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大切に育てているパキラの元気がなくなり、「もしかしてパキラが根詰まりを起こしているのでは?」と不安に感じていませんか。根詰まりのサインは?パキラの鉢底から根が出ていたらどうしたらいいですか?といった疑問は、観葉植物を育てる多くの方が一度は抱える共通の悩みです。
正しい植え替えの知識と方法を身につけていれば、失敗を恐れることなく、愛するパキラを元気な姿へ復活させることができます。
しかし、もしサインを見逃して放置してしまうと、根腐れという深刻な事態を招き、株がぐらぐらしたり、最悪の場合は幹切るという辛い決断が必要になったりすることも。
たとえ100均で購入した小さな株であっても、その生命力は同じです。状態によっては挿し木で新しい命を育む道も残されています。
この記事では、専門的な知識がない方でも安心して実践できるよう、あなたのパキラを救うための具体的な知識と手順を、順を追って詳しく解説していきます。
ポイント
- パキラの根詰まりを正確に見分けるための具体的なサイン
- 失敗しないための正しい植え替え時期と具体的な手順
- 根腐れなど深刻な症状に陥った際の緊急対処法
- 植え替え後の丁寧な管理と、よくあるトラブルの解決策
コンテンツ
もしかしてパキラが根詰まり?症状とサイン
参考
- 覚えておきたい根詰まりのサインは?
- パキラの鉢底から根が出ていたらどうしますか?
- 放置して失敗すると枯れてしまうことも
- 根腐れを併発したら幹切るしかない?
- 100均のパキラも油断は禁物です
覚えておきたい根詰まりのサインは?

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パキラの根詰まりは、普段は見えない鉢の中で静かに進行します。そのため、株が発するSOSのサインにいち早く気づき、適切な対応をとってあげることが何よりも大切です。主なサインは、日々の水やりや葉の様子といった、見た目の変化に現れることが多いです。
最も分かりやすいのは水やりの際の違和感です。水をあげてもなかなか土に染み込まず表面に溜まっていたり、逆に与えた水がすぐに鉢底から流れ出てしまったりする場合、鉢の中が根で飽和状態になっている可能性が高いでしょう。
これは、根が土の粒子間の隙間を埋め尽くしてしまい、本来土が持つべき保水性や排水性のバランスが崩れている証拠です。
また、葉の状態にも注意深く目を向けてください。葉全体のハリが失われ、色が薄くなったり黄色く変色したりする、あるいは新しい芽の成長が明らかに止まってしまうといった症状も、根詰まりの典型的なサインです。
根からの水分や栄養の吸収が滞ると、植物はまず葉の状態にその影響を現します。
特に、窒素のような移動しやすい養分が古い葉から新しい葉へと送られるため、下の方の葉から黄変していく「クロロシス」という症状が見られることもあります。これらのサインを見逃さず、パキラの健康状態を正しく把握しましょう。
根詰まりセルフチェックリスト
ご自身のパキラが以下の項目に複数当てはまるか確認してみてください。
- 水やりをしても、水が土の表面に溜まったままで染み込みが遅い
- 鉢底の穴から水が抜けてくるのが異常に早い
- 以前と比べて、土が乾くスピードが極端に速くなったと感じる
- 葉の色が全体的に薄くなったり、黄色い葉が増えたりした
- 葉がしおれて垂れ下がり、全体的に元気がないように見える
- 春や夏になっても、新しい芽がほとんど出てこない
- 鉢を持ち上げた際、底の穴から白い根がはみ出しているのが見える
これらの項目に3つ以上当てはまる場合は、根詰まりを起こしている可能性が非常に高いと考えられます。早めの植え替えを検討しましょう。
パキラの鉢底から根が出ていたらどうしますか?

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鉢の底にある排水用の穴から、パキラの白い根がはみ出しているのを見つけたら、それは「もうこの鉢では限界です」という、パキラからの最も分かりやすい植え替え要求のサインです。
これは、鉢の中のスペースが物理的に限界に達し、根が水分や酸素、そしてより良い環境を求めて外へ伸びようとする、植物の本能的な行動の結果です。
このサインに気づいたなら、可能な限り速やかに植え替えの準備を始めるのが理想的です。
根が鉢の中でこれ以上成長できなくなると、水分や養分の吸収効率が著しく低下し、パキラ全体の成長が停滞、あるいは衰退に向かってしまいます。この状態は、人間で言えば、成長期の子どもが窮屈な服を着続けているようなものです。
ただし、一つ注意点があります。植え替えに適していない冬の寒い時期などにこのサインを発見した場合です。この時期はパキラの活動が鈍る休眠期にあたるため、焦って植え替えるとかえって大きなストレスを与え、株全体を弱らせてしまう可能性があります。
その場合は、本格的な春が訪れ、生育期に入るまで待つのが賢明な判断です。それまでの間は、水やりの頻度を通常よりさらに落とし、土が乾いてから数日待つくらいにして、根腐れのリスクを最小限に抑えながら注意深く管理してあげてください。
「大は小を兼ねる」はNG!大きすぎる鉢への植え替えリスク
根詰まりしているからといって、急に二回りも三回りも大きな鉢へ植え替えるのは絶対に避けましょう。土の量に対して根の量が少なすぎると、土中の水分を根が吸い上げるスピードが追いつかず、土が常に湿った過湿状態が続いてしまいます。
これは深刻な根腐れを引き起こす最大の原因となります。植え替える際は、現在の鉢の直径より3cm(1号)程度大きい「一回り大きい」サイズを選ぶのが、失敗しないための鉄則です。
放置して失敗すると枯れてしまうことも
「葉が少し黄色いだけ」「まだ大丈夫だろう」と、根詰まりのサインを軽視して放置してしまうのは、ガーデニングにおける最も避けたい失敗の一つです。
根詰まりを放置した場合、パキラはゆっくりと、しかし確実に弱っていき、最終的には枯死という最悪の結果を迎える危険性が非常に高くなります。
そのメカニズムは、主に二つの段階で進行します。
第一に、慢性的な栄養失調と水分不足です。鉢の中が自身の根でパンパンになると、新しい根を伸ばす物理的なスペースが完全になくなります。
根も人間と同じで新陳代謝を繰り返しており、新しい根が伸びなくなると、古く機能が低下した根ばかりになってしまいます。結果として、株全体が必要とする水分や栄養素を十分に吸収できなくなり、活力が失われていくのです。
そして第二に、より深刻なのが「根腐れ」の誘発です。根が密集した鉢の中は、土の団粒構造が破壊され、通気性や水はけが極端に悪化します。このような環境では、水やりをしても土が常にジメジメと湿った状態になり、根が呼吸できずに窒息状態に陥ります。
酸素が不足した土壌では、酸素を嫌う嫌気性菌が繁殖しやすくなり、これが根の組織を分解し、腐敗を加速させます。
一度根腐れが始まると、その腐敗は健康な部分にも次々と広がり、気づいた時には手遅れになっているケースも少なくありません。大切なパキラを枯らさないためにも、サインに気づいたら放置せず、勇気を出して植え替えに踏み切ることが重要です。
根腐れを併発したら幹切るしかない?

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根詰まりを放置した結果、根腐れという深刻な病状にまで発展してしまうことがあります。
根腐れの明確なサインは、土からドブのような異臭がする、幹の根元を指で押すとブヨブヨと柔らかく、水っぽくなっているといった症状です。もし幹まで腐敗が進んでしまっている場合、残念ながら腐った組織が自然に治癒することはありません。
このような絶望的な状況では、腐敗した部分を外科手術のように思い切って切除することが、唯一の延命措置となります。そのまま放置すれば、腐敗は導管を通じて健康な部分にまで広がり、株全体が確実に枯死してしまいます。
具体的な対処法としては、まずパキラを鉢からそっと取り出し、土を洗い流して根の状態を確認します。黒く変色してドロドロに溶けている根や、指で軽く引っ張ると簡単にちぎれる根は、全て清潔なハサミで切り落としましょう。
さらに、幹がブヨブヨしている場合は、その部分が完全になくなるまで、硬く健康な組織が見えるところまでナイフなどで切り戻してください。断面が茶色や黒っぽく、異臭がする場合はまだ腐敗が残っています。
断面がクリーム色や薄緑色で、みずみずしい部分が出てくるまで、慎重に作業を進めます。パキラは非常に生命力が強い植物ですから、健康な部分が少しでも残っていれば、そこから復活する可能性は十分にあります。
作業に使う道具は必ず火やアルコールで消毒を
根や幹を切る際に使用するハサミやカッターは、切り口から病原菌が侵入するのを防ぐため、必ず消毒してから使用してください。
家庭でできる簡単な消毒方法として、ライターの火で刃先を数秒炙る、あるいは薬局で手に入る消毒用エタノールで丁寧に拭うといった方法があります。この一手間が、パキラの復活率を大きく左右する重要なポイントになります。
100均のパキラも油断は禁物です
「100円ショップで手軽に購入したパキラだから」と、つい管理を後回しにしたり、軽く考えてしまったりするのは危険な落とし穴です。実は、このような安価で小さなパキラこそ、購入後すぐに根詰まりという問題に直面しやすい、注意が必要な個体である場合が多いのです。
その最大の理由は、販売されているビニールポットが非常に小さく、成長が旺盛なパキラにとってはあっという間に窮屈になってしまうためです。
また、生産コストを抑える目的で、観葉植物の長期栽培にはあまり適さない用土、例えば保水性が高すぎるピートモス単体などで植えられていることが少なくありません。
ピートモスは一度乾燥すると極端に水を弾き、逆に過湿になるといつまでも乾かないという特性があり、これが初心者にとって水管理を難しくさせ、根詰まりや根腐れのリスクを著しく高めています。(参考情報:タキイ種苗株式会社「園芸用語集 ピートモス」)
購入した時点ですでに根がポットの底からはみ出していることも珍しくありません。小さな株であっても、その内に秘めた生命力は大きな株と何ら変わりません。
元気に、そして大きく育てるためには、購入後なるべく早いタイミングで、水はけの良い市販の観葉植物用の土を使い、一回り大きな鉢に植え替えてあげることを強く推奨します。これは単なる引っ越しではなく、パキラの未来の健康を左右する重要な「初期治療」と捉えるべきです。
100均のパキラは、いわば「仮住まい」の状態であなたの元へやってきます。少しの手間と愛情をかけて、快適な「本宅」を用意してあげるだけで、その後の成長スピードは見違えるほど変わります。価格以上の価値がある、かけがえのないパートナーになってくれるはずですよ。
パキラの根詰まりは植え替えで解決!
参考
- 正しい植え替えの時期と準備
- 初心者でもわかる植え替え方法
- 弱った株を復活させるポイント
- 植え替え後に株がぐらぐらする時の対処法
- 最終手段としての挿し木について
- 正しい知識でパキラの根詰まりを解決
正しい植え替えの時期と準備

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パキラの根詰まりを根本的に解決するための最も効果的で確実な方法は「植え替え」です。
しかし、この植え替えも、タイミングや準備を間違えると、良かれと思ってやったことがかえってパキラを弱らせる原因になりかねません。成功の鍵は、「最適な時期」を見極め、「万全の準備」を整えること、この二つに尽きます。
植え替えの最適な時期は、パキラの生命力が最も高まる生育期、具体的には5月~9月です。この期間は、気象庁のデータが示す通り、日本の多くの地域で平均気温が15℃以上となり、植物の細胞分裂が活発になります。
春から夏にかけては、オーキシンなどの成長ホルモンの分泌も盛んになり、発根が力強く促進されるため、植え替えによる物理的なダメージからの回復が非常に早いのです。
特に、湿度が高く曇りの日が多い梅雨の時期は、植え替え後の急激な乾燥を防ぎやすく、絶好のタイミングと言えるでしょう。
逆に、気温が下がり始める10月以降や、真冬の植え替えは原則として避けましょう。休眠期に入り、成長を止めて寒さに耐えているパキラにとって、植え替えは大きな負担です。
体力が落ちている時期に手術を受けるようなもので、回復が追いつかずにそのまま枯れてしまうリスクが非常に高まります。
植え替えを決意したら、作業をスムーズに進めるために、事前に必要なものをすべて揃えておきましょう。慌てて作業を中断することがないよう、以下のリストを参考にしてください。
道具 | 選び方のポイントと補足 |
---|---|
新しい鉢 | 現在の鉢より一回り(直径3cm程度)大きいものを選びます。素材は、通気性の良いテラコッタ(素焼き鉢)や、軽くて管理しやすいプラスチック鉢など、置き場所や管理スタイルに合わせて選びましょう。 |
観葉植物用の土 | 水はけが良いように配合された、市販の新しい「観葉植物の土」を用意するのが最も手軽で確実です。古い土は栄養分が枯渇し、病原菌がいる可能性もあるため、再利用は避けてください。 |
鉢底石 | 鉢の底に2~3cm敷き詰めることで、土の層との間に空間を作り、余分な水がスムーズに排出されるのを助けます。ネットに入ったタイプが便利です。 |
鉢底ネット | 鉢底の大きな穴からの土の流出や、ナメクジなどの害虫が鉢底から侵入するのを防ぎます。 |
清潔なハサミ | 傷んだ根や古い根を切り整理するために使用します。使用前には必ずアルコールで消毒するか、火で炙って殺菌してください。 |
割り箸などの細い棒 | 土を詰める際に、根の隙間にまで土をしっかりと行き渡らせ、根と土を密着させるために使います。 |
園芸用シートや新聞紙 | 室内で作業する際に床が土で汚れるのを防ぎます。これがあるだけで、後片付けのストレスが大幅に軽減されます。 |
初心者でもわかる植え替え方法

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道具の準備が整ったら、いよいよ植え替え作業に入ります。一つ一つの手順を焦らず丁寧に行えば、初めての方でも決して難しい作業ではありません。安心してチャレンジしてみましょう。
手順1:鉢からパキラを慎重に抜く
まず、作業の数日前から水やりを控えて土を乾かしておくと、土が固まり、根鉢を崩さずに綺麗に鉢から抜くことができます。鉢がプラスチック製の場合は、側面を優しく揉むように押してあげると、鉢と土の間に隙間ができて抜けやすくなります。
それでも抜けない場合は、鉢を横にして地面に置き、縁をコンコンと軽く叩いてみてください。この時、幹を力任せに引っ張ると根がちぎれて大きなダメージとなるので、あくまで根元を持ってゆっくりと引き抜くように心がけましょう。
手順2:古い土と傷んだ根を丁寧に整理する
鉢から抜いた根鉢(根と土が一体化したもの)を、指で優しく揉みほぐすようにして、古い土を全体の1/3から半分程度を目安に落とします。土を落とすと根の状態がよく見えます。
健康な根は白や薄茶色でハリがありますが、腐った根は黒く変色していたり、ブヨブヨして悪臭を放ったりしています。
このような傷んだ根は、病気の原因にもなるため、ためらわずに消毒したハサミで全て切り取ってください。根がガチガチに固まっている場合は、少しほぐしてあげることで、新しい鉢でのびのびと成長しやすくなります。
手順3:新しい鉢へ愛情を込めて植え付ける
新しい鉢の底穴を鉢底ネットで覆い、その上に鉢底石を鉢の高さの1/5程度まで敷き詰めます。次に、観葉植物用の土を鉢の1/3程度まで入れ、その上にパキラを置きます。
この時、株が鉢の中心に来るように、そして植え付け後の高さがちょうど良くなるように、土の量で微調整します。位置が決まったら、株の周りの隙間に新しい土をスコップなどで入れていきましょう。
途中で割り箸のような細い棒で土を軽く突きながら、根の間にまで土がしっかりと行き渡るようにするのが、ぐらつきを防ぎ、活着を促すプロの技です。
生命線を確保する「ウォータースペース」を忘れずに!
土を入れる際は、鉢の縁から2~3cmほど低い位置までにしておきましょう。この意図的に作る空間を「ウォータースペース」と呼びます。このスペースがあることで、水やりをした際に水が一時的に溜まり、土にゆっくりと均一に浸透していくことができます。
鉢の縁いっぱいまで土を入れてしまうと、水がすぐに溢れ出てしまい、土の表面しか濡れず、中心部まで水が届かない「水やり失敗」の原因になります。
手順4:最初の水やりで新しい門出を祝う
植え付けが完了したら、作業の総仕上げとしてたっぷりと水を与えます。鉢の底から水が勢いよく流れ出てくるまで、シャワーなどでまんべんなく与えましょう。
この最初の水やりには、単に水分を補給するだけでなく、土の中の微塵を洗い流し、土の粒子を落ち着かせ、根と土をしっかりと密着させる重要な役割があります。水やり後、土の量がカサ減りして沈むようであれば、少し土を足して表面をならしておきましょう。
弱った株を復活させるポイント
植え替えは、人間でいえば大きな手術を終えた直後のようなもの。無事に作業が終わっても、その後の「術後管理」、つまりアフターケアが、パキラが本当に元気になるかどうかの分かれ道となります。
特に以下の3つのポイントを徹底し、デリケートな状態のパキラを優しく見守ってあげましょう。
置き場所:直射日光厳禁の「明るい日陰」で静養
植え替え直後のパキラは、根がまだ新しい土にしっかりと張っておらず、水分を吸い上げる能力が一時的に低下しています。
この非常にデリケートな状態で強い直射日光に当ててしまうと、葉からの水分蒸散量に根からの吸水量が全く追いつかず、深刻な葉焼けや水切れを起こす原因となります。
植え替え後、最低でも1~2週間は、直射日光が当たらない、レースのカーテン越しの柔らかな光が届くような「明るい日陰」で静かに休ませてあげることが絶対条件です。
水やり:徹底した「乾いたらあげる」の原則
前述の通り、植え替えで根を整理したため、一時的に水の吸い上げる力は弱まっています。この状態で「元気がないから」と心配して頻繁に水を与えてしまうと、土が常に湿った状態になり、新しい根が呼吸できずに腐ってしまう「根腐れ」を引き起こします。
植え替え直後に一度たっぷりと水を与えた後は、必ず土の表面を指で触って確認し、乾いたのを確認してから次の水やりを行うという基本を徹底してください。
室内の乾燥が気になる場合は、霧吹きで葉に直接水をかける「葉水」を行うと、葉からの水分蒸散を抑え、ハダニなどの害虫予防にもなり効果的です。
肥料:「回復の兆し」が見えるまで絶対NG
「弱っているから栄養補給を」と考えて肥料を与えたくなる気持ちはよく分かりますが、これは最もやってはいけない間違いの一つです。
弱った根にとって、肥料の成分は刺激が強すぎ、吸収するどころか、浸透圧で根の水分が奪われる「肥料焼け」を起こして、さらに深刻なダメージを与えてしまう可能性があります。
新しい芽が動き出す、葉の色艶が戻ってくるなど、パキラ自身が回復してきたサインが見えるまでは、最低でも2週間~1ヶ月は肥料を絶対に与えないでください。
回復をサポートする「活力剤」の賢い活用法
肥料とは異なり、植物ホルモンや微量要素を主成分とする「活力剤」は、植え替え後の回復を優しくサポートするのに有効です。
例えば、市販されている「メネデール」のような鉄イオンを主成分とする活力剤は、光合成を助け、発根を促進する効果が期待できます。(参照:メネデール株式会社公式サイト)
水で規定の倍率に薄めて、水やりの際に与えることで、弱った株の早期回復を後押ししてくれるでしょう。
植え替え後に株がぐらぐらする時の対処法
丁寧に植え替えをしたはずなのに、パキラの株が安定せずにぐらぐらしてしまうことがあります。これは植え替えが失敗したわけではなく、根がまだ新しい土の中にしっかりと張っておらず、地上部を物理的に支えきれていないために起こる、ごく自然な現象です。
しかし、このぐらぐらした状態で放置してしまうと、風や少しの振動で根が動いてしまい、新しく伸びようとしている繊細な根が切れてしまう可能性があります。これでは、いつまで経っても根が土に定着(活着)できません。
このような場合の対処法は非常にシンプルで、一時的に支柱を立てて、株が動かないように物理的に固定してあげることです。
この時、ぐらつきを抑えようとして土を上から手で強く押し固めるのは絶対にやめてください。土が固くなりすぎると、水はけや通気性が悪化し、根が伸びるのを妨げてしまい、本末転倒です。
園芸用の支柱や、太めの割り箸などを、根鉢を傷つけないように注意しながら鉢の縁に沿って深く差し込みます。
そして、ビニールタイや麻ひもなどでパキラの幹と支柱を優しく結んで固定します。幹に紐が食い込まないように、幹と支柱の間で8の字を描くように結ぶ「8の字結び」がおすすめです。
株がぐらぐらしていると、どうしても心配で何度も触って確認したくなりますよね。でも、それはパキラが新しいお家で根を張ろうと一生懸命頑張っている証拠なんです。
焦らず、どっしりと構えて、根がしっかりと張って安定するまで、1ヶ月程度を目安に優しくサポートしてあげましょう。指で株元を軽く揺らしてみて、動かなくなったら、それは「もう大丈夫だよ」というサイン。支柱を外してあげてください。
最終手段としての挿し木について

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根詰まりを長期間放置し、根腐れが幹の上部にまで進行してしまった場合など、残念ながら株本体の復活が絶望的だと判断せざるを得ない状況もあります。しかし、そんな時でも完全に諦めてしまうのはまだ早いかもしれません。
パキラは驚異的な生命力を持つ植物であり、たとえ葉や枝の一部だけでも健康な部分が残っていれば、「挿し木」という方法で、その遺伝子を受け継ぐ新しい命をつなぐことができるのです。
挿し木とは、植物の栄養繁殖法の一つで、株の一部(枝や茎)を切り取って土や水に挿し、そこから新しい根(不定根)を発根させて独立した個体として増やす方法です。根腐れを起こした親株からの最後の救出策、いわばクローン技術を用いた最終手段ともいえます。
成功率を上げる挿し木の簡単手順
- 穂木(ほぎ)の準備:まず、まだ腐敗が及んでいない、葉が青々としていてハリのある元気な枝を探します。見つけたら、10~15cmほどの長さで切り取ります。これが挿し木の元となる「穂木」です。
- 切り口の処理:穂木の下についている葉を2~3枚取り除き、蒸散を抑えます。そして、カッターナイフなどのよく切れる刃物で、切り口を斜めにスパッと切り直します。これにより、吸水する面積が広がり、発根しやすくなります。
- 水揚げ:切り口をコップなどに入れた清潔な水に数時間つけて、穂木に十分に水を吸わせます(水揚げ)。
- 挿し床へ挿す:水揚げが終わったら、新しい観葉植物用の土や、肥料分のない挿し木専用土、あるいは水を入れたコップなどに、穂木の長さの1/3程度が埋まるように優しく挿します。
- 発根までの管理:明るい日陰に置き、土の場合は乾かさないように、水の場合は毎日水を替えながら管理します。環境が良ければ、数週間から1ヶ月ほどで切り口から白い新しい根が出てきます。
元の大きな株を助けることはできなくても、その一部から小さな新しいパキラを育てられる可能性があります。それは、形を変えて命が続いていく感動的な瞬間です。最後の希望として、ぜひ挑戦してみてください。
正しい知識でパキラの根詰まりを解決
この記事では、多くの方が悩むパキラの根詰まりについて、その初期サインの見分け方から、根本的な解決策である植え替えの具体的な方法、そして万が一の深刻な事態に陥った場合の対処法までを、網羅的に解説しました。
最後に、この記事で最もお伝えしたかった大切なポイントをリスト形式で振り返ってみましょう。
パキラが発する小さなサインに早期に気づき、正しい知識を持って適切なタイミングで対処すれば、根詰まりは決して怖い問題ではありません。この記事が、あなたの愛するパキラをいつまでも元気に、そして美しく育てるための一助となれば幸いです。
チェックリスト
- パキラの成長が止まったり元気がなくなったりしたらまず根詰まりを疑う
- 水やりの際に土への水の染み込みが悪くなったら危険信号
- 鉢の底の穴から根がはみ出しているのは明確な植え替えのサイン
- 根詰まりの放置は成長不良だけでなく根腐れや枯死に直結する
- 植え替えの最適な時期は生命力が旺盛な5月から9月の生育期
- 気温が下がる秋から冬にかけての植え替えは株を弱らせるため原則避ける
- 新しい鉢は現在の鉢より一回りだけ大きいサイズを選ぶのが鉄則
- 大きすぎる鉢は過湿を招き、新たな根腐れの原因になるので注意
- 用土は必ず水はけの良い市販の観葉植物用培養土を使う
- 植え替え後は直射日光の当たらない明るい日陰で最低1週間は休ませる
- 回復の兆しが見えるまで植え替え直後の肥料は絶対に与えない
- 幹がブヨブヨと柔らかくなっていたら根腐れが進行している可能性が高い
- 腐敗した根や幹は病気の拡大を防ぐため清潔なハサミでためらわず切除する
- 植え替え後に株がぐらつく場合は倒れないように支柱で優しく固定する
- 万策尽きても健康な枝が残っていれば挿し木で命をつなげる可能性がある