と挿し穂の準備

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最適な時期(5月〜6月)を選んだら、いよいよ作業開始です。まずは挿し木に使う「挿し穂」の準備ですが、この準備段階の丁寧さが、後の成功率に大きく響いてきます。必要な道具と、元気な挿し穂の作り方をしっかり確認しましょう。
準備する道具
私が挿し木をするときに「これだけは揃えておきたい」と思う道具一式です。どれもホームセンターや園芸店で手に入りますよ。
- 清潔なハサミやカッター:これが一番重要です。切れ味の悪いハサミを使うと、茎の細胞(特に水分を運ぶ道管)を潰してしまい、吸水効率が落ちて発根を妨げます。
- 剪定バサミ:太い幹を切る用。
- カッターナイフ:挿し穂の切り口を整える用。ハサミよりカッターの方が、繊維を潰さずスパッと切れるので、挿し穂の切り口(土に挿す側)を整えるのはカッターがおすすめです。刃は新しいものを使いましょう。
- ※いずれも使用前にはアルコール消毒(キッチンハイターを薄めたものでも可)や、ライターの火でサッと炙るなどして、必ず殺菌してください。雑菌が入るとそこから腐ります。
- 水はけの良い土:挿し穂はまだ根がないので、肥料分は必要ありません。それよりも「清潔」で「水はけ・通気性が良い」ことが絶対条件です。
- 市販の「挿し木用の土」:これが一番簡単で確実です。鹿沼土やパーライト、バーミキュライトなどが主体で、清潔で水はけ抜群です。
- 自分で配合する場合:赤玉土(小粒)7:鹿沼土(小粒)3 くらいが基本ですが、私はパーライトを多め(全体の2割くらい)に混ぜて、さらに通気性を上げるのが好きです。
- ※注意:観葉植物用の土は、最初から肥料(元肥)が入っているものが多く、これが挿し穂には強すぎて腐る原因になることがあります。使う場合は、元肥が入っていないタイプを選ぶか、赤玉土などで薄めて使いましょう。一度使った古い土の再利用は、雑菌の温床なので絶対にNGです。
- 鉢(ポット):挿し穂を挿すためのものです。いきなり大きな鉢ではなく、3号(直径9cm)くらいの小さなビニールポットや、駄温鉢で十分です。鉢底穴がしっかり開いているものを選びます。
- 発根促進剤:必須ではありませんが、これがあると成功率が体感で2〜3倍くらい上がる気がします。お守り代わりにぜひ使ってみてください。
- 液体タイプ(活力剤):有名なのは「メネデール」ですね。鉄イオンが主成分で、植物の光合成を助け、発根を促す「活力」を与えます。水揚げの時に水に薄めて使います。
- 粉末タイプ(発根ホルモン剤):有名なのは「ルートン」です。こちらは植物ホルモン(オーキシンの一種)が主成分で、細胞分裂に直接働きかけ、「根を出せ!」と命令する役割を果たします。(出典:農林水産省 農薬登録情報「ルートン」)
- 癒合剤(ゆごうざい):これは挿し穂ではなく、剪定された「親株」の切り口を保護するためのものです。「トップジンMペースト」などが有名ですね。切り口からの雑菌の侵入や、水分の蒸発を防ぐ「絆創膏」の役割を果たします。
- その他:作業用の手袋、土を混ぜるトレイ、じょうろ、植え替えシートや新聞紙など。
挿し穂の作り方
道具が揃ったら、いよいよ親株から挿し穂を切り出します。ここでの作業が、挿し穂の「体力」を決めますよ。
簡単な流れ
- カットする(剪定)
まずは親株のどこを切るか決めます。徒長してひょろひょろと伸びすぎた部分や、樹形を整えたい場所でカットします。親株は、切り口の少し下にある「節(葉が出ていた跡の横線)」のあたりから新しい芽を出すことが多いので、剪定後に親株がどんな樹形になるかをイメージしながら切る場所を決めると良いでしょう。
(ひょろひろになったドラセナをどう剪定して仕立て直すかについては、ドラセナがひょろひょろになる?原因と仕立て直し術の記事で詳しく解説しているので、そちらも参考にしてみてください)
挿し穂として使うのは、切った枝の先端(葉がついている部分)がメインです。長さは10cm〜15cm程度が扱いやすいですね。
- 切り口を整える(斜めカット)
土に挿す側(下側)の切り口を、清潔なカッターで「斜めにカット」し直します。なぜ斜めにするかというと、理由は2つ。①切り口の断面積が広くなり、吸水効率が上がること。②切り口が鉢底にベッタリと付くのを防ぎ、通気性を確保すること、です。スパッと一太刀で切るのが理想です。
- 葉を整理する(蒸散の抑制)
これが非常に重要です。挿し穂の水分蒸散を極限まで抑えるために、葉を整理します。
まず、挿し穂についている葉のうち、先端の元気な葉を3〜4枚だけ残し、それ以外の古い葉や下葉は、付け根からすべて取り除きます。
さらに、その残した3〜4枚の葉も、ハサミで「半分にカット」します。
「え、葉っぱを切っちゃうの?」と不安になるかもしれませんが、これが大事なんです。葉を少し残すのは、光合成をさせて発根のためのエネルギーを作ってもらうため。でも、葉が多すぎると、そこから蒸散する水分の方が多くなって、水分収支が赤字になってしまいます。この「光合成(エネルギー生成)」と「蒸散(水分損失)」のギリギリのバランスを取るための、先人の知恵なんですね。
- 水揚げ(みずあげ)
カットと葉の整理が終わったら、一刻も早く水に浸けます。コップやバケツに水を張り、切り口を水に浸けます。時間は最低でも2時間、できれば半日(6〜12時間)ほど、しっかりと水分を吸わせます。この時、水に液体タイプの発根促進剤(メネデールなど)を規定の倍率で溶かしておくと、挿し穂全体に活力がみなぎり、発根しやすい体質になるので、ぜひ試してみてください。
発根促進剤のW使い(おすすめテクニック)
私がいつもやっている、成功率を格段に上げるテクニックを紹介します。それは、役割の違う2種類の発根促進剤を二段構えで使うことです。
- 第1段階(内側から):水揚げの際、水に液体タイプの「メネデール」を溶かし、挿し穂全体に活力を与え、発根しやすい体質に「仕込み」ます。
- 第2段階(外側から):水揚げが終わり、土に挿す直前に、切り口の水分をキッチンペーパーなどで軽く拭き取り、そこに粉末タイプの「ルートン」を薄くまぶします。
メネデールが「頑張れ!」と応援する活力剤なら、ルートンは「根を出せ!」と直接命令するホルモン剤です。このW使いで、挿し穂を内側と外側の両方から強力にサポートするんです。ルートンには殺菌成分が含まれているものもあり、切り口の腐敗防止にも役立ちますよ。
挿し木の方法①:土挿し(挿し穂)
さて、万全の準備が整った挿し穂を使って、いよいよ土に挿していきます。この「土挿し」が、最もスタンダードで、発根後の安定感も含めると、私としては一番確実でおすすめかなと思う方法です。
手順
手順自体はとてもシンプルですが、一つ一つ丁寧にいきましょう。
簡単な流れ
- 鉢に土を入れる
準備した挿し木用の土を、小さな鉢やポットに入れます。この時、鉢底に鉢底ネットを敷き、軽石(鉢底石)を少し入れておくと、さらに水はけが良くなりますね。土は鉢のフチいっぱいまで入れず、水やりのスペース(ウォータースペース)を2〜3cmほど残しておきます。
- 穴を開ける
土を入れたら、鉢の中心に、指や細い棒(割り箸など)で、挿し穂を挿すための「植え穴」をあらかじめ開けておきます。深さは挿し穂が倒れない程度、5cmくらいが目安です。
なぜこんなことをするかというと、乾いた土に直接挿し穂を突き刺すと、せっかく切り口に塗った粉末の発根促進剤(ルートンなど)が、土との摩擦で全部取れてしまうからです。また、デリケートな切り口の細胞を傷つけないためでもあります。
- 挿し穂を挿す
水揚げが終わり、切り口にルートンをまぶした挿し穂を、先ほど開けた植え穴に優しく挿します。挿す深さは、茎の長さの1/3〜1/2程度が目安です。
- 土で固定する
挿し穂が倒れないよう、周りの土を指で「優しく」手で押さえて固定します。この時、ギュウギュウに強く押さえすぎないでください。土が締まりすぎると、水はけや通気性が悪くなり、かえって根の張りを妨げてしまいます。挿し穂がグラグラしない程度で大丈夫です。
- 水やりをする
最後に、鉢底から水が勢いよく流れ出るまで、「たっぷり」と水やりをします。この最初の水やりは、挿し穂に水分を与えるだけでなく、土の微塵(細かい粉)を洗い流し、土の粒子と挿し穂をしっかりと密着させるための、非常に重要な作業です。ジョウロのハス口(シャワー状にする部分)を使って、優しく注ぎましょう。
これで土挿しは完了です。この方法の最大のメリットは、発根した後に「鉢上げ(植え替え)」をする必要がなく、そのまま育てていける点ですね。根が最初から土の中の環境(土耕根)に適応して育つため、その後の成長が非常にスムーズです。
挿し木の方法②:水挿し
「土を準備するのがちょっと面倒…」「発根する様子を毎日眺めたい!」という方には、「水挿し」がおすすめです。名前の通り、土の代わりに水を入れた容器に挿し穂を挿して発根させる、最も手軽な方法です。
やり方は本当に簡単で、準備した挿し穂(葉の整理、水揚げまで完了したもの)を、清潔なコップや花瓶、ジャムの空き瓶などに水と一緒に入れておくだけです。
ただし、この手軽さゆえの注意点もいくつかあります。
水挿しの管理ポイント
- 水の交換:これが一番大切です。水は毎日、最低でも2日に1回は必ず交換してください。水を替えないと、水中の酸素が減少し、バクテリアが繁殖して水が腐ります。水が濁ったり、挿し穂の切り口がヌルヌルしてきたら、それは腐敗のサインです。
- 水の量:挿し穂の切り口が数cm浸かる程度で十分です。あまり深いと、茎全体が呼吸できなくなってしまいます。
- 置き場所:土挿しと同様、直射日光は厳禁です。水温が上がりすぎて「お湯」になってしまい、挿し穂が煮えてしまいます。また、強い光が当たると、容器の中に藻(アオミドロ)が発生しやすくなり、水質悪化の原因にもなります。明るい日陰に置きましょう。
- 発根促進剤:水にメネデール(活力剤)を数滴垂らしておくのは有効ですが、ルートン(粉末ホルモン剤)は水に溶けないので、水挿しには使いません。
うまくいけば、数週間〜1ヶ月ほどで切り口の周りから白いポツポツとした「根の赤ちゃん(カルス)」が見え始め、そこから白い根が伸びてくる様子が観察できて、とても楽しいですよ。
水挿しの「罠」:鉢上げが非常に難しい
手軽で人気の水挿しですが、実は決定的なデメリット、というか「最難関のトラップ」がこの後に待ち構えています。
それは、「発根した後の土への植え替え(鉢上げ)が、めちゃくちゃ難しい」という点です。
「え?根が出たんだから、あとは土に植えるだけじゃないの?」と思いますよね。私もそう思っていました。しかし、水の中で育った「水耕根」と、土の中で育つ「土耕根」は、見た目も性質も全くの別物なんです。
- 水耕根(水挿しの根):常に水に浸かっているため、酸素の少ない環境に適応しています。見た目は白っぽく、ヒョロヒョロと長く、非常に繊細で、乾燥や物理的な衝撃に極端に弱いです。
- 土耕根(土挿しの根):土の粒子を押しのけ、酸素や水分を求めて自ら伸びていく力強さがあります。見た目は茶色っぽく、太く、短く、細かい根毛(水分を吸収する毛)が発達しています。
この、水の世界で「か弱く」育った水耕根を、いきなり乾燥や抵抗の大きい土の世界に植え替えると、どうなるでしょうか?
環境の激変に耐えられず、せっかく出た根が機能不全を起こし、枯れてしまったり、そのまま腐ってしまったりするケースが非常に多いんです。
水挿しを選ぶ場合は、「発根=成功」ではなく、その後の「土への順化(鉢上げ)」こそが最大の難関であり、そこをクリアして初めて「成功」だということを、強く意識しておく必要があります。(具体的な順化の方法は、最後の「総括」の章で詳しく解説しますね)
管挿しと茎伏せのやり方
徒長した幹を剪定すると、葉がついている先端部分(土挿しや水挿しに使う)以外に、葉のない「中間の茎」がたくさん余ることがありますよね。「これはもう捨てるしかないのかな…」と思うかもしれませんが、ちょっと待ってください!
ドラセナ・コンシンネは非常に生命力が強いので、この「葉のない茎だけ」の部分からも、新しい株を作ることができるんです。それが「管挿し(くださし)」と「茎伏せ(くきふせ)」という方法です。
管挿し(くださし)
「管挿し」は、葉のない中間の茎を適当な長さ(10cm程度が扱いやすい)にカットし、土挿しと同じように「縦に」挿す方法です。一つの長い茎から、複数の挿し穂を作れるのが魅力ですね。
ただし、この方法には絶対に間違えてはいけない、たった一つの、しかし致命的なルールがあります。
それは、「茎の上下を間違えない」ことです。
植物には「極性(きょくせい)」というものがあり、元々「上だった側」からは芽を出そうとし、「下だった側」からは根を出そうとする性質があります。これは、重力や光に対する反応として、遺伝子に組み込まれているんですね。
もし、この上下を逆さまに挿してしまうと、植物は大混乱。「上(芽を出す側)」を土に挿しても、そこから根は絶対に出てきませんし、「下(根を出す側)」を空に向けても、そこから芽が出ることは(ほぼ)ありません。いつまで待っても何も起こらず、やがて挿し穂は力尽きて腐るか枯れるかしてしまいます。
対策:
これを防ぐため、親株から茎を切り取った時点、あるいは10cmの長さにカットした時点で、すぐに「下側になる方」の切り口を「斜めカット」にして目印をつけておくことを強く推奨します。(上側は「水平カット」のままにしておけば、一目瞭然ですね)
あとは、土挿し(方法①)と全く同じです。斜めカットにした下側の切り口に発根促進剤(ルートン)をつけ、あらかじめ穴を開けた清潔な土に、茎の1/3〜1/2ほどの深さまで挿し、水切れしないように管理します。
茎伏せ(くきふせ)
「うっかりして、カットした茎の上下がどれだか分からなくなっちゃった!」
…そんな時でも、まだ諦める必要はありません。その茎をリカバリーさせる方法、それが「茎伏せ」です。
「茎伏せ」は、その名の通り、茎を縦に挿すのではなく、土の上に「横に寝かせた状態(伏せた状態)」で発根・発芽を促す方法です。
手順:
- 葉のない茎を10cm程度の長さにカットします。(この方法の場合、切り口は斜めでも水平でも、どちらでも構いません)
- 挿し木用の土を浅めのトレーや鉢に入れます。
- 土の上に、カットした茎を「横向き」に置きます。
- 茎の半分から2/3ほどが土に埋まるように、上からパラパラと土をかぶせ、軽く押さえます。(茎全体を完全に埋めてしまわないのがコツです。呼吸と光を感じさせるためと言われています)
- あとは土挿しと同様、水切れしないように管理します。
この「茎伏せ」には、非常に大きな利点があります。それは、「茎の上下を一切気にする必要がない」ことです。横に寝かせているので、植物自身が「ここが下だ」と判断した部分(土に接している面)から発根し、「ここが上だ」と判断した部分(主に「節」の部分)から発芽してきます。
つまり、「管挿し」に挑戦しようとして上下が分からなくなった茎も、「茎伏せ」に切り替えれば、無駄なく活用できるんですね。この2つの方法は、剪定で出た茎を無駄なく活用するための、素晴らしいテクニックだと思います。
デメリットとしては、管挿しよりも場所を取ることと、発芽までに時間がかかる場合があることですが、上下を間違える致命的なリスクがない分、管挿しよりも気軽かもしれませんね。
| 挿し木の方法 | 難易度 | メリット | デメリット |
|---|---|---|---|
| ① 土挿し(挿し穂) | ★☆☆(易しい) | ・最もスタンダードで確実。 ・発根後の鉢上げが不要で安定的。 ・最初から土耕根が育つ。 | ・発根の様子が目に見えない。 ・土や鉢を準備する必要がある。 |
| ② 水挿し | ★★★(難しい) ※鉢上げが最難関 | ・初期作業が最も手軽。 ・発根の様子を観察できる。 ・土が不要ですぐ始められる。 | ・鉢上げ(土への順化)が非常に難しい。 ・毎日の水替えが必須(腐りやすい)。 ・水耕根が育つため、土への適応に時間がかかる。 |
| ③ 管挿し(くださし) | ★★☆(普通) ※上下を間違えると失敗 | ・葉のない中間の幹を再利用できる。 ・一つの幹から複数作れる。 | ・茎の上下を間違えると100%失敗する。 ・発根の様子が目に見えない。 |
| ④ 茎伏せ(くきふせ) | ★☆☆(易しい) | ・茎の上下を気にする必要がない。 ・管挿しのリカバリーにもなる。 ・節々から複数の芽が出る可能性がある。 | ・発芽に時間がかかる場合がある。 ・横に寝かせるため場所を取る。 |
どの方法を選ぶべきか?(私のおすすめ)
- 初心者・確実に成功させたい方:迷わず「① 土挿し(挿し穂)」を選んでください。発根促進剤を使い、準備を丁寧に行えば、高確率で成功します。
- 発根の過程を観察したい方:「② 水挿し」も楽しいですが、その後の「鉢上げが最難関」であることだけは覚悟してください。
- 徒長した幹が大量に余っている方:「③ 管挿し」または「④ 茎伏せ」に挑戦する価値があります。上下を間違える自信がない(私です)という方は、「④ 茎伏せ」が安全で気楽ですよ。
ドラセナ・コンシンネの挿し木の管理と失敗例

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さて、無事に挿し木作業が終わって、一息つきたいところですよね。ですが、本当の勝負はここからです。
挿し木は、土や水に挿して「作業完了」ではなく、そこが「管理のスタート」です。発根するまでの、デリケートな赤ちゃん苗を育てるようなもの。この発根するまでの約1~2ヶ月間の「管理」が、最後の成否を分けます。
挿した後のデリケートな時期に、具体的に何をすればいいのか。そして、初心者が陥りがちな「腐る」「根が出ない」といった典型的な失敗の原因と、その対策について、しっかり確認していきましょう。
挿し木後の置き場所と管理方法

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挿し木をした鉢を、どこに置き、どう世話をするか。これが発根率に直結します。
置き場所:「半日陰」で静かに見守る
挿し木後の置き場所は、直射日光が絶対に当たらない「明るい日陰」や「半日陰」が鉄則です。
「根がない挿し穂にとって、直射日光は致命傷になる」と、時期のところでもお話ししましたね。葉からの蒸散が激しくなりすぎて、あっという間に水分不足(乾燥)を引き起こします。また、強い日差しは鉢内の温度を必要以上に上げすぎ、挿し穂を弱らせたり、雑菌の繁殖を促したりする原因にもなります。
理想的な場所の具体例:
- 室内:レースカーテン越しの柔らかい光が入る窓辺(ただし、西日が強く当たる場所は避ける)。北向きの窓辺も良いですね。
- 屋外:建物の北側や、他の大きな植物の陰になるような場所。風通しの良い軒下などもベストです。
もう一つ大事なのが「風通し」です。空気がよどんでいると、湿度が上がりすぎて腐敗菌(カビなど)が繁殖しやすくなります。かといって、エアコンや扇風機の風が直接当たる場所は、乾燥しすぎるのでNGです。あくまでも、「そよそよと空気が流れる」くらいの、穏やかな風通しを確保してあげてください。
水やり:「発根までは水切れ厳禁」
挿し木後の管理で、おそらく最も神経を使うのが水やりです。ここでの合言葉は、「発根が確認できるまでは、絶対に水切れさせない」です。
根がない挿し穂は、土の中の水分だけが頼りです。一度でも土をカラカラに乾燥させてしまうと、せっかく出かかった(あるいは出ようと準備していた)繊細な根の組織が、回復不能なダメージを受けて枯れてしまいます。
水やりの頻度と見極め方:
- 頻度:決まった頻度(「3日に1回」など)はありません。土の表面の状態を見て判断します。
- 見極め方:「土の表面が乾き始めたらすぐに」が水やりのタイミングです。土の色が白っぽくなったり、指で軽く触れてみて湿り気を感じなくなったら、それがサインです。まだ土が湿っているうちに次の水やりをすると「過湿(腐敗の原因)」になるので、この「乾き始め」のタイミングを見極めるのが重要です。
- 方法:水やりをする時は、鉢底から水が流れ出るまで、ジョウロで優しくたっぷりと与えます。
湿度管理の応用テクニック
水切れを防ぎ、挿し穂の周りの空中湿度を高めるために、いくつかテクニックがあります。
- 葉水(はみず):霧吹きで、挿し穂の葉や茎に1日に1〜2回、シュッと水をかけてあげる方法です。葉からの水分蒸発を一時的に抑え、湿度を高める効果があります。
- 水苔(ミズゴケ):湿らせた水苔を、挿し木の株元(土の表面)にマルチング(覆う)方法です。土の急激な乾燥を防ぎ、株元付近の湿度を高く保つのに有効です。
- 簡易温室(ビニール袋):鉢ごと透明なビニール袋でふんわりと覆い、簡易的な温室状態にする方法です。湿度は劇的に高まりますが、空気がこもって蒸れすぎ、逆に腐敗を招くリスクもあります。やる場合は、1日に1〜2回、袋を外して換気する、袋に数カ所穴を開けておく、などの工夫が必要です。
成功のサインは「新芽」
「ちゃんと発根してるかな…」と、不安になるのがこの時期ですよね。土挿しの場合、発根の様子が目に見えないので、なおさらです。
挿し木が成功したかどうかを判断する、最も分かりやすいサイン。それは、「新芽が出てきた時」です。
植物は、根からの水分・養分吸収が安定して初めて、地上部(葉や茎)を成長させる余裕が生まれます。つまり、「新芽が出てきた」ということは、「ああ、土の中で根がしっかり張って、水分を吸い上げ始めたんだな」という確かな証拠になるんです。
このサインが出るまでの期間は、環境にもよりますが、早いもので数週間、通常は1〜2ヶ月ほどかかるかと思います。
【最重要】絶対にやってはいけないこと
この時期、初心者が最もやってしまいがちな失敗。それは、「根が出たか不安で、挿し穂を引っこ抜いて確認する」行為です。
気持ちは痛いほど分かります。私もやりそうになったことがあります。でも、これをやったら、ほぼ100%失敗します。
なぜなら、発根し始めの根(特に水分吸収の最前線である「根毛」)は、髪の毛よりも細く、非常に繊細で、土の粒子とようやく絡み合った状態です。それを引き抜くと、せっかく出た根毛がブチブチとちぎれてしまい、挿し木は振り出し(あるいは、それ以下)に戻ってしまいます。
新芽が確認できるまで、挿し穂は「絶対に触らない・グラグラさせない・抜かない」こと。この「我慢」こそが、挿し木成功のための最後の、そして最大の試練です。
挿し穂が腐る原因と対策

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挿し木が失敗する最大の原因、それは発根する前に挿し穂が「腐る」ことです。切り口や土に埋まった部分が黒く変色し、ブヨブヨと柔らかくなっていたら…。残念ながら、それは腐敗のサインです。異臭がすることもありますね。
なぜ、腐ってしまうのか。主な原因は、大きく分けて2つあります。
原因1:過湿と換気不足(酸素不足)
「湿度は高く」と聞くと、つい水をジャブジャブやりすぎたり、風通しの悪い場所に密閉して置いたりしがちです。しかし、「空中湿度が高い」ことと「土の中が常にビショビショ(過湿)」であることは、全く別問題です。
土の中が常に水分で満たされていると、土の粒子と粒子の間にあるべき「酸素」がなくなってしまいます。挿し穂(やがて出る根)も、生きていくためには「呼吸」をしなければなりません。土の中が酸欠状態になると、挿し穂は窒息して弱ってしまいます。
そして、この「酸素のないジメジメした環境」が大好きで、爆発的に繁殖するのが、カビや細菌などの「腐敗菌(嫌気性菌)」です。挿し穂が弱ったところに、腐敗菌が繁殖する。これが、挿し穂が腐る最悪のシナリオです。
原因2:雑菌の付着(土・道具)
もう一つの原因は、そもそも雑菌だらけの環境で作業してしまったケースです。
- 殺菌していないハサミやカッターを使った。
- 古い土、庭の土をそのまま使った。
- 自分の手が汚れていた。
これらの雑菌(立枯病の病原菌など)が、挿し穂の切り口という「傷口」から侵入し、内部で繁殖して腐敗を引き起こします。
腐敗を防ぐための「黄金バランス」
この恐ろしい腐敗を防ぐのが、準備の段階であれほど強調した「① 水はけの良い清潔な土」と「② 風通しの良い半日陰」という管理場所なんです。
つまり、私たちが目指すべきは、
「空気の湿度は高く保ちつつ、土の中は過湿にせず(水はけ良く、酸素を確保し)、そして空気は常に穏やかに動かす(換気する)」
という、一見すると矛盾するような、絶妙な「黄金バランス」を保つことなんです。
「発根までは水切れ厳禁」と言いましたが、それは「常に土をビショビショにしておけ」という意味ではありません。「土の表面が乾き始めたら、たっぷり水をやり、鉢底から余分な水はしっかり抜く」という、乾湿のメリハリ(の、やや「湿」寄り)が重要なんですね。
(植物が根腐れを起こす詳しいメカニズムについては、エバーフレッシュの根腐れ|原因と復活させる方法という記事が、別の植物の例ですが、とても参考になるかと思います。基本的な原理は同じですので)
根が出ない時のチェックポイント
「新芽も出ないし、腐る様子もない。ただただ、何も起こらない…」
挿し木をして1〜2ヶ月経っても何の動きもないと、不安になりますよね。そんな時、考えられる原因をチェックしてみましょう。
- ① 時期が適していない(寒い):これが一番多いかもしれません。10月以降など、気温が低い時期(特に最低気温が15℃を下回る)に作業した場合、植物は休眠モードに入っているため、発根する力がありません。腐ることもなく、ただ「時が止まった」状態になります。
- ② 挿し穂を乾燥させてしまった:「切り口は乾かさない」というルールを破って乾燥させた場合や、挿し木後の水やりを一度でも忘れてカラカラにさせてしまった場合、挿し穂は発根する前に「ミイラ化」してしまいます。
- ③ 不安で挿し穂を抜いて確認した:何度も言いますが、これは厳禁です。せっかく出かかった根毛がちぎれ、発根が振り出しに戻されます。これを繰り返すと、挿し穂は体力を使い果たしてしまいます。
- ④ 挿し穂の活力不足:親株がそもそも弱っていたり、病気だったり、あるいは、挿し穂として使うには細すぎる「枝先の弱い部分」を使ったりした場合、発根するだけの体力が残っていないことがあります。
- ⑤ 土の肥料分が多すぎた:良かれと思って肥料入りの土(観葉植物用の土など)を使ってしまうと、根がない挿し穂にとっては、その肥料分が「毒」になり、切り口が傷んで発根できなくなることがあります。
- ⑥ 管挿しで上下を間違えた:葉のない茎を使った「管挿し」の場合、上下を逆さまに挿していたら、未来永劫、根は出ません…。
「待つ」のも管理のうち
適切な時期(5月~6月)に、適切な方法で挿し木をしたのであれば、あとは「水切れさせない」ことと「抜かない」ことだけを守って、「ひたすら待つ」しかありません。
植物のペースは、私たちが思うよりずっとゆっくりです。1ヶ月、2ヶ月、何の音沙汰もなくても、挿し穂の幹がシワシワにならず、葉(半分にカットしたもの)が落ちずに緑色を保っているのであれば、それは水分の吸収が(かろうじて)できており、生きている証拠です。
焦らず、じっくり見守ってあげましょう。ある日突然、脇からポチッと小さな新芽が出てきた時の感動は、本当に大きいですよ。
挿し木の葉が黄色くなるサイン
挿し木が成功したかどうかのサインとして「新芽」を挙げましたが、逆に「葉が黄色くなる」という、不安なサインが出ることもあります。
ただ、「葉が黄色い=即失敗」というわけでもないので、慌てず状況を見極めましょう。
ケース1(問題なし):生理的な養分の転流
挿し穂の下の方の古い葉(元々ついていた葉)が「1枚だけ」黄色くなって、やがてポロリと落ちる。これは、多くの場合、問題ありません。
植物は、新しい根や芽を作るために、膨大なエネルギーを必要とします。光合成だけでは足りないエネルギーを、古い葉に蓄えられていた養分を「転流」させて(=移動させて)賄おうとするんです。養分を吸い取られた古い葉は、役目を終えて黄色くなる。これは、植物が生きるために行なっている、ごく自然な生理現象(リサイクル)です。
その葉を無理に取ろうとせず、自然に落ちるのを待つか、完全に黄色くなってカサカサになったら付け根から優しく取り除きましょう。
ケース2(危険信号):根腐れ・水切れ・水質悪化
一方、以下のような症状は、かなり危険なサインです。
- 新しい葉(先端の若い葉)が黄色くなる。
- 古い葉だけでなく、複数の葉が「同時に」黄色くなってくる。
- まだ緑色だったはずの新芽が黄色くなったり、黒ずんだりする。
これらの症状は、挿し穂が養分を転流させているのではなく、何らかの深刻なトラブルで、生命維持活動そのものが脅かされていることを示しています。
原因の切り分け:
- 土挿しの場合:最も疑わしいのは「根腐れ(過湿)」です。「挿し穂が腐る原因と対策」で述べた、過湿と酸欠の状態に陥っている可能性が非常に高いです。次点で「極端な水切れ」です。
- 水挿しの場合:ほぼ確実に「水質の悪化」です。水の交換を怠り、バクテリアが繁殖して水が腐り、挿し穂も一緒に腐り始めているか、酸欠になっています。水が濁ったり、異臭がしたり、切り口がぬめったりしていないか、すぐに確認してください。
対処法:
ケース2の兆候が見えたら、一刻も早い対処が必要です。
土挿しで根腐れが疑われる場合は、残念ですが、一度挿し穂をそっと抜きます。切り口を確認し、黒く腐っている部分を清潔なカッターで、健康な緑色の部分が出るまで切り戻します。その後、新しい清潔な土(今度は水はけをさらに良くした配合)に、再度挿し直します。(ただし、一度腐りかけた挿し穂の復活は、成功率がかなり下がることは覚悟してください…)
水挿しの場合は、すぐに新鮮な水と交換します。切り口がぬめっている場合は、ぬめりを優しく洗い流し、傷んでいる部分があればカットします。容器も食器用洗剤できれいに洗い直してから、管理を再開してください。
冬の挿し木はなぜ失敗しやすい?
I章の「時期」のところでも触れましたが、「冬(10月〜翌4月頃)の挿し木」は、なぜこんなにも失敗しやすいのか。その理由を、もう少し深掘りしておきます。
理由はシンプルで、「気温が低すぎて発根する力がない」ことと、「空気が乾燥しすぎている」こと。この二重苦が、挿し穂の体力を奪うからです。
① 低温による「活動停止」
ドラセナ・コンシンネは、最低気温が10℃を下回ると成長を停止し、休眠状態に入ります。挿し木は、植物が持つ「成長エネルギー(細胞分裂の力)」を使って発根するもの。寝ている人を無理やり起こして「走れ!」と言っているようなもので、発根するだけの体力がそもそも残っていません。
発根できないまま、冷たく湿った土に長期間さらされると、どうなるか?…そう、「腐敗」です。発根するスピードよりも、腐るスピードの方が圧倒的に速くなってしまうんですね。
② 暖房による「砂漠並みの乾燥」
「じゃあ、暖房が効いた暖かい室内なら大丈夫だよね?」と思うかもしれません。これが、もう一つの大きな落とし穴です。
冬の室内、特にエアコンやヒーター(ファンヒーターなど)を使っている部屋の空気は、私たちが想像する以上に、カラカラに乾燥しています。湿度が20%台になることも珍しくありません。これは、砂漠の平均湿度に匹敵するレベルです。
そんな環境で、エアコンの温風が挿し穂に直接当たったら…?
根がない挿し穂は、葉からの蒸散に全く対抗できず、数時間で水分を奪われてミイラ化してしまいます。「高温」はクリアできても、「高湿度」という挿し木の必須条件が真逆になってしまうんです。
結論:
どうしても冬場に挿し木を行う場合は、園芸用の加温ヒーターマットで土中を温め、植物育成ライトで光合成を促し、さらに加湿器をガンガン焚き、鉢をビニール温室で覆う…といった、「人工的に梅雨の環境を作り出す」ための特別な設備と管理が必要になります。これは、趣味の園芸の範囲では、かなり難易度が高いと言えるでしょう。
よほどの理由がない限り、剪定した枝は春まで水に挿して(水挿しの要領で)保管しておき、暖かくなる5月を待ってから土に挿すのが、最も賢明で、確実な方法だと私は思います。
成功するドラセナ・コンシンネの挿し木の総括
ここまで、ドラセナ・コンシンネの挿し木について、最適な時期から具体的な方法、管理のコツ、そして失敗例まで、私の経験の限りを詳しく見てきました。
最後に、挿し木を成功させるための鍵と、無事に発根した後の「次のステップ」について、総まとめをしたいと思います。
ドラセナ・コンシンネの挿し木を成功させる3つの鍵(再確認)
- 時期:植物の活力が最も高い「成長期(5月~6月の梅雨時期)」に作業すること。気温(20℃以上)と湿度(高湿度)の両方を味方につける。
- 湿度:切り口は「乾燥させず」、発根までは葉からの蒸散を抑えるため「高い空中湿度」を保つこと。(葉水、マルチングなど)
- 土と水:「清潔で水はけの良い土」を使い、腐敗の原因となる「過湿(酸欠)」を防ぎつつ、発根の命綱である「水切れ」もさせない、絶妙な水分管理を行うこと。
そして、これら3つに加えて、4つ目の鍵を挙げるとすれば、「抜かずに待つ(我慢)」ですね。
次のステップ:鉢上げ(植え替え)のタイミングと方法
挿し木に成功し、新芽が安定して成長を始めたり、ポットの底から根が見え始めたりしたら、それは「卒業」のサイン。小さなポットから、一回り大きな鉢へ「鉢上げ(植え替え)」をしてあげるステップに進みます。
- 土挿し(挿し穂・管挿し・茎伏せ)の場合:
新芽が安定して数枚展開し、小さなポットでは窮屈そうになってきたな、と感じたら(具体的には、ポットの底穴から白い根が見え始めたら)、鉢上げのタイミングです。根がぎゅうぎゅうに詰まる「根詰まり」を起こす前に、一回り(3号ポット→4号鉢など)大きな鉢に、今度は「観葉植物用の土」で植え替えてあげましょう。この時、挿し木で使った土(根鉢)は崩さず、そのままスポッと植え替えるのが、根へのダメージが少なくて済みます。
- 水挿しの場合(最重要):
III章で述べた最難関の「鉢上げ」です。根が5〜10cm程度(長すぎても土に植えにくい)に伸び、根の数も増えてきたら、土に植え替えます。
水挿しから土への「順化」ステップ(最重要)
水挿しからの鉢上げがなぜ難しいか。それは「水耕根」を「土耕根」に適応させる必要があるからです。この「環境の激変」を緩和させる「順化(じゅんか)」のステップを踏むことが、成功の秘訣です。
- 植え付け:水はけの良い清潔な土(挿し木の土に観葉植物の土を少し混ぜたくらい)を使い、繊細な水耕根を折らないよう、優しく土に植え付けます。
- 水やり(第1週):植え付け直後〜1週間は、土を常に湿らせた状態をキープします。水挿しの環境に近づけ、「ここはまだ水の中だよ」と根に錯覚させるイメージです。土の表面が乾き始めたら、すぐに水を与えます。
- 水やり(第2週〜):根が土の環境に少しずつ適応し始めた頃(新芽に動きがあるなど)から、徐々に水やりの間隔をあけていきます。土の表面が乾いてから1日待って水やりをする、というように、徐々に「乾湿のメリハリ」をつけていき、通常の観葉植物の水やり(土がしっかり乾いたら、鉢底から出るまでたっぷり)に移行させていきます。
この順化のステップを丁寧に行うことで、水挿しからの鉢上げの成功率も、ぐっと高まるはずです。
親株のケアも忘れずに
最後に、挿し穂(子ども)を提供してくれた「親株(お母さん)」のケアも重要です。
剪定(挿し木)を行った親株の太い切り口は、そのままにしておくと、そこから水分が蒸発したり、病原菌が入ったりする「大きな傷口」になっています。必ず、「癒合剤(ゆごうざい)」を塗って、切り口を保護してあげてください。
剪定後の親株は、ショックで一時的に水の吸い上げが悪くなることもあるので、剪定から数日〜1週間ほどは水やりを控えめにし、様子を見ます。その後は、いつも通りの管理(明るい場所で、土が乾いたらたっぷり水やり)を続ければ、数週間〜数ヶ月後には、切り口の近くの節から新しい枝や葉がニョキニョキと伸び、さらに生き生きとした姿を再生してくれるはずですよ。
(ドラセナ・コンシンネの基本的な育て方や、植え替えの詳細については、ドラセナの育て方完全ガイド|水やりから剪定、植え替えまでの記事で網羅的に解説していますので、鉢上げ後の管理に迷ったら、ぜひそちらも参考にしてみてください)
挿し木は、時間と少しの手間はかかりますが、植物の生命力の強さを実感できる、とてもやりがいのある作業です。この記事が、あなたのドラセナ・コンシンネの挿し木チャレンジの、一助となれば幸いです。